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2019.04.14

SUV人気に対抗できるか? 新型BMW3シリーズの実力を検証!

BMW3シリーズといえば、日本はもとより世界中で愛されているCセグメントにおけるベンチマークだ。その3がフルモデルチェンジした。一体どんな仕上がりなのか? ジャーナリスト小川フミオ氏がリポートする。

CREDIT :

文/小川フミオ

新型3シリーズは「駆け抜ける喜び」をさらに進化させた!?

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330iに設定されたM Sportは足回りもしっかり固められている
日本でもっとも売れているBMWといえば、「3シリーズ」にとどめをさす。2018年秋のパリ自動車ショーで発表された新型に、ポルトガルで試乗した。

昨今はSUV人気が続いているが、私に言わせると、クルマのキホンはやはりセダンだと思う。スタイリングのうつくしさや、無理のないサスペンションの設定など、セダンはクルマの魅力が凝縮しているといっていいからだ。

なので3シリーズがフルモデルチェンジをうけたいま、セダンのよさを再考してみるいい機会かもしれない。ポルトガルで3シリーズを試してみて、私はそう思ったのだった。

新型3シリーズのエンジンバリエーションは多様だ。中核はガソリンもディーゼルも2リッター4気筒で、出力が異なる。そのなかで今回は公道でパワフルな2リッターガソリンの「330i」と、2リッターディーゼルの「320d」に乗れた。加えてサーキットで6気筒ツインターボの「M340i xDrive」を試せたのである。
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全長4709ミリ(現行モデル+76ミリ)、全幅1827ミリ(同+16ミリ)、全高1442ミリ(同+1ミリ)とボディは少し大型化
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新型3シリーズはひとことでいうと、現行モデルよりスポーティになった。新しく設計されたサスペンションシステムを備え、パワフルなエンジンとともに、運転する楽しさを堪能させてくれるキャラクターを身につけたと謳われているのだ。

ポルトガルでの試乗コースは、南端のリゾート地ファロの郊外だった。ここは温暖な気候で、ドイツ人やアメリカ人、さいきんでは中国人など避寒地を好むひとたちを惹きつけている土地である。

試乗の舞台になったホテルはコースが敷地内にあるゴルフリゾートだったが、あいにく私たちはクルマに乗るだけ。それでも新型3シリーズでのドライブは、へたなゴルフより楽しめるものだったといってもいだろう。

ホテル前に並べられた新型からは、現行モデルの少しほっそりしたエレガントさは姿を消した。5シリーズとの距離の近さを感じさせる、立体的なキドニーグリルと変型ヘッドランプ、それに大型のバンパー一体型エアダムが強い印象を与えるのだ。
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L字型のリアコンビネーションランプにホフマイスターキンク健在
ボディサイズは、現行モデルよりも全長が76ミリも延び、ホイールベースは41ミリ延長されている。全長が長くなっているのは衝突安全性の要件を満たすため、と現地でBMWの開発担当者が教えてくれた。

側面からみるとロングノーズでキャビンが後退しているようなプロポーションが特徴的である。かつ前後のホイールアーチにふくらみをもたせることで車輪の存在感を強調している。

歴代の3シリーズとのつながりは、後席ドアのウィンドウにみられる「ホフマイスターキンク」だが、今回はウィンドウフレームに大きなカーブがつけられていない。

ボディがわのリアクォーターピラーにデコレーションのように、これまでのホフマイスターキンクを思わせるカーブが設けられるようになった。これをBMWでは「新しい解釈」としているのが興味ぶかい。
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ブレーキ冷却用のNACA型という空気取り入れ孔がエアダムに開けられている
2日にわたった試乗会では、まず2リッター4気筒ガソリンエンジンの「330i M Sport」に乗った。最高出力は190kW(258ps)で、最大トルクは400Nmだ。さきに5シリーズやX4で紹介されているが、3シリーズにとっては新しいエンジンである。

これに8段オートマチックが組み合わせられ、後輪駆動である。M Sportはスポーティな仕様で、電子制御の専用チューニングのダンパーを組み込んだサスペンションシステムを特徴とする。

M Sportはボディ補強をはじめ、硬めのベアリングに、やはり硬めのサスペンションスプリングとスタビライザーが装着された仕様だ。サスペンションの減衰力は標準モデルより20パーセント高くなっている。この数値は、現行モデルにおける標準とM Sportとの差の2倍にもなるそうだ。

たしかにスポーティな走りのモデルだった。エンジンのパワー感はすばらしいものだ。トルクはもりもりとアイドリングのすぐ上から盛り上がっていき、加えてレッドゾーンまであっというまに達するようなウルトラスムーズな回転マナーを持っている。
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275kW(374ps)の3リッター直列6気筒エンジンにフルタイム4WDシステムを組み合わせたシリーズ最強のM340i xDriveはポルトガルでの試乗会のあとロサンジェルス自動車ショーで正式発表された
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加速性能の高さはあらゆる速度域において感じられ、全長が4.7メートルを超えるセダンであるのに、瞬発力においてはスポーツカーのようだ。ステアリングホイールの操作に対する車体の反応速度もスポーツカーなみで、カーブで本領を発揮するセダンというのが、いかにもBMWらしい作りだと感じた。

専用ブレーキを備えているので、効きのよさもめざましい。ブレーキペダルに載せた足の踏み込み量にじつに敏感で、クルマとドライバーとの一体感を感じさせるのだ。プレスリリース各所に「ダイナミック(動的)」という単語が頻発するのも、新型3シリーズの特徴だろう。

太いグリップ径のステアリングホイールを操作して走らせると、2リッターとは思えないほどのパワフルさと、すいすいとコーナーからコーナーへと移るときの身のこなしのよさに感心させられた。

ファロ郊外の山岳路は、スーパースポーツカーの試乗にも使われるだけあって、適度な幅員をもつ直線と曲線がいいぐあいに組み合わされている。そこで加速、減速、コーナリング、そしてまた加速……という際のクルマの性能ぶりが堪能できるのである。
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2つのTFT液晶モニターはBMWオペレーティングシステム7.0と連動している
ただしBMWじしんがブッシュ類やスプリングレートを固めたというだけあって、乗り心地が硬いのも事実だ。330i M Sportはフツウのセダンでどこまでスポーティに仕上げられるか、腕前を見せつけるためのBMWにとってのフラッグシップといってもいいかもしれない。

2リッターディーゼルエンジンの320dも、フレキシブルで力のあるエンジンに感心させられた。140kW(190ps)の最高出力と400Nmの最大トルクを持つ2ステージターボの4気筒ユニットは、ホントいいエンジンだ。

低回転域では太いトルクを発生し、いっぽうで上の回転域まで期待以上のスムーズさで回るのである。2500rpmでトルクのピークを迎える設定だけあって、そこをキープして走ると、アクセルペダルの微妙なオンオフでおもしろいようにクルマが操れる。
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最新のデジタル技術もふんだんに盛り込まれた

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インテリジェント・パーソナルアシストは話しかける例も教えてくれる
ステアリングはすなおで、車体の反応速度は速い。コーナリング中はブレーキを電子制御してニュートラルな車体の動きを実現するトルクベクタリングの効果もあるのだろう。どんなカーブだろうと速いペースでこなしていけるのだ。

現行の320dもかなりよい出来だが、新型は静粛性においても上をいっていると思った。試乗車は「スポーツライン」という仕様のためスポーティなセッティングのサスペンションを備えていた。そのためM Sportはいかないまでも、意外に硬めの乗り心地なのだ。

日本で乗ったらどうだろう。330i、320dともにそれが楽しみになるモデルである。加えて今回はサーキット限定で、そのときまだデビュー前だったM340i xDriveの試乗という”おまけ”に恵まれた。

直列6気筒ツインターボエンジン搭載のトップモデルで、これは驚くほど速い。サーキットで乗らせるだけある。ドライビングパフォーマンス・コントロールスイッチでノーマルモードを選んでいても、強めにアクセルペダルを踏めばのけぞるような加速を見せる。

回転があがっていくにつれてトルクがどんどん積み上がっていく感覚は絶妙だ。すばらしいスポーツエンジンなのだ。回転計の針がレッドゾーンに届こうかというときには、加速のよさに頭のなかが真っ白になりそうだ。

さらにスポーツモード、あるいはさまざまな電子制御の介入が遅くなるスポーツ+モードを選ぶと、これが4ドアセダンの走りか?と思うほどの俊足ぶりを味わえる。最近のBMW車の例にもれず、電子制御の介入はごく自然だ。
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リバースアシストの作動画面
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コーナーにとびこむ速度がやや高すぎてアンダーステアが出そうになったときはすかさず内側のブレーキを作動させて車両の向きを安定させるのも、神経をとぎすませていないと、わからないぐらいだ。

新型3シリーズにはもうひとつの特徴がある。最新の電子技術の数々の搭載だ。ひとつは「インテリジェント・パーソナルアシスト」といい、音声認識システムである。

「ヘイ、ビーエムダブリュー」と呼びかけると、クルマが応えてくれる。「なにをしましょうか」と(試乗車では英語で)返されるので、たとえば、「リスボンまで行きたい」と言えばカーナビで道順を表示してくれる。

「リスボンの今日の天気はどうかな?」と訊けば、「いま晴れで、気温は20度Cです」などと返してくれる。室温設定や音楽なども、好みのものを音声で選べる。日本語バージョンも開発ずみだそうだ。

もうひとつ感心する新技術が「リバースアシスト」だ。駐車スペースから出るときや狭いスペースで操車する際に役立つ技術という。最後に前進した50メートルぶんのステアリングホイール操作を記録する。そのあと、スイッチを入れてシフトレバーをリバースに入れると、前進で通った走行ラインを正確にたどって自動走行で後退するのだ。

狭い道に迷いこんでしまって、そこから後退で脱出するときなど役立つシステムだ。彼女を隣りに乗せながら焦って後退するようなことはない。涼しい顔で、むずかしいパートはクルマに任せておけるのだ。これは実際に使うと、驚くほど便利だ。

そういうわけで、新型3シリーズは従来のセダンの常識をいろいろな面で凌駕する出来なのだった。

● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト

慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。

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