2022.01.23
LA、ラスベガス、NY、サンフランシスコ……僕が知っている最高のアメリカ
前回に続き、無類の海外旅行好きの筆者がコロナ禍の日々を少しでも楽しむべく考案した妄想の旅、アメリカ編をお送りします。日本では決して味わうことのできない、お洒落で華やかで楽しい旅の記憶が鮮やかによみがえります。
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文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト) イラスト/溝呂木 陽
岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第177回
妄想の旅、アメリカ編
まずは西海岸、、ロサンゼルス&サンタモニカからスタートする。通算すれば、いちばん多く行き、いちばん長く滞在した場所だ。
若い頃の宿は、いうまでもなく安いモーテル。だからか、50~60年代の趣が残ったモーテルは今も大好きだ。でも、歳を重ねてからは、それなりのホテルに泊まる。
ロサンゼルスでいちばん好きなのはビバリーヒルズ・ホテル。イーグルス、『ホテル・カリフォルニア』のジャケットでも有名だ。
プールサイドの居心地は最高だし、スタッフの笑顔も最高。食事も美味しい。そこに居るだけで明るく楽天的な気分になれる。「南カリフォルニアの気分」が満喫できる。
クルマでの移動が必須の立地だが、クルマさえあれば短時間であちこちに行ける。サンセットプラザにも、ロデオドライブにも、ロバートソン通りにも、メルローズ通りにも、、気軽にヒョイと出かけられる。
なかでも、いちばん好きなのはサンセットプラザ。オシャレなブティックやレストラン、カフェが並び、サンセット大通りには名車、珍車、高級車が頻繁に通る。南カリフォルニアの陽光を浴びながら、ここのオープンカフェで過ごすのは至福のひとときだ。
ロデオドライブを始めとした、多くの魅力的ショッピングエリアを徒歩圏内に収める、、のが、ビバリーウィルシャー・ホテル。気の利いたレストランやカフェも徒歩圏内に多い。ロサンゼルスでクルマ無しの1日を過ごせるのは貴重なことだ。
子供に帰ったような気分にさせられるピアも歩いてすぐだし、広大な白砂のビーチパークも、楽しいサードストリートも、、同様だ。
アメリカの大都市の中で、サンフランシスコはもっとも落ち着いた町だと思う。シリコンバレーの成功者たちが多く住む町でもある。
ここでのホテルはフォーシーズンズ・サンフランシスコ。いちばんの目抜き通りであるマーケットストリートに面していて、ユニオンスクエアも歩いてすぐ。
マーケットストリートは幅広く清潔感の高い通りで、心地よい散策が楽しめる。そして、もうひとつの楽しみは路面電車の存在。
世界各地から集められた1930~40年代のクラシックトラム。それがマーケットストリートを走る姿は一見の価値ありだ。それも現役として走っているので誰でもいつでも乗れる。
むろん、世界最古の手動運転循環式ケーブルカーも楽しい。僕はこのクラシックなトラムとケーブルカーを、「楽しくて便利な移動の足」としてよく使っている。
ホテルからマーケットストリートの散策を楽しみながらフェリー乗り場へ。大好きなサウサリートまでおよそ30分。ベイブリッジを眺めながらのクルーズは気持ちのいいものだ。
観光シーズンさえ外せば、サウサリートは静かで寛げる街。海沿いの通りに並ぶ店はお洒落でありながら落ち着いた佇まいを持ち、その背後の斜面には瀟洒な邸宅が並ぶ。美味しいレストランも、落ち着けるカフェもある。
遅い朝食(昼兼用)はホテルがメイン。でも、ホテル近くに美味しい店があるので、パンケーキとクラムチャウダーも時々食べる。ディナーはステーキかカニが多い。
ラスベガスは、ときどきだが無性に行きたくなる。浮世離れしたきらびやかさと喧騒の中に身を置きたくなる。
ホテルはシーザーズパレス。老舗のカジノホテルだ。桁外れのスケールで、古代ローマをテーマにした建物が建ち並ぶ様は、単純に「すごい!!」と思う。ラスベガスはそんな単純さを楽しめばいい。
ラスベガスのホテルは、カジノやショーで利益を上げているせいか、部屋の料金は安い。なのですごく広いスイートをとって、非日常的な時間を過ごすのも楽しみのひとつだ。
カジノには一応行く。雰囲気は好きだが賭け事は好きではない。なので、ポケットにあるコインでスロットマシーンに触れるくらい。昔、クォーター(25¢硬貨)1枚だけで200ドル(たしか)当てて驚いたことはあるが。
ショーも楽しい。シーザースパレスのショーといえば「セリーヌ・ディオン」が有名だが、とにかく、一流のエンターテイナーが出演する。行くときは、ウェブサイトでショーの日程をチェックしておくことを勧める。
残念ながら、僕はビッグイベントに巡り合ったことがない。なので、次に行くときは、イベント検索から始めようかなと思っている。
「世界の超一流」に並ぶショッピングモール、「フォーラムショップス at シーザースパレス」も楽しい。テンションが上り、財布の紐が緩む可能性大なので非常に危険だが。
日程に余裕があったら、レイクラスベガスで1~2日を過ごすのもいい。ラスベガスからクルマでほんのひと走り。美しい人造湖を囲んで造られた静かで爽やかなリゾートは、ラスベガスの疲れを洗い流してくれる。
ホテルはヒルトン・レイクラスベガス。ここも料金は安いので、湖に面したスイートに泊まる。
ニューヨークにも絶対に行きたい。何度行っても飽きることなどありえない。とにかく「すごい街!」だ。
ホテルはセントラルパークを前にした5th AVのプラザホテルに泊まる。「国定歴史建造物」にも指定されている威容とエレガンスには圧倒される。でも、部屋は落ち着けるし、立地も素晴らしい。
セントラルパークが目の前というのが、とくにうれしい。広大な公園はニューヨーク市民の憩いの場だが、旅人の僕にとっても同じ。とくに紅葉シーズンには惹かれる。
ニューヨークの人たちは、セントラルパークで様々な時間の過ごし方をしているが、そんなあれこれを見ているのはとても楽しい。
この 「アップルストア 5th アベニュー」、、今やニューヨークでもっとも多くの人を集める観光スポットになっていると聞く。
10数年前に初めて見た時、僕は、1989年のパリ、、ルーブル美術館前庭に現れたガラスのピラミッドに似た衝撃を感じた。一瞬で虜になったことを思い出す。
もうひとつ、、かつて郵便局だった煉瓦造りの古い建物を使った「アップル ソーホー」も最高。建物の正面にはアップルのロゴも文字もない。「UNITED-STATES-POST-OFFICE」の文字があるだけだ。
ソーホー、、静かで、知的。新しさの中に歴史の奥行きをも感じさせる街並みには強く惹かれる。ニューヨークでもっとも好きな場所のひとつだ。「アップル ソーホー」は、その象徴的存在のように、僕には思える。
夜はステーキとジャズ。ニューヨークで過ごす夜の定番コースだ。ステーキもジャズもこれと決まった店はない。その都度、ホテルのコンシェルジュに聞き、席をとってもらう。
ブロードウェイでミュージカルを観劇したこともあるが、僕にはジャズの方が性に合っている。それと、、ニューヨークはストリートパフォーマンスも大いに楽しめる。
ヨーロッパ編と同様、駆け足の旅になってしまった。妄想は楽しくもあるが、時に虚しくもなる。早く、現実の旅がしたいと願うばかりだ。
● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト
1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。