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2019.03.03

【試乗】スバル フォレスターの、雪道での実力を検証してみた!

雪道での走破性といえば、4輪駆動車だろう。アウディのクアトロが世界的に有名だが、日本にも決して負けていないメーカーがある。それがスバルだ。そのなかでもユーティリティ性能に優れるフォレスターの新型で、雪の山形を走った!

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取材・文/小川フミオ

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全長4625ミリ、全幅1815ミリ、全高1715ミリ
ウィンタースポーツの楽しみかたはさまざまだろう。移動手段はどうしてますか? 飛行機で雪のあるところへ一直線、というひともいるだろうけれど、陸上での移動も、ドライブという楽しみが加わって捨てがたい。

そのときに乗りたいクルマはなにか。昨今は(幸い?)SUVがトレンドなので車高が高めの四輪駆動車という選択肢は多い。なかでも大きな信頼をおけるのが、日本の四輪駆動乗用車のさきがけであるスバルだ。

そもそも東北電力のために、雪上の走破性が高く、快適性も併せ持つ四輪駆動乗用車を開発したのが、いまのスバルのAWD(常時全輪駆動という意味でスバルではこの単語を使う)の原点である。
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この写真ではわからないがリアゲートが汚れてもストップランプとウィンカーはちゃんと見えた
その後、1980年代にはスポーティなワゴンのレガシィを、90年代には世界ラリー選手権でも名を馳せたインプレッサをと、スバルのAWDの技術は大きく発展してきた。

いまのラインナップを見ても、バリエーションは豊富だ。頂点には、1月に米デトロイトで開催された国際自動車ショーで発表され、ファンのあいだで大きな評判となっている「STI S209」に代表される高性能AWD車がある。いっぽう、電子制御技術を活かして悪路走破性の高いフォレスターのような機能性の高いSUVもあるのだ。

スバルでは2019年2月に、そのフォレスターの試乗会を雪の山形で開催した。同社がいかに「リアルワールド」で安心して乗れるAWD技術の開発に腐心しているかを知る、いい機会でもある。

フォレスターは日本でも最も売れているスバル車である。スバルでおもしろいのは、乗用車における全国シェアは10パーセントに満たないが、東京都心部ではその数字がうんと上がるところだ。都会的なイメージが強いブランドなのだ。
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ブリザックは凍結路面にも強いのが自慢で、雪の肘折温泉でも不安なし
はたして、フォレスターは、出来のいい機能にすぐれたプロダクトだ。”いいもの”を好むひとなら、持つ意義、あるいは買う意味を感じられると思う。山形というリアルワールドで、実生活に即した使い方を体験しての印象はとてもよかった。

フォレスターのラインナップに改めて触れておくと、車型はひとつ、パワープラントはふたつだ。すべてのモデルに、重心髙が低くできるなどメリットを持ったシメトリカル(左右対称)AWDと呼ばれる全輪駆動システムが組み合わされる。

2.5リッター水平対向ガソリンエンジン搭載車は「ツーリング」がベースモデルで、そのうえに装備が豊富な「プレミアム」がある。この2車と路線が少し異なり、撥水性シートなどアウトドアテイストを色濃く盛り込んだのが「Xブレイク」である。

もうひとつのパワープラントが「e-BOXER」だ。2リッター水平対向ガソリンエンジンが基本で、発進時や加速時に電気モーターがサポートする、いわゆるマイルドハイブリッドである。
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「アドバンス」ではオプションでこのようなブラウンの本革シートも選べる
フォレスターはベストセラーだけあって路上で見かける機会も多い。そうなるとエクスクルーシブ性には欠けるけれど、いちどスノードライブを経験してみると、希少性だけがクルマ選びのすべてではないと納得してもらえると思う。

たとえていうなら、そばやピッツァだろうか。広く親しまれている料理で、いわゆる三つ星レストランのような創意工夫には欠けるかもしれない。だからといって、料理として劣るとはいえない。

どちらかというと大衆的な料理かもしれないが、作り手が美味を深く追究したものは、強く印象に残る。そば粉や小麦粉など素材の味わいがしっかりあるからだ。それを日常的な傑作とするなら、フォレスターも同様に評価したいではないか。

今回のドライブコースは酒田市を起点にして鶴岡市へと下がってゆき、そこから観光名所として名高い出羽三山神社を横目にみながら、最上郡大蔵村のランチスポットまで行った。近くには豪雪地帯として本州でナンバースリーに入る肘折(ひじおり)温泉もある。
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スタッドレスタイヤのベストセラー、ブリヂストンのブリザックVRX2装着
最初に乗ったのは、スバル自慢の安全運転支援技術「アイサイトセイフティプラス」をはじめ、18インチホイール、専用シート、後席シートヒーターなどを備える「プレミアム」だった。

センターコンソールには、「Xモード」というダイヤル式スイッチが備わっており、スノーモードとディープスノーモードが設けられている。エンジントルクや制動力を制御するためのスイッチだ。

今回は、ところが、ブリヂストンのベストセラー、ブリザックVRX2というスタッドレスタイヤを装着したこともあり、残念ながら(?)雪道用のモードとは終始無縁だった。

通常走行用のモードのままで、多少の積雪などなんの問題ともせず、コースを走破してしまった。路面が雪で白色だったのは、私がふだん慣れている東京市街の光景とは異質だけれど、フォレスターの操縦感覚はいたってナチュラル。クルマの動きからは、自分が雪の世界にいるのだとは思えなかった。

フォレスターには走行安定性を確保するために、ブレーキを自動で制御し、ライントレース性を高める「アクティブトルクベクタリング」が搭載されている。このシステムがあると知っているだけでも安心感がある。
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ボディのサイズ感も手頃で雪道での万能選手だ
フォレスターは全長4625ミリというミディアムサイズだ。全輪駆動システムが床下に収まっているが、パッケージングはとてもよい。室内は後席を含めて余裕があり、かつ荷室も広大だ。さらに、肩まで暖めてくれるシートヒーターの効用や、足元が暖まるよう温風吹き出し口を工夫したヒーターなどは、雪道で恩恵を受けられた。

うわさどおり雪深かった肘折温泉ちかくで名物の板そば(太めで硬め)のランチをとったあと、e-BOXER搭載の「アドバンス」に乗り換えた。「プレミアム」はアクセルペダルが軽めということもあり、発進時にトルクが出すぎて乗員がのけぞってしまう失策をやらかしがちだが(それは私のこと)、「アドバンス」は電気モーターをうまく使いジェントルな走り出しだ。

「アドバンス」では、安全かつ信頼のおける雪上走行のために(マイルド)ハイブリッドのメリットを活かしつつ、デメリットを減じる手立てが講じられている。

ひとつは、コーナリング時のアンダーステアの低減にある。ハイブリッドゆえ、軽くブレーキングすると、バッテリー充電のための回生システムが働く。それにより前輪には大きめの制動力がかかり、結果、車体が後輪に押しだされるように外がわにふくらみがちになる。いわゆるプッシングアンダーステアだ。
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山形駅前の都会的な雰囲気にもよく合う
それを防ぐため電子制御システムが働き、前輪のスリップ量を検知し、アンダーステアを防ぐための、後輪へトルク配分を調節する。そのためカーブでの旋回性能があがり、ニュートラルなステアリング特性となるのである。

もうひとつは電気モーターの積極的な利用だ。とりわけすべりやすい路面での発進や、段差などを乗り越えるとき、適切なトルクを、ガソリンエンジンでなく電気モーターから得られるようにしている。応答性のよさに注目してのことだ。

実際に操縦感覚はスムーズきわまりない。乾いた路面で飛ばして楽しい「アドバンス」だが、電気モーターを活用した応答性のよさは、雪のうえでは信頼感となっていた。

「アドバンス」にはドライバーのプロファイルを5名ぶん登録できる機能も備わる。乗り込んだときに車載カメラがドライバーの顔を読み取って、シートポジションなどを登録の位置に調節してくれる。アイサイトと並行して、このように、日常的に役だつ電子技術も盛り込まれているのである。

価格は下記とおりとなる。
「フォレスター・ツーリング」280万8000円(8パーセントの税込み・以下同)
「同プレミアム」302万4000円
「同Xブレイク」291万6000円
そしてe-BOXER搭載は下記のモデルだ。
「フォレスター・アドバンス」309万9600円

● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト

慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。

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