スタイリッシュさに磨きをかけて2世代目に進化
英ランドローバーが手がけるレンジローバー・イヴォークの初代が登場したのは2011年だ。デザイナーが描いたスケッチをそのまま量産化したような、スタイリッシュなデザインが衝撃的だった。いま見ても新鮮さが薄れていない。
2018年秋に発表された新型イヴォークは、やはりかなり個性的で、デザインにうるさいひとなら目が離せなくなりそうな存在感がある。
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新型イヴォークに試乗したのは、2019年3月のギリシア・アテネだった。試乗会場はリゾートホテル「AMANZOE アマンゾイ」だ。エーゲ海をはさんでアテネ市内の対岸に位置し、ヘリコプターでホテルまでやってくるゲストが多いとか。ここを選んだことだけでも、ランドローバーの気合いの入れ方がわかる。
新型イヴォークの特筆点は、コンパクトなボディだ。全長は4・4メートルを切っている。国産車だとトヨタC−HRとほぼ同じで、マツダCX−5より小さい。メルセデス・ベンツAクラスよりもイヴォークのほうが全長が短い。
このサイズにこだわったのは、従来モデルのユーザーから「大きくしないで」という声が寄せられていたからだと、アテネで出会ったデザイナーや開発者たちが教えてくれた。キャビンのデザインテーマとサイズ。この2つが、他にない特徴となっているのも事実である。
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パッケージングがよりよくなったのは、今回あらたに、エンジン横置きプラットフォームを採用したせいだ。昨今では歩行者保護やクラッシュセイフティの面からフロントのクラッシュエリアを伸ばすクルマが多いが、「内部構造を徹底的に見直すことで、いまのサイズを死守しました」と車両開発担当者は言う。
コンパクトだと書いてきたけれど、実車はかなり存在感がある。美しい曲面で構成されたボディは名人の手がけた工芸品のようで、そこに大径タイヤがはまり、しっかりと脚をふんばっているように見えるのだ(これを自動車デザイン用語では”しっかりとしたスタンス”という)。
もうひとつの魅力はインテリアである。クリーンな造型と、作りのよさと、他に類のない素材の使用で、高級SUVであるレンジローバーの世界観が受け継がれていると感じられるのだ。
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こだわり抜かれた上質感とサイズ
同時にイヴォークでないと手に入らない装備もあって、”いいもの”感が強い。その代表的なものがシート。もう少し厳密にいうと、シート表皮だ。レザーに加え、デンマークのクヴァドラ社が手がけたウール素材のものと、それに今回初というユーカリを使った合繊がとても感触がよい。
このクラスにはライバルが多いが、趣味性でいうと、イヴォークがダントツだと感じられるのは、こういうところの凝りかたである。4.4メートルとコンパクトなサイズで、いいもの感が凝縮している。他に類のないパッケージングだ。
充実した運転支援システムのなかには、オフロードの覇者ランドローバーならではの装備も含まれるのもよい。たとえば現時点でイヴォークにしか用意されていない「クリアサイト・グラウンドビュー」だ。カメラの映像を合成して車体下の状況も見せてくれる。
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オフロードで一定速度を維持してくれる「オールテレインプログレスコントロール」は急峻な上り坂で役に立つし、下り坂では急にブレーキペダルに載せた足の力を緩めても自動でブレーキを制御する「グラディエントリリースコントロール」が機能する。
ランドローバーのスタッフはアテネ近郊にオフロードを体験できるルートをたっぷりと用意してくれていた。おかげで、イヴォークは街乗り用のスタイリッシュなSUVだと思っていたが、じつはオフロードでもすごかったと再認識。実際に荒れた道へ好んで走りに行くかどうかはともかく、いざというときの備えがあるのはユーザー心理としては嬉しい、はずだ。
オンロードでは快適性が際立った。私は、48ボルトの電気モーターを使った「BiSG」(ベルトドリブン・インテグレーテッド・スタータージェネレーター)装備のMHEVを操縦した。
エンジンのトルクが充分に出ない1000rpm以下の領域を電気モーターでトルクを補うマイルドハイブリッドである。出足はスムーズで、エンジンへうまくつないでくれる。そのあとも気持ちよい加速が味わえるのだ。
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英のメリディアンオーディオはホームオーディオの分野では(私の記憶では)“目を閉じたときそこにそのままの編成があると感じられる音楽の再生を目指す”をモットーにしていたブランドだ。つまり室内楽の再生が得意だった。
実際にかつてのランドローバー車ではおとなしめの音という印象があったけれど、新型イヴォークでは低音がしっかり出る元気のいいサウンドが印象に残る。ちゃんと今っぽい音源に対応している。なので車内にいると、とてもいい雰囲気のリビングルームでリラックスしているような気がしたほどだ。
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日本でのラインナップも発表されている。ベース車種は「Evoque」(461万円〜)。そのうえに、よりスポーティな外観の「R-DYNAMIC」(602万円〜)が設定さている。期間限定で装備の豊富な「FIRST EDITION」(799万円)もある。
エンジンは2リッター4気筒が基本で、ガソリンは200馬力の「P200」、249馬力の「P250」、それに300馬力のマイルドハイブリッド「P300」が日本で販売される。加えて180馬力のディーゼルの「D180」が選べるのだ。「P300」は「R-DYNAMIC」のなかでももっとも装備が豊富な仕様「HSE」に搭載だ。
薄く見えるキャビンの造型は従来からのテーマを踏襲している
全長×全幅×全高=4371×1996×1649mm(EU)のボディ
大きなタイヤの存在感を感じさせるスポーティなルックス
ブルーイッシュな白基調の内装はクリーンで、そこに艶のある「タッチプロデュオ」用モニターがはめこまれている仕様
パッケージングが見直されてリアシートも快適(写真はユーカリ合繊のシート表皮)
「クリアサイト・グラウンドビュー」で車体の下の状況をチェックできる
写真は「バーニッシュド・カパー」の飾りをもたない仕様(日本では「Evoque」仕様)
荷室は広くてリアシートバックが2対1対2の可倒式のためさらに使いやすい
薄く見えるキャビンの造型は従来からのテーマを踏襲している
全長×全幅×全高=4371×1996×1649mm(EU)のボディ
大きなタイヤの存在感を感じさせるスポーティなルックス
ブルーイッシュな白基調の内装はクリーンで、そこに艶のある「タッチプロデュオ」用モニターがはめこまれている仕様
パッケージングが見直されてリアシートも快適(写真はユーカリ合繊のシート表皮)
「クリアサイト・グラウンドビュー」で車体の下の状況をチェックできる
写真は「バーニッシュド・カパー」の飾りをもたない仕様(日本では「Evoque」仕様)
荷室は広くてリアシートバックが2対1対2の可倒式のためさらに使いやすい
● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト
慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。