
昨年は最終戦で優勝、逆転でシリーズ・チャンピオンに輝き、悲願のタイトルを獲得したLEONレーシング。しかし、その喜びに浸っている間もなくあわただしくシーズンオフを過ごし、気がつけば開幕戦の決勝レースを迎えようとしていた。
もっとも、メンバーはここ何年も共に戦ってきた仲間たち。互いに気心も知っており、いかにタイトル獲得がうれしかったとしても、今シーズンの開幕戦には平常心で挑んでいた。そんなLEONレーシングは、ドライバーの黒澤選手と蒲生尚弥選手を含む主要メンバーにはほぼ変わりなく新シーズンを迎えた。験のいいNo.65メルセデスAMG GTも、徹底的なメンテナンスを行なったとはいえ、去年を戦い抜いたマシンそのもの。つまり、なにひとつ不安要素がない状態で開幕戦の決勝レースに挑んでいたはずである。
唯一の誤算は、レースが始まる午後2時30分までにさほど雨脚が弱まらなかったこと。このためレースはセーフティカーに先導されてスタートを切った。そして4周目、状況が落ち着いたところを見計らってセーフティカーがピットロードに退去。メインストレート上でグリーンフラッグが振り下ろされたところで本格的なレースモードに突入した。ところが……。
この直後にアクシデントが発生して再びセーフティカーが登場。コース上の安全が確認された11周目に再スタートが切られたが、わずか2周走っただけで多重クラッシュが発生し、今度は状況を鑑みて赤旗が提示されてレースは中断となった。

この間、LEON号がどうしていたかといえば、黒澤選手はハーフウェット用セッティングが施されたAMG GTを懸命に操り、コース上に留まり続けた。途中、順位をふたつ落として6位フィニッシュとなったものの、この日のクラッシュ続出のコンディションを考えれば、マシンが無傷のままゴールに辿り着いただけでも大成功であろう。
今回のレースは、本来予定されていたレース距離の75%を消化していなかったため、入賞者に贈られるポイントも通常の半分とされ、黒澤選手と蒲生選手は2.5点を手に入れた。理想とはほど遠いレース展開だったが、それでも傷口を最小限にとどめることができたといえる。
第2戦の舞台は富士スピードウェイ。全長1.5kmのロングストレートをいかに速く駆け抜けるかが勝敗を分けるこのコースは、コーナリングマシンの異名をとるAMG GTにとって決して有利なサーキットとはいえない。
「おそらく厳しい戦いとなるでしょう。それでも、自分たちは自分たちのレースをミスがないようしっかり戦うだけ。つまり、いつもと同じ気持ちで挑みます」
黒澤選手は淡々とそう語ったが、その胸の内に熱い闘志を秘めていることは言うまでもない。