2019.05.05
電気自動車はここまで来ている!? ジャガーのEV、I-PACEに乗ってみた
いまクルマの進化を知りたければ、「EV」電気自動車をウォッチするべきだろう。そんなかでも、ジャガーがリリースしたI-PACEには、最新の技術と新時代のクルマの魅力が凝縮されていた。
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取材・文/小川フミオ
ジャガーの考える未来のクルマのカタチ
日本でもテスラをはじめ、BMW「i3」や日産「リーフ」が走っているが、積極的にEVの長所を感じさせてくれる1台は、ジャガー「I-PACE(アイペース)」だ。2018年9月に日本で受注開始された、このモデルに、2019年3月にようやく試乗する機会に恵まれた。
I-PACEのよさは、乗員にやさしいところだ。まず広い。全長は4695ミリなのでトヨタ・プリウスαより50ミリ長いだけだ。それに対してホイールべーは2990ミリもある。プリウスαより210ミリも長い。電気モーターの恩恵を活かして、広々と気持よい室内空間を持つ。ジャガーでは「ラージサイズ・ラグジュアリーSUVなみ」としている。
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モーターは前後に1基ずつ。前車軸と後車軸を駆動する全輪駆動システムだ。90kWhの出力を持つリチウムイオンバッテリーにより、前後それぞれ348Nmもの出力を誇る。静止から時速100キロまでの加速に要する時間は4.8秒と、たとえばポルシェ718ケイマンよりコンマ3秒遅いだけだ。
フル充電したときの航続距離は438キロとされていて、充電時間は0パーセントからフル充電までを家庭用の7kWの交流で行うなら12.5時間、直流の急速充電(日本だとCHAdeMO)なら0から80パーセントまで85分しかかからない。
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ジャガーでは、モーターやバッテリーやコンバーターなど重いものは出来るだけ下に配置して、重心高を下げることに努めたという。ハンドリングのためだ。かつ「ジャガー史上もっとも優れた」というボディのねじり剛性と、フロントで1640ミリ、リアで1660ミリ(レンジローバーで前1690ミリ、後1685ミリだから比較してもそう悪くない数値だ)という広いトレッドを持つため、コーナリングはかなり気持よい。期待以上だ。
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電気自動車ならではの魅力を追求している
回生ブレーキの効き具合の「強」を選ぶと、ジャガーいうところの「シングルペダル・ドライビング」が味わえる。アクセルペダルを離しただけで強く減速するうえに、最終的には停止まで可能なのだ。クリープといってブレーキを踏む力を弱めるとモーターのトルクで前に進む力の強弱も調節できる。
おもしろいのはエンジン音ならぬモーター音の設定だ。これも、ほぼ無音とダイナミックが選べるようになっている。ダイナミックはスポーティな気分にさせるということだが、高音成分が多めの個性的な音がする。この音がないと加速時など気分が出ないというユーザーのために搭載されたそうだ。
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スポーティな走りが好きなひとは、コーナリング能力などにすぐれる大径タイヤを選び、乗り心地を悪化をカバーするエアサスペンションを合わせる場合もあるだろう。それも悪くない選択だと、実車を体験してわかった。
室内は空間がたっぷりある。着座位置はやや高めだがヘッドスペースにも余裕がある。シンプルな造型のダッシュボードは圧迫感がなく、後席も同様。ヘッドルームとレッグルームともにゆったりしている。このスペースを役立てて、新しい時代のリムジンだって作れそうだと思った。
「スマートセッティング」は、乗り込んだ時点で、ドライバーのシート位置やインフォテイメントが自動的に設定される。認識手段は個人のスマートフォンだ。使い勝手でいうと、バッテリー残量を考慮しながら最適のルートを探すナビゲーションシステムなど、利便性が追究されている。
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グレードは、18インチホイールのベースモデル「S」(959万円)をはじめ、20インチホイールとアダプティブクルーズコントロールなどがおごられた「SE」(1064万円)、そしてシートの調節機能があがるなどの「HSE」(1312万円)だ。ルーフが3種類あったり、ヘッドレスト一体型のパフォーマンスシートもと、オプションは豊富だ。
写真はオプションのパノラミックルーフを備えた仕様
衝突安全性のためボンネットはあるがキャブフォワード(キャビンがフロントへと前進しているプロポーション)デザインが新しい
アルミニウムが94パーセントを占める専用ボディ採用
物理的なスイッチ類は最低限で液晶モニター画面を使うタッチ式が採用されている
オプションのパフォーマンスシートを装備している
広い後席空間で、シート下にも物入れが設けられている
フロントには10.5リッターの荷物入れ
荷室容量は656リッターとかなり大きい
ブレーキを使いニュートラルなコーナリング特性を実現するダイナミックスタビリティコントロールや、滑りやすい路面では強力な回生ブレーキによるホイールロックアップを制御するモータードラッグコントロールが備わる
写真はオプションのパノラミックルーフを備えた仕様
衝突安全性のためボンネットはあるがキャブフォワード(キャビンがフロントへと前進しているプロポーション)デザインが新しい
アルミニウムが94パーセントを占める専用ボディ採用
物理的なスイッチ類は最低限で液晶モニター画面を使うタッチ式が採用されている
オプションのパフォーマンスシートを装備している
広い後席空間で、シート下にも物入れが設けられている
フロントには10.5リッターの荷物入れ
荷室容量は656リッターとかなり大きい
ブレーキを使いニュートラルなコーナリング特性を実現するダイナミックスタビリティコントロールや、滑りやすい路面では強力な回生ブレーキによるホイールロックアップを制御するモータードラッグコントロールが備わる
● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト
慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。