
そんな手堅いレースを戦ってきたLEONレーシングにとって第3戦・鈴鹿大会は悪夢のような展開になった。
土曜日の午前中に行われた公式練習で12番手のタイムを計測したチームにはひとつの秘策があった。予選で投入するソフト・タイヤは、最高の速さを発揮できるラップは1周くらいしかないものの、このタイミングで確実にアタックできれば通常より1秒近くも速いラップタイムが記録できる……。このことが事前のテストで確認されていたので、予選1回目のアタックを担当した黒澤治樹選手はコースインした直後から積極的にタイヤをウォームアップし、その次の周でタイヤの性能を100%絞り出そうとしていた。
そして黒澤選手による渾身のアタックがまさに始まったその瞬間、ピットレーンから4~5台のマシンがコースイン。まだタイヤの温まっていない彼らのペースは当然、上がらなかったが、それでも彼らは本来のレーシングライン上に居座ったまま走行を続けたのである。
通常、このような状況で後方からタイムアタック中のマシンが近づいてきた場合は進路を譲るのが暗黙の了解なのだが、ヘッドライトをパッシングさせながら迫る黒澤選手に、彼らはなぜか道を明け渡さなかった。やむなく黒澤選手は一旦アタックを中断。タイヤをクールダウンし、次の周に改めてアタックを行ったのだが、タイヤが最高の性能を発揮するタイミングはすでに終わっており、ラップタイムはプラクティスとほとんど変わらない1分59秒台に留まってしまい、予選22位に沈んでしまったのだ。
気を取り直して臨むはずだった翌日の決勝。だが負の連鎖とはまさにこのことで、決勝レース直前のウォームアップで1本のタイヤを固定するナットが緩むというトラブルが発生。その場でマシンを緊急停止、事故は免れたものの、全車がスタートし終わった後でピットレーンからレースに臨む “ピットスタート”を余儀なくされたのである。
スタートドライバーを務めたのは黒澤選手。最下位の29番手でスタートしたLEON号は5周目にライバルの1台がトラブルでピットインしたために28番手に浮上すると、トップグループが2分4秒台で周回するなか、2分3秒台の好タイムで激しく追い上げ、9周目には27番手、11周目には26番手と次第にポジションを上げていった。


前述のとおりセーフティカーラン中は全車のペースが大幅に落ちるので、この間にピット作業を済ませればロスタイムを劇的に短縮することができる。LEONチームはこれを期待して緊急ピットインを行ったのだが、このタイミングではGT300クラスの上位陣はまだセーフティカーの直後には追い付いてなく、通常のセーフティカーランよりも速いペースで走行。このためレオン号は実質的な周回遅れとなってしまう。これはまったく想定外の展開だったといっていい。
結果的に蒲生選手は27番手からレースを再開。セーフティカーが退去すると先行するマシンは続々とピットストップを行ったが、レオン号はこれでライバルたちと同一周回に復帰しただけで、順位は変わらない。まさに最悪の展開だ。
それでも蒲生選手は諦めることなく追撃し、トップグループと肩を並べる2分5秒台のハイペースで走行。34周目には22番手に浮上するとさらにペースを上げ、40周過ぎにはトップをもしのぐ2分3秒台で周回し、続々とライバルたちを仕留めていった。最終的にレオン号は14位でフィニッシュ。最下位の29番手から実に15台抜きを演じたことになる。
しかし、スーパーGTでポイントが与えられるのはトップ10まで。14位に終わったレオン号は今回、ポイントを獲得できなかった。ちなみにレオン号は昨年、全戦でポイントを獲得してチャンピオンを勝ち取り、今シーズンもここまで2戦連続で入賞してきた。ポイント圏外に終わったのは2017年の第7戦以来、実に1年7ケ月、11戦ぶりのことだった。
