新型レクサスRXはなにが変わったのか?

レクサスRXは、全長5メートルになんなんとするサイズのSUV。レクサスのラインナップはそのうえにレクサスLXがあるけれど、SUVという3文字の頭にくるS(スポーツ)という点では、RXはトップをいっているといってもいい。
現在のRXはそもそも2015年に発売された。米国や中国でも若い世代にとくにウケがいいというアグレッシブなスタイリング(たとえば米のフリーウェイで目立つこと!)に加え、最近ではいわゆるサッカーマム対策の3列シート仕様も出て、盤石のマーケティングである。

いっぽうで、正直に書くと、従来のRXは乗り心地や操縦性の面でいまひとつなところがあった。”もっといいクルマになる余地があるのでは?”と思わせたのも事実だ。発売後4年といえば、そんなことをひっくるめてフルモデルチェンジ、が見えてくるタイミングだ。しかし5年はもたせたい。少々我慢してもらうか、というのが一般的な態度である。
ところがレクサスはそんなことおかまいなしに、今回とても大きな改良を加えてきた。これにはおどろいた。フルモデルチェンジを待たずに、RXのマイナーチェンジを担当したチームはボディ骨格にも手を入れた。しなりを生みコーナリングがよくなるといわれる接着材によるパネル接合を増やし、さらに必要な箇所にはスポット溶接の打点も多くした。

試乗の際、用意されていたのは「RX450h F Sport」と、3列シートの「RX450hL」。ともに3456ccのV型6気筒エンジンに電気モーターを組み合わせたハイブリッド仕様。私が乗ったのはどちらも、後輪をモーター駆動するAWDだった(そもそもRX450hLはAWDのみの設定)。
はたして、開発者の言葉から期待していたとおりの出来である。私は先に海外で、改良されたRXに乗っていて、いいクルマになっているのを知ってはいたものの、日本の高速やワインディングロードで試してみて、改めて、感心。
足まわりはしなやかで、かつ振動も騒音もほとんど伝わってこない。すべてにお金と手間をかけて、問題点を解決したという感じだ。どんな路面でも静粛でしなやかに、というのは遮音も振動も徹底的に対策する必要がある。これこそクルマにおける”高級”なのだ。
足まわりはしなやかで、かつ振動も騒音もほとんどない

市街地で、アクセルペダルをあまり踏まない領域では、電気モーターの力だけで粛々と走るが、その気になれば、たっぷりとスポーツドライビングを楽しませてくれる。ジェントルマンぶりも求められる一流ラガーマンのようであると、日本がワールドカップで湧いている最中だったこともあり、そんなイメージを連想した。
スポーティな走りが好きなひとは、専用ダンパーを持つF Sportがいいだろう。足まわりにゴツゴツ感もなく、新しいRXが秘めるポテンシャルをおおいに味わえる。

インテリアの上質感はいい意味で変わっていない。使う素材の質感が吟味されているからだろう。ホールド性のいいシートひとつとっても、機能と審美性がうまくマッチしているのだ。
インフォテイメントシステムが新しくなり、12.3インチのディスプレイは、タッチセンサーが採用されている。同時にSmartDeviceLinkをはじめ、Apple CarPlayやAndroid Autoが使えるようになった。音楽好きにも朗報だろう。好きな曲を思いきり聴ける場所は車内ぐらいしか残っていないから。

エンジンは最高出力193kW(262ps)を6000rpmで、最大トルク335Nmを4600rpmで発生する。ハイブリッド車の電気モーターはフロントが335Nmのトルクを、「E-Four」と名づけれたAWD車ではこれにリアの139Nmが上乗せされるのだ。ラインナップには、1998cc4気筒のインタークーラー付きターボチャージャーを組み合わせたガソリンエンジン搭載のRX300も用意される。こちらには前輪駆動とAWD。
ボディサイズは2種類。2列シートのモデルが全長4890ミリ、3列シート車はリアが延長されて5000ミリ。2790ミリのホイールベースは同一だ。110ミリもボディを伸ばすと、とりわけ側面から見た際のスタイリングが変わってくるものだが、RXのデザイナーは極力、2つのモデルに統一したイメージをもたせることに腐心したと聞く。実際にその努力のおかげで、外観上の区別はむずかしい。

グリルをリデザインした際のテーマは、アグレッシブさをすこし抑えて、エレガンスを強調するのが意図のようだ。米国では30代や40代に従来の躍動感あふれるスタイルが好まれたようだが、今回はその上の世代にも配慮した、と聞いた。
今回のマイナーチェンジで、3列めのシートのポジションが2種類から選べるようになっていて、荷物を載せるときと、子どもを座らせるときで、変えられる。私はゴルフバッグ仕様かと思っていたが、米国では実際のニーズが子どものためなのだ。

価格は、2リッター4気筒ターボの「RX300」は前輪駆動が513万円から、AWDが540万円から。「RX450h」は前輪駆動が627万円からと、AWDが654万円からだ。「RX450hL」はAWDのみの設定で796万円となっている。
フロントマスクはメッシュグリルに抑揚をつけ、中心部に向けて押し出しのある立体造形に
ボディと足回りが改良されて、よりシャキッとした走りを楽しませてくれるRX450h F Sport
ハッチゲートはリヤバンパーの下に足を出し入れすることで自動開閉
RX450h F Sportのシートはホールド性もよい
質感の高いインテリアは魅力だ
マルチメディアシステムにはタッチディスプレイが新採用されるとともに、用するとともに、SmartDeviceLink、Apple CarPlay*、Android Autoに対応
RX450hLには3列めのシートがそなわる
ハイビーム始動時に起動することが出来るブレードスキャン・アダプティプハイビームシステムでは、対向車や先行車を眩惑することなく早く歩行者や標識を認識できるという(ただし歩行者を眩惑しないようにするのも課題)
F SPORT専用チューニングとして 、しなりや微振動をすみやかに吸収するパフォーマンスダンパーをフロントとリヤに装着したのも特筆点
フロントマスクはメッシュグリルに抑揚をつけ、中心部に向けて押し出しのある立体造形に
ボディと足回りが改良されて、よりシャキッとした走りを楽しませてくれるRX450h F Sport
ハッチゲートはリヤバンパーの下に足を出し入れすることで自動開閉
RX450h F Sportのシートはホールド性もよい
質感の高いインテリアは魅力だ
マルチメディアシステムにはタッチディスプレイが新採用されるとともに、用するとともに、SmartDeviceLink、Apple CarPlay*、Android Autoに対応
RX450hLには3列めのシートがそなわる
ハイビーム始動時に起動することが出来るブレードスキャン・アダプティプハイビームシステムでは、対向車や先行車を眩惑することなく早く歩行者や標識を認識できるという(ただし歩行者を眩惑しないようにするのも課題)
F SPORT専用チューニングとして 、しなりや微振動をすみやかに吸収するパフォーマンスダンパーをフロントとリヤに装着したのも特筆点
● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト
慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。