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2019.11.23

「レクサスRX」は大胆な改良で何が変わったのか

レクサスは、ラグジュアリーSUV「RX」をマイナーチェンジし、8月29日に発売した。RXは、グローバルに展開するLEXUSブランドの中核モデルであり、1998年の投入以降、ラグジュアリーSUV市場の先駆者として、全世界で好評を博してきた。今回のマイナーチェンジで何がどう変わったのか。モータージャーナリストの岡本幸一郎氏が試乗した。

CREDIT :

文/岡本幸一郎(モータージャーナリスト) 

記事提供/東洋経済ONLINE
レクサスRX
8月にマイナーチェンジを実施したレクサスのラグジュアリーSUV「RX」(写真:トヨタグローバルニュースルーム)
ちょうど30年前にレクサスが始動し、その約10年後の1998年に、ラグジュアリーSUVパイオニアとして誕生したのが「RX」だ。

乗用車の快適性とドライビング性能にSUVの機能性を融合したRXは瞬く間にヒットモデルとなり、ヨーロッパのプレミアムブランドを中心に世界中の自動車メーカーが後を追った。さらに2000年代には、本格的なハイブリッド車である「RX400h」を設定。ラグジュアリーカー市場に新しい価値を持ち込み、電動化においても歴史に名を刻んだ。

2015年10月に登場した4代目となる現行RXも、変わることなく世界中で好調な売れ行きを見せている。そしてこのほど大がかりなマイナーチェンジを実施。ますます競争の激化する中、マーケットのメインプレイヤーであるRXが、その主役であり続けるべく、洗練されたデザイン、動的性能の向上、新技術を柱に多岐にわたる改良を行った。
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6人乗りのキャプテンシート仕様を追加

特筆すべき変更点として、3列シート車に6人乗りのキャプテンシート仕様の追加と、3列シートを後方へスライドできるようにしたことが挙げられる。通常のベンチシートだと乗り降りしにくい3列目へのアクセス性の改善と、2列目を特別感のあるシートにしたいという開発側の思いの両面を考え合わせた結果、6人乗りがベストと判断されたためだ。

RXの3列シート車は現行型の当初には存在しなかったところ、北米市場からの要望を受けて発売約1年後に設定され、さらに約1年後の2017年12月に日本市場にも投入された。ただし、販売比率は日本では1割程度にとどまり、北米でもそれほど高くない。参考まで、ハイブリッドの販売比率は日本が6~7割と多いのに対し、北米は逆に1割程度にとどまるが、最近は増えつつあるという。
レクサスRX シート
RX450hLの車内。3列シート車に6人乗りのキャプテンシート仕様が追加された(写真:トヨタグローバルニュースルーム)
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販売比率が低迷していた主な理由として居住性の悪さが指摘されており、販売サイドからもお客さまにおすすめできないという声が上がっていた。そこで今回、しっかり座れる3列目シートを実現するため2ポジション化を図った。3列目シートは電動でアレンジ可能となっており、一度シートを格納してから、もう一度2秒間長押しするとシートの位置が電動で座面が沈み込むとともに95mm後方に下がる。これにより狭かった頭上と足元の空間が確保され、居住性はそこそこ改善した。

また、最近ではミニバンも2列目キャプテンシート仕様の販売比率が高まっているが、RXもこれで2列目の真ん中のスペースを通って3列目を行き来できるので、3列目にも楽に乗り込めるようになった。例えば子どもの送り迎えで近所の子どもも乗せて移動する際にも、ここが空いているおかげでより後席の乗員が一体となってわいわい楽しくすごしてもらうことができるようになった。

走りについても、フットワークの印象が激変していた。最近のトヨタやレクサスのクルマはこういうことばかりなのだが、予想をはるかに超える上がり幅だ。マイナーチェンジ前の現行型RXの初期型は、NXよりも後発であるにもかかわらず、乗り味は旧態依然としていて、乗り心地がソフトなだけで褒められる要素が見当たらなかったのは否めず。それが一気に最新のレクサステイストになっていた。
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向上が図られたボディー剛性

数多くの箇所に手を加えた中でも最大のポイントはボディー剛性の向上だ。マイナーチェンジでボディーにまで手を入れるというのは、最近では他メーカーも含めちらほら見受けられるが、少し前までのトヨタではありえなかった話。今回のRXにおいても当初の予定にはなかったという。

ところが、生産技術と工場の役員がチーフエンジニアも立ち合いのうえ乗り合わせを行った際に、RXの乗り味がよろしくないと共通して認識した。仮にもRXはグローバルでレクサスの最量販車種。北米や中国ではNXよりもずっと売れている。

そのRXがこのままでよいのかという問題意識を持ち、急きょ検討された結果、開発陣にとっては夢のように実現したのだという。かくして、車体については構造用接着剤を2.3m、アンダーボディーにも1.9m施して接着面を拡大したほか、スポット溶接を14点追加するなどして大幅な剛性向上を図った。

しっかりとした土台があれば、サスペンションによりしっかり仕事をさせることができる。新型にはFCD(フリクション コントロール デバイス)と呼ぶゴムの弾性で振動をキャンセルし路面から入る細かい振動を止めるという新しい機構を採用したのも特徴だ。
また、ハブベアリングについても剛性を向上した。剛性を高めるとボールにかかる圧力が高まるのだが、摩擦が増えて燃費に影響する。そこでフリクションを下げるべく対処した。さらにリアスタビライザー径を太くしてアンダーステア特性の軽減を図ったほか、他車種でも好評の、フロントの内輪のブレーキを制御してコーナー立ち上がりで加速する際のアンダーステアを抑える「ACA(アクティブ コーナリング アシスト)」も全車に標準装備した。

これらにより得られたものは小さくない。入力の受け止め方が新旧で全然違って、上質な乗り心地を実現していたほか、ハンドリングの応答遅れも払拭され、スッキリと回頭するので、大柄なクルマながら動きとしてはよい意味で小さく感じるようになっていた。ドライバビリティーの向上は明らかだ。
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レクサスRX
3列シート6人乗りの「versionL」(写真:トヨタグローバルニュースルーム)
試乗した3列シートの「バージョンL」ですらそうだったのだから、もう1台試乗した、走りの本命である2列シートの「Fスポーツ」は、より一体感のあるリニアな走りを実現していた。

こちらは減衰力調整を30段から600段に実質無段階を実現した新制御の「AVS(アダプティブ バリアブル サスペンションシステム)」、車体制振ダンパーであるヤマハ製の「パフォーマンスダンパー」を採用したほか、電動アクティブスタビライザーによりロールを抑制するなどの専用のチューニングが施されている。さすがは開発関係者が「自信作!」と胸を張るだけのことはあった。
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外観はやや控えめな雰囲気に

もともとRXでは好評だったデザインについても、今回やや手が加えられ、レクサスを象徴するスピンドルグリルやヘッドライトが少しだけ小さくされるなどし、やや控えめな雰囲気になった。これは北米では高齢のユーザーも多く乗ることを考えると刺激的すぎたことを受けてのこと。ただし、全体としては派手なフェイスが好まれる傾向のご時世なので、抑えすぎてもよろしくないため、ちょうどよい落としどころを探ったという。

インテリアでは、マルチメディアシステムにタッチディスプレーを採用するとともにスマートフォン連携機能を追加したほか、スマートフォンホルダーの新設、USB端子の増設、内装色の新色設定など時代のニーズを受けての変更があった。

先進安全支援装備についても機能が強化され最新世代に進化したが、もう1つ注目すべきが、ブレードスキャンAHS(アダプティブ ハイビーム システム)だ。これは残像効果を応用し、LEDからの光を高速で回転するブレードミラーに照射し、反射した光がレンズを介して高速移動しながら前方を照らす新機構のAHSだ。2006年から構想があり、2015年に実用化のメドがたち、ようやく新型レクサスに初めて市販車に搭載された。これのデモを見学できたのだが、照射範囲が広く、配光と遮光の制御が非常に緻密で動きが自然であることが印象的だった。

これまでデザインの力だけでも高い人気を集めることができていたRXに走りのよさと最新の装備を得たのだから、鬼に金棒というとちょっと大げさか。売れているからヨシとするのではなく、しっかり中身も磨いてきたところから、今のレクサス開発陣の本気でクルマをよくしたいという思いがヒシヒシと伝わってきた。
当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です
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