もはやガソリンと遜色なしのディーゼルエンジン

BMW X7は、Xシリーズと呼ばれる同社のSUVのラインナップの頂点に立つサイズだ。最大7人乗れる3列シートを装備し、豪華な仕上げの内装は、米国市場でも大きな人気という。
全長5,165ミリのボディを、3,105ミリのホイールベースを持つシャシーに載せている。日本にはトゥーマッチかも? 私は最初このクルマに米国で試乗した際、そう思った。ところが、日本で実際に乗ってみると、意外に扱いやすい。
なにはともあれ、X7で感心したのは、そのすばらしい動力性能だ。今回乗った「X7 xDrive35d」は、2992cc6気筒ディーゼルエンジン搭載モデルである。白状すると、私は乗ってしばらくのあいだ、ガソリンエンジン車だと思い込んでいた。

いやなバイブレーションが抑えられているのは、乗り心地でも同様だ。サスペンションシステムの設定も(BMWの通例として)任意で変えられる。「コンフォート」だとややソフトすぎるかなと思う場面もあるいっぽう「スポーツ」ではすべてが引き締まって、このクルマのポテンシャルが存分に味わえるかんじだ。
X7の持ち味は、ひとつはさきに触れたように、大人数を載せられる大型サイズのボディにあるが、同時に、ハンドリングがよくて、ドライブが楽しめるところだ。いまの7シリーズにも共通する縦に長くなって巨大化したキドニーグリルを備えるフロントマスクの迫力はダテではない。

しっかりした操舵感覚に、切り込んだときの反応にすぐれる車体は、”エアサスでなんとか仕上げています”というものではなく、じつにナチュラル。スポーティさを看板にするBMWへの期待を裏切らない出来映えだ。
じつはエアサスペンションで、前後左右の足の動きをしっかりコントロールしているのだが、その設定がうまい。車体の動きと、操舵と、加減速といったすべてをきれいに統合して制御している。
速度を抑えめにして、いわゆる”流す”ような速度で高速を走るのも、これはこれでとてもいい。先に触れたとおりで、適度に鋭敏なステアリングのおかげで、クルマと自分の一体感がある。それゆえ運転に飽きない。
ゆったり快適な室内空間

2列めに、シートごとにアームレストを設けたキャプテンシートが備わっており、これも居心地のよさにおおいに貢献している。オプション装備だがこれは是非選びたいと思った。
米国では子どもたちのサッカーチームを連れて走る”サッカーマム”が大きなお得意さんのようだが、いっぽうで、移動用オフィスとしてもよさそうだ。

機能的な部分はBMW製品に親しんでいるひとなら1秒で慣れる、おなじみの設計だ。「オーケイ、ビーエムダブリュ」の呼びかけで起動する対話型の音声認識システムも備わるし、最新のBMW車のセリングポイントのひとつである、自動後退システム「リバース・アシスト」も搭載されている。
リバース・アシストは、速度が時速35キロ以下での走行なら、直近の50メートルの走行ラインをつねにクルマ(のコンピューター)が記憶していて、リバースギア(R)に入れてボタンを押すとステアリング操作が自動で行われながら、クルマが自動で後退していく。

3列シートのビッグSUVというマーケットのなかでX7 xDrive 35dには競合も多い。「メルセデス・ベンツGLS350d 」「アウディQ7 55 TFSI quattro」「キャデラック・エスカレード」「レクサスLX560」などが思いつく。
X7 xDrive 35dの価格は1099万円。価格的にはメルセデス・ベンツGLS350d 4Matic Sports(1261万円)が近い。小さな市場というラグジュアリー大型SUVだが、個性が際立つモデルが多いのだ。そこにあって、X7にはちゃんと光るものがある。
全長5,165ミリ、全幅2,000ミリ、全高1,835ミリ
長いルーフで実用的なボディだが、ちゃんとBMWだとわかるデザイン
TFT液晶モニターを2つ備えたダッシュボード
着座位置は高め
2列めのキャプテンシートはオプション装備
まるで7シリーズのようなフル装備で居心地のいい2列め
3列めのシートにもおとなが座れるスペース
最高出力195kW(2656ps)@4000rpm、最大トルク620Nm@2000〜2500rpm
全長5,165ミリ、全幅2,000ミリ、全高1,835ミリ
長いルーフで実用的なボディだが、ちゃんとBMWだとわかるデザイン
TFT液晶モニターを2つ備えたダッシュボード
着座位置は高め
2列めのキャプテンシートはオプション装備
まるで7シリーズのようなフル装備で居心地のいい2列め
3列めのシートにもおとなが座れるスペース
最高出力195kW(2656ps)@4000rpm、最大トルク620Nm@2000〜2500rpm
● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト
慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。