使い勝手はバツグン。その走りもバツグン!

メルセデス・ベンツ日本が2019年8月に導入した「メルセデスAMG A35 4MATIC」は、一見、地味めな4ドアハッチバック。オプションで巨大なリアスポイラーをつけることも出来るんですが、存在をあんまり誇示せずに走らせることも可能です。
でもじつは、かなりの実力派なんですね、これが。特にこのエディション1は、特別。まず目をひくのが、バンパー一体型の大型のエアダム。ここにレース車のようなスプリッターが付きます。バンパーコーナーに、魚のひれのように装着されたスプリッターは、空力特性によって、高速でのコーナリングを劇的に向上させる働きをしてくれます。

ためしに乗り込んで、アクセルペダルを軽く踏み込んでみると、のぞけるような加速。軽量化をはかって1570キログラムに抑えた車体だけに、パワフルさはひとしおです。
瞬発力は、みごと。ギアをドライブに入れて、アクセルペダルを軽く踏んだだけで、飛び出すようにスタートします。高速走行で、定速走行時から追い越し加速するときの身のこなしのするどさも、目がさめるほどです。

クルマが自分の思いどおりに動いてくれると感じられるのは、じつにいいもの。そのためには、足まわりと車体の剛性とが重要な要素でありますが、加えてもうひとつ。クルマと自分が一体化していると思えるには、ブレーキペダルを踏んだときの制動力のリニアさにもかかっています。

ペダルのフィールは繊細で、極端なことをいうと1センチ単位で制動距離が調節できそう。かつ、強く踏めば強力な手でつかまれたようなストッピングパワーを発揮してくれるのです。こういうところに、モータースポーツの歴史が長く、F1では2014年から6年連続で選手権を獲得しているメルセデス・チームの存在感を感じさせるではありませんか。
インテリアもかなりスポーティ。ドライブ好きのオヤジさんなら、やる気をかきたてられるでしょう。モータースポーツの世界ではおなじみの、コーナリング中にからだが滑りにくいスウェード調の素材をシート表皮やステアリングホイールなどに採用しているのも、機能的であり、かつ雰囲気的にも気分を盛り上げてくれます。

3代目Aクラスに、「A45 AMG 4MATIC」という265kW(365ps)、最大トルク450Nmの2リッターエンジンとフルタイム4WDシステムを搭載したモデルを設定。市場で歓迎されたのが、スタートでした。
それまでこのようなホットハッチは、フォルクスワーゲンや、イタリアやフランスのメーカーが得意とするところ。その市場にいわば”王者”が入ってきたのですが、競合になったところはやりにくかったでしょう。

メルセデス・ベンツ日本では、このA35 4MATIC(628万円~)に加え、さらなる高性能の「A45 S 4MATIC+」(790万円~)を発売。こちらは、310kW(421ps)@6750rpmの最高出力と500Nm@5000~5250rpmの最大トルクを発生する1991cc4気筒エンジン搭載です。
これも速い。驚くほど速い。かつ、乗り心地はほどよくて、長距離も走れそうです。自動車用語を使うと、グランドツアラーとレーシングカーのいいとこどり。
A35 4MATICとA45 S 4MATIC+の価格差は150万円以上あるけれど、ふところに余裕あるひとなら、おおいに迷ってほしいものです。この時代にこんなハッチバックを作ってしまうメルセデス・ベンツにはホント感心させられます。
写真は19インチリムのホイールが入ったA35 エディション1
A35 エディション1は写真のデニムブルー、A45 エディション1は「designoマウンテングレーマグノ」と「サンイエロー」が限定販売
TFT液晶モニターを使っている
小径ステアリングホイールに専用スポーツシートを備える
6500rpmからレッドゾーンが始まる
アンビエントライトが備わり雰囲気が楽しい
バンパーコーナーにはレースカーのようなスプリッター
イエローもスポーティでいいかんじ
写真は19インチリムのホイールが入ったA35 エディション1
A35 エディション1は写真のデニムブルー、A45 エディション1は「designoマウンテングレーマグノ」と「サンイエロー」が限定販売
TFT液晶モニターを使っている
小径ステアリングホイールに専用スポーツシートを備える
6500rpmからレッドゾーンが始まる
アンビエントライトが備わり雰囲気が楽しい
バンパーコーナーにはレースカーのようなスプリッター
イエローもスポーティでいいかんじ
● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト
慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。