スポーティかつエレガントな4ドアクーペ
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「メガトレンドはSUVですが、ラインナップでは3シリーズや4シリーズの存在感が増しているのは事実です。たんに機能主義でなく、エモーショナルと私たちは表現しますが、すこしスタイリッシュなセダンに乗りたいっていう顧客も確実に増えています」
2020年2月に開催された試乗会には、世界各地からのジャーナリストがやってきました。場所はポルトガルの首都リスボン。この時期でも20度ちかい気温です。
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カテゴリーでいえば、4ドアクーペの2シリーズグランクーペ。4ドアクーペとは、クルマ好きのオヤジさんならご存知だと思いますが、流麗なルーフラインで、前席重視の2プラス2的なセダンであります。プレミアムカーの分野でひとつのトレンドとして定着しました。
トレンドを作るのに長けているBMWは、6シリーズグランクーペ、4シリーズグランクーペ、それに2019年の8シリーズグランクーペと、立て続けに「グランクーペ」と名づけた4ドアクーペを発表してきています。
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今回の2シリーズグランクーペは、BMWのなかで最小サイズの4ドアクーペ。ただ、最小とはいっても、全長は4535ミリ。2005年発表の5代目3シリーズと同じぐらいのサイズです。
最新の3シリーズは(衝突安全性など最新の安全基準を採用した結果)4715ミリへと大型化。市街地で使い勝手のいい4ドアが欲しい、なんて思っているひとにはややトゥーマッチ。
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リスボン近郊の高速や山道で試乗したのは、トップモデルの「M235i xDriveグランクーペ」と、ディーゼルの「220d」。日本には当面、ディーゼルの導入はなく「、1.5リッターガソリンの「218iグランクーペ」が販売されます(発売は2020年3月中だそう)。
スタイリングは、低くかまえたようなスタンスで、かなり目を惹きます。大きなキドニーグリルをはさんで、キリッとつり目のヘッドランプ。それに大きなエアダム一体型であり、彫りが深いというか立体的な造型のバンパーがまたスポーティ。
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あれ、と思ったのは、サイドウィンドウのグラフィックス。BMWは、「パーソナルな4ドアセダンは4ライト」という自動車界の定石を律儀に守っていました。でも、グランクーペシリーズでは、あえて流麗なライン重視で、リアクォーターパネルにもウィンドウを追加した「6ライト」スタイルを採用しているのです。
2シリーズグランクーペも同様。サイドウィンドウはグラフィックスできれいな弧を描いています。印象としては、2シリーズのクロスオーバー、アクティブツアラーを思わせます。
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シリーズに共通するスタイリングコンセプトを作り、それをモデルごとにアレンジする。これ、自動車デザインの基本ルールですが、あまりにも違う車型で実現するのはむずかしい。今回BMWのデザイン部は、上手に4ドアクーペを作りだしたのですから、ひたすら感心です。
実際に乗った印象は、みごとの一言。ドライブフィールこそがこのクルマの最大の魅力です。スポーティさでいちばんのM235i xDriveグランクーペと、ディーゼルの220dグランクーペは、当然ながら、キャラクターが異なりますが、「みんなちがって、みんないい」と、金子みすゞなら書くかもしれません(書かないか)。
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4WDシステムは、低負荷のときはフロント100パーセントのトルク配分。路面や走行状況によって、トルクは電子制御で分配され、最大で前後で50対50まで変化されるとのことです。
パワフルで、最高出力が5000rpmで発生するだけあって、上の回転域まで回して楽しいキャラクターです。シュンシュンっとよく回り、エンジン回転が上がっていくとともに、力がもりもりっと出てくる。なんとも気持いいフィールが身上なのですね。
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それにはシャキッとした足まわりと、正確なステアリングが貢献しているはず。ワインディングロードでは、ステアリングホイールやアクセルペダルの微妙な入力にすかさず反応。スポーツカー的な操縦感覚が味わえるんです。
やっぱりこの4ドアクーペのスタイルだったら、このスポーティなドライブトレインしかないな、とひとりごちて、そのあと、まあものは試しと220dグランクーペに乗ってみました。ところが、これがなんと、目からウロコの気持よさ。
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足まわりは「あえて1シリーズより快適方向に仕上げた」とBMW本社でこのクルマのシャシー開発をしたエンジニアが言うように、しなやかです。高速では、いや、どんな道でも、路面の凹凸はていねいに吸収。かといって、乗員がぐらぐら揺れる場面も皆無。びしっとしているんです。
路面からの騒音も、エンジン音も、風切り音もみごとシャットアウトしている車内。上質感があって、居心地はばつぐん。電動車の夜明け前ともいえる今ですが、ICE(内燃機関)使っていいクルマを作るBMWの底力をたっぷり見せつけられました。
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今回、ユーラシア大陸最西端というロカ岬に、後学(なんの後学かはさておき……)のために立ち寄りました。そのとき、ちょっと狭めの駐車場からバックして出るのに、リバースアシスト、役だってくれました。この便利なシステムに慣れると、なしではいられなくなるかも。ヤバい先進技術です(ホメ言葉)。
インフォテイメントでは、ボイスコントロールで音楽ストリーミングの「スポティファイ」が使えるようになっていました。「プレイ」のあとにアルバム名やミュージシャン名を言うと、クラウドのアーカイブから楽曲をひっぱりだしてくれるのですよ。
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ハーマンカードンのスピーカーは中音域が得意なようで、ちょっと上品な音づくり。ベース音は抑えめで、クラブ系音楽より、民族音楽やジャズ、それにちょっと前のロックや管弦楽などがキモチよく響きます。オヤジさんに向いているってことですね。
コクピットのデザインは、基本的にBMWに共通した「ドライバーオリエンテッド」と呼ばれるコンセプトが採用されています。スイッチ類は、BMWに乗ったことがあるひとなら、すぐに操作できます。
シートの作りはよく、疲労知らずでドライブできました。後席も予想以上に広くて、おとな二人で快適に座っていられます。ただ、乗りこむときだけは、低めのドア開口部に頭をぶつけないよう、ここだけは要注意ですよ。
日本で発売されたのは、1498cc3気筒ガソリンエンジンの「218iグランクーペ」(369万円~)と、ここで紹介しました「M235i xDriveグランクーペ」(665万円)。218iグランクーペはまだ試乗できないので、なんとも言えないのですが、220dの印象からすると、かなり期待できそうです。
1.5リッターエンジンも、基本的にシャシーを共用する新型「118i」では、充分なパワーがありました。なので、出来のいい4ドアを探しているオヤジさんには、予算に合わせて、どちらのモデルを選んでも、満足いく買い物になるんじゃないかと、お伝えしておきたいと思った次第です。
全長x全幅x全高は4,540x1,800x1,430ミリ
M235i xDriveグランクーペは、225kW(306ps)@5,000rpm、450Nm@1,750-4,500rpm
M235i xDriveグランクーペはグリルがナゲットタイプとなりパーツもグロスブラック仕上げ
M235i xDriveグランクーペのウィンドウモールはグロスブラック仕上げ
左はM235i xDriveグランクーペ、右は220dグランクーペ
質感の高いM235i xDriveグランクーペのダッシュボード
2シリーズグランクーペはいわゆるサッシュレスドア採用
M235i xDriveグランクーペのホールド性のよいハイバックシート
後席もヘッドルーム、レッグルームともに大人に充分な広さ
ドライブモードセレクターは3つのモードが選べる
堂々としたリアビュー
全長x全幅x全高は4,540x1,800x1,430ミリ
M235i xDriveグランクーペは、225kW(306ps)@5,000rpm、450Nm@1,750-4,500rpm
M235i xDriveグランクーペはグリルがナゲットタイプとなりパーツもグロスブラック仕上げ
M235i xDriveグランクーペのウィンドウモールはグロスブラック仕上げ
左はM235i xDriveグランクーペ、右は220dグランクーペ
質感の高いM235i xDriveグランクーペのダッシュボード
2シリーズグランクーペはいわゆるサッシュレスドア採用
M235i xDriveグランクーペのホールド性のよいハイバックシート
後席もヘッドルーム、レッグルームともに大人に充分な広さ
ドライブモードセレクターは3つのモードが選べる
堂々としたリアビュー
● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト
慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。