2020.03.29
最新のテスラ・モデル3は、最良の出来だった!?
欧州のプレミアム自動車メーカーが続々と新モデルを投入し、いよいよBEV(バッテリー駆動の電動車)新時代の幕開け感が強まってきた。そんななか、唯一のピュアEVメイカー テスラは最もコンパクトなモデル3を投入。その出来やいかに!?
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取材・文/小川フミオ
ベスト・テスラと呼びたくなる仕上がり

BEV(バッテリー駆動の電動車)は、BMW iシリーズを先駆けに、日産リーフ、フォルクスワーゲンe-Golf、ジャガーI-PACE、メルセデス・ベンツEQCときて、アウディe-tronやプジョーe-208などがスタンバってます。
そしてEVの専業メイカーとして独自の存在感を放つのが、テスラです。その名は(クルマはよく知らなくても)女のコにも知られるほど。アップルのような先進的でオシャレなイメージがあるので、乗っているだけで最先端な人と思われそうなのがテスラという名前のちょっとした魅力なんですね。

2019年秋から日本でのデリバリーが始まったモデル3は、「reasonably affordable(手頃で買いやすい」と、共同創業者兼CEOのイーロン・マスク氏が発売前から盛んに宣伝していたことでも知られてます。
スタイルはファストバック風セダンです。実は、いまテスラでデザインディレクションを担当しているのはもと米国マツダのデザイナー。だからなのか、クリーンなラインと、ふくよかな面構成によるボディが眼をひくではありませんか。

なにより感心するのは、走りのよさ。今回試乗したのは、トップモデルの「パフォーマンス」で、もっともパワフルなバッテリーとインバーター、前後モーター搭載のAWDです。
テスラではバッテリー容量など数値は非公開。静止から時速100キロまでの加速は3.4秒と、これだけは公開されています。これがほんとなら(ほんとでしょうが)ホンダNSXの3.0秒には負けますが、ポルシェ911カレラSの3.7秒に勝ります。

エンジンと違ってトルクがいきなりマックスに達するモーターの特性を活かしたBEVの面目躍如でしょう。そういえばマスク氏は「遅いクルマは作らない」と豪語しているそうです。セダンでこんなに速くでどうすんの、というぐらい速い。
助手席に女の子をのせたとき、ちょっとだけ、この加速感を味わってもらうのもアリかもしれません。BEVは草食系!?という間違った(笑)思い込みも一瞬で払拭してもらえるでしょう。
バッテリーを自社生産する先進的なビジネススキーム

ただし航続距離は、パワフルな「パフォーマンス」の530キロに対して「ロングレンジAWD」は560キロ。少し遠くまで走れます。といってもこれは理想値なので、走り方によってだいぶ変わってきます。
理論的には東京から大阪までノンストップで行けますが、実際に安心して走れるのはもっと手前でしょう。ユーザーは走り方に慣れる必要があるんですね。

乗り心地もいいんです。路面に吸いつくように走り、快適です。
モデル3のコクピットでびっくりするのは、メーターが一切ないこと。15インチサイズのタブレット型のモニターがダッシュボードに備え付けられていて、これが計器盤とインフォテイメント(ナビゲーションとかオーディオ)のコントローラーを兼ねています。

先行車追従型のアダプティブクルーズコントロールと、操舵をクルマにまかせる「オートパイロット」機能もモデル3のセリングポイント。走行中にシフトレバーを下方向に2回クリックすることでオンになり、ステアリングホイールの操舵感がいきなり変わります。
テスラ車の操舵は意外にクイックなので、慣れていないとやや緊張します。大丈夫と自信が持てたら、女のコにも体験させてあげるといいかも。

理由は、皮革は野蛮だし、牛の飼育が増えるとげっぷによりCO2が増加するという、環境保護的観点から人工皮革の採用に踏み切ったそうです。ちなみに色はブラックあるいはホワイトが選べます。昨今は高級車を中心に、リアルレザー離れが起きているので、エコロジカルなありかたは、おおいに評価してあげようではありませんか。
テスラは、単なる自動車好きが創立したメーカーというより、新しい時代のビジネススキームをうち立てることを目指してきました。そのため、BEVの開発は、バッテリー工場とセットになっています。

バッテリーとインバーターを、車両とともに自社生産することこそ、BEVで利益を上げていくのにもっとも必要なこと、とテスラはわかっているのです。他のメーカーもいまはバッテリー工場立ち上げの計画を発表して、追従しています。テスラは早かった。

全長×全幅×全高=4694×1849×1443mm
日本の市街地でも手頃なサイズ
日本には右ハンドルが用意される
人工皮革張りのシートは簡単には見破れない
ほとんどの操作はダッシュボード中央のモニターで行う
NETFLIXも視聴可能(画像はUS仕様のもの)
スマートフォンがキーがわりで、バレーパーキング用にはカード型のキーがある
オートパイロット用のカメラがボディ周囲をつねにウォッチ
フロントに開口部らしい開口部がない
東京にも設置されはじめた超高速充電器「スーパーチャージャー」を使うと30分で約270キロ走行ぶんの充電ができるという
大きなキャビンを持つ独特のプロポーションがモデル3の特徴
全長×全幅×全高=4694×1849×1443mm
日本の市街地でも手頃なサイズ
日本には右ハンドルが用意される
人工皮革張りのシートは簡単には見破れない
ほとんどの操作はダッシュボード中央のモニターで行う
NETFLIXも視聴可能(画像はUS仕様のもの)
スマートフォンがキーがわりで、バレーパーキング用にはカード型のキーがある
オートパイロット用のカメラがボディ周囲をつねにウォッチ
フロントに開口部らしい開口部がない
東京にも設置されはじめた超高速充電器「スーパーチャージャー」を使うと30分で約270キロ走行ぶんの充電ができるという
大きなキャビンを持つ独特のプロポーションがモデル3の特徴
● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト
慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。