2023.01.29
◆ Special Talk on “2022-2023 Car of the Year” 【後編】
モータージャーナリスト・五味ちゃんと「日本カー・オブ・ザ・イヤー」実行委員・LEON近藤が2023年のクルマ界を語る!
日産 サクラ・三菱eKクロスEVという共同開発の軽自動車がイヤーカーになった「2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー」。でも、ちょっと待った! ほかにもっとモテるクルマはなかったのか!? 当代きっての人気モータージャーナリストの五味康隆さんと、LEONのクルマ担当・近藤が徹底討論──。その後編をお届けします。
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文・語り/五味康隆 編集・語り/近藤高史(LEON)
「コレは時代を変えるクルマです!」
近藤 11台、すべてのモデルに乗れてはいないのですが、実は意外と僕もサクラ&eKクロスEVなんですよ(笑)! 実行委員になって3年、国産車や軽自動車も積極的に乗らせてもらうようにしているのですが、試乗会で乗った時に「なんていいクルマなんだ!」って思いました。
近藤 ストップ&ゴーの多い都内で乗らせてもらったのですが、信号が青になってスタートした時に、隣の輸入車もすんなり抜いちゃうじゃん……って。車重も乗り味も軽いし、ダッシュ力あるし。
五味 電気自動車だから、そのうえ静か。閑静な住宅街とか、大人なリゾートなどで電気自動車に乗ってる時に、必要以上にうるさいクルマがくると残念に思っちゃいます(笑)。食事に行った時とかも、レストランで残念な人ほど大声で喋ってるでしょ? 静かにできる人は、空気を読めたり気を遣える。
五味 それがクルマにも少し感じるんです。ちょっと自分の感覚が変わってきた気がするんですよね。近藤さんも僕も最新モデルに乗らせてもらっているから、自然と最先端にいるわけです。これからクルマの買い替えサイクル的に考えて、2~3年したらそんな風潮になるはず。大きなエンジン音がするなんてナンセンス……、といった時代がくると僕は思っていて、そういうことも見え隠れする2022年だったと思います。
受賞したのは電気自動車ばかり!
五味 これに発電エンジンでモーター走行のエクストレイルも加えると、ほぼ半数が電気自動車ということになります。これにシビックe:HEVもありますし……。
近藤 ハイブリッドまで入れたらもうほとんどってくらい、ピュアエンジンは少数ですよね。フェアレディZやシビックタイプRくらい?
五味 それくらい電気が時代を変え出しているかな、と。これがさらに突き進んでいくと思います。2022年のイヤーカーはサクラ&eKクロスEV、インポート部門はアイオニック5。デザイン・カー・オブ・ザ・イヤーはiX、テクノロジーがエクストレイルと、どれも電動モデルです。パフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤーだけはシビックタイプRですが、e:HEVも含まれるのでこちらも電動モデルです。K CARオブ・ザ・イヤーはサクラ&eKクロスEVで、どれも電気です。電気ってモテるんですかね? LEON的に電気自動車ってどうなんでしょう?
近藤 モテると思います! 女性から聞く話では、大きなエンジン音を立てて住宅街にお迎えに来られるのは恥ずかしいってみんな言いますね。
五味 たしかに恥ずかしいですよね。大きいエンジン音は目立ちます。それが派手なボディカラーだったりすると……。
近藤 ただ、男のロマンでもあるので一概に否定はできないし、僕らもそういうクルマに乗ってたり(笑)。
五味 だから男のロマンは"男の"であって、それに女性を巻き込もうとしたらモテない!
近藤 そうそう。エンジン音が凄いから乗りたいでしょ、ではモテない。ひと昔前はそれでも良かったかもしれないけれど、LEONとしてもそれだけでモテるとは言えないです。
五味 これから先は二極化していくから、モテる男の条件として、男のロマンを満たすクルマを1台。欲望を満たすというか、自分を磨くスーパーカーみたいなモデルですね。そして知的センス溢れるような静かで上質なクルマをもう1台。僕も今、NSXとMIRAIとか、そういう所有スタイルですね。
五味 それをちゃんと使いこなせる、知的な使い方ができれば大丈夫。
近藤 2022年に登場した中で、ツートップでモテるクルマってこの2台かなと思ってます。
五味 たしかに、そうかもしれない。僕のNSXも同様の走りはできますが、アルトゥーラや296GTBはプラグインハイブリッドなので130km/hくらいまで電動ドライブができます。距離でいうと20kmくらい走れるから、本当にいいですよね。
近藤 男のロマンと現実的な問題(車庫や金銭的事情など)まで考えていくと、この2台は理にかなっているなあと。女性を迎えに行くときは静かに走れて、高速で踏み込めば刺激的にも走れる。
五味 それってオシャレ! 今、そういったクルマが出てきているんだっていう、これまでハイブリッドはエコカーと思ってた人は、電気の力がいろんな方向に使えるようになったことを知ってほしいですね。デザイン・カー・オブ・ザ・イヤーだって電気自動車だからこそできたデザインだし、パフォーマンスだって電気の力。そういうのも考えると、モテるクルマも電気の力が価値観を変えていくかもしれませんね。
近藤 本当にそう思います。30分の充電時間も、休憩を兼ねてカフェでお茶をするとかできるのに対し、今までのガソリン車だったらガソリンスタンドで缶コーヒー買って終わりだったり。休憩を兼ねた30分ってとても有意義だなあと。電気がそんなゆとりというか、時間を作ってくれる。今後、何か変わってくる、変わってきているはず、ですね。
五味 2023年は本当に楽しみですね。
早くも2023-2024のCOTYが楽しみ!
五味 あとBMW i7もすごい! 先日試乗しましたが驚きました。
近藤 すでにこれだけ注目の輸入車があって、もちろん日本車もきっと面白いモデルが出てくるはずなので期待です。
五味 新型アルファードも大人気になるのは確実ですね!
近藤 2023年も日本カー・オブ・ザ・イヤーは楽しみです。
五味 日本カー・オブ・ザ・イヤーのプレゼンスを上げていきたいですよね!
近藤 実は今年の最終選考会の司会を務めたおぎやはぎさんの出演交渉をしたのは僕だったり(笑)。賛否両論ありましたが、いろいろ変わってきているのは確かです。カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれるのは凄いことなんだという昔の栄光を取り戻すことができるとうれしいですよね。
五味 僕も頑張って盛り上げていこうと思います。僕は日産サクラ・三菱eKクロスEVに10点を入れましたが、来年はどんなクルマが出てくるか楽しみ。
近藤 あ、ちなみにサクラとeKクロスEVってどう違うんですか?
五味 インテリアの上質さが違いますね。eKクロスEVは車名のとおりeKクロスをベースにEV化したモデルで、インテリアは基本eKクロスと同じです。ただサクラはデイズをベースにはしていますが、新しいデザインを与えているのが特徴です。
近藤 なるほど!
五味 今、地方ではガソリンスタンドが減っていて、給油のためにガソリンを使ってスタンドまで行く、なんていう矛盾が起きています。それだったら自宅で満タンにできて、生活の足として使いやすいEVは最適です。これまで電気自動車は大きいバッテリーを積んで航続距離が長くないと普及しないと言われてきましたが、実は距離の長さは関係なくて、生活に密着できればシティコミューターとしての可能性があったんです。
サクラとeKクロスEVはそこにピタリとはまるモデルというわけです。日常の足としてならeKクロスEVを選べばいいし、シティコミューターは内装がちょっとチープ……、と思っている方ならサクラを選ぶといいと思います。
五味 まさに。極端に言えば普段メルセデスに乗っていてもサクラの質感なら納得できる。そんな仕上がりを目指して作られています。EV普及にはこういった層を取り込まなきゃいけなかったわけです。なのでeKとは目指してるところが違いますね。
近藤 サクラやeKクロスEVでLEON仕様みたいな別注モデルを作りたいなぁ。内装や外装をLEON風に仕立てて。そう思わせるだけのクルマに仕上がっていました。LEONではあまり軽自動車は取り上げないけど、そんななかでも過去にコペン、S660、ジムニーは誌面で取り上げています。これら特徴的なモデルにも並ぶくらい、サクラやeKクロスEVには可能性を感じています。
五味 毎年、大賞を取ったクルマのLEON別注モデルを作るなんて面白そう!
近藤 じゃあ、日産さんに話を進めておいてください(笑)。
五味 何にせよ、日本カー・オブ・ザ・イヤーを盛り上げて、LEONも僕も、みんなウィンウィンになれるよう楽しくいきましょう!
■ 五味康隆(Yasutaka Gomi)
そのルックスと耳に残る声でYouTubeチャンネル「E-CarLife with 五味やすたか」が大人気。現在の愛車ホンダNSXタイプS、トヨタ ミライなど。
■ 近藤高史(Takafumi Kondo)
特集、連載、タイアップとLEONでクルマを担当して10年以上のキャリアに。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員3期目は執行部も経験。現在の愛車はポルシェ718ケイマン。