感電しないようレクチャーを受けてから同乗
この日、幸運にも助手席に同乗する機会が与えられたのだが、ヘルメット、レーシングスーツなどをフル装備し万一、マシンにトラブルが発生した場合には、感電しないようにと助手席からジャンプアウトするレクチャーを受けてから、恐る恐る車両に乗り込んだ。
モーターやインバーターが盛大に音を放ち加減速に連動するので、エンジン音がないことへの違和感はそれほどでもない。それよりも前後にモーターを搭載する4WDの電気自動車ということもあって、コーナーの立ち上がりでもラグタイムなく瞬時に加速し、直線の少ないこのコースでは常に高Gにさらされる。想像以上に速い、速すぎる……。
その代表格が911カレラのレーシングバージョン(通称カップカー)で競われる“世界最速のワンメインクレース”、ポルシェ「カレラカップ」。30年以上の歴史があり、現在世界10カ国以上で開催されている。日本でも2001年にカレラカップジャパン(PCCJ)がスタートし、今年で23シーズン目を数える人気ぶりだ。
「GT4 eパフォーマンス」は、将来的にこの911GT3カレラカップの代替になりうるのか。ポルシェの開発チームはそのリサーチのために世界ツアーを敢行しているのだという。ワークショップでは、ポルシェのカスタマーレーシング部門のマネジャーであるオリバーさんからプレゼンテーションを受けた。
「ストリートカーと情報をシェアしながら開発を進めていくことになります。それによって、開発費、スペアパーツ、ランニングコストなどをさげていく。そしてレーシングプラットフォームをつくっていかなければなりません。どのサーキットに、どのような充電設備がいくつ必要なのかなど、ひとつひとつ課題を挙げてクリアしていく」
2030年までに8割以上を電気自動車へ
「GT4 eパフォーマンス」は、2022年から24年までをツアーフェーズとして、世界お披露目ツアーを行う。そして2025年には、次期718シリーズと並行して開発される次期型プロトタイプレーシングカーの開発に着手。その後、いつとは明言されなかったが、新たなエレクトリックカスタマーレーシングシリーズを立ち上げるという。
最終的に判断するのは市場であり顧客で、そのための選択肢を用意するのだと話していた。電動化しようとも、レースにかける思いは変わらないという、ポルシェの本気をまざまざと感じたのだった。