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傑作デザインを復刻することの難しさ
でも小難しく、インスパイアなんて言わずとも、過去の傑作デザインをそっくりそのまま現代に蘇らせればいいのではないかと思う人もいるかもしれない。しかし、そう単純にはいかないからこそ、クルマのデザインは実に面白いのだ。
現代のクルマは、法規制でがんじがらめ。デザインは、すべからく衝突安全性という課題に直面する。例えばスチールメッキのパンバーであれば質感も高く、いかにもクラシックでリッチな雰囲気を演出できる。でも、万一の事故の際に人身傷害をいかに軽減するかが大きな課題となっている現在において、そんな屈強な素材を使うことはできない。ゆえに衝撃を吸収するため、バンパーには自ずと樹脂製パーツが使われることになる。
それ以外でも、ヘッドライトの位置やボンネットの高さにいたるまで、数多の制限がある。かつてジャガー車はボンネットの先端にブランドを象徴する「リーピング・キャット」と呼ばれるマスコットを掲げていたが、歩行者保護の観点から取り除かれた。メルセデス・ベンツも同様で「スリーポインテッド・スター」のオブジェは姿を消し、一部最新のSクラスなどは可倒式にすることで対応している。
以前、BMWのあるカーデザイナーからこんな話を聞いた。
「最新の3シリーズも、メルセデスのCクラスも、安全要件をはじめ、このクラスに求められる室内空間を確保し、燃費や高速性能のための空気抵抗値を達成しと、さまざまな要件を加味すれば、実はそのディメンションにはほとんど差がありません。だから3シリーズのような定番で競争の激しいセグメントのモデルほど、デザインは重要な意味をもつことになる。そして、BMWであることをもっとも顕著に表している要素のひとつが、キドニー・グリルになるのです」
ちなみに“キドニー”は英語で腎臓の意味だ。1933年にBMWとして初のオリジナル4輪車「303」をデビューさせる際に、他車との差別化を図るためにグリルを2分割したことが始まりだった。以来、いくつかの例外をのぞいて歴代のBMWモデルにはすべてキドニー・グリルが備わっている。そして最新のモデルではデザイナーの言うとおり、BMWであることを声高に主張するかのようにそのグリルは巨大化している。
時代が変わっても変えてはいけないもの
そこでミニやフィアットは、ベースモデル以外にワゴンやSUVタイプなどの派生車をつくることで、それらをうまく賄っている。一方でベースとカブリオレしかなかったVWビートルは販売台数が伸びず2018年末で生産終了となってしまった。リバイバルモデルといえども、実用性や最新の安全性も求められる時代になってきたのだ。
◆ フィアット 500
誰もが"チンク"とわかる普遍のデザイン
【Old】 フィアット ヌオーヴァ チンクエチェント
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【New】 フィアット チンクエチェント
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[Spec]
全長×全幅×全高:3630×1685×1515㎜
最高出力:87kW(118ps)
価格:日本発売未定/フィアット(チャオ フィアット)
ジープは縦長の7スロットグリルと台形のホイールアーチを歴代モデルに受け継ぎ、Gクラスではデザインはもとより、まるで金庫の扉のようなドアの開閉音を昨年登場した新型で再現している。新型ディフェンダーはラダーフレーム構造をやめ、モノコックボディ&四輪独立懸架サスペンションと中身を一新したにもかかわらず、水平基調のルーフラインやショルダーライン、弧を描くようなホイールアーチなどを踏襲することで、モダンでありながらもディフェンダーであると、ひと目でわかるデザインを実現した。
◆ ランドローバー ディフェンダー
デザインそのものが先代へのオマージュ
【Old】 ランドローバー ディフェンダー
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1948年に生産が始まったランドローバーシリーズをルーツとし1983年のモデルチェンジでランドローバー90/110と改称。90年代に入り上級モデルのレンジローバーやディスカバリーとの差別化をより明確にするため、ディフェンダーの名が付けられた。
【New】 ディフェンダー 110 ファーストエディション
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2016年に生産終了した本格オフローダー、ディフェンダーの復刻モデル。ボディ骨格をラダーフレームからモノコックへとモダンに刷新しショートホイールベースの「90」とロングホイールベースの「110」がある。
[Spec]
全長×全幅×全高:5018×2008×1967㎜
エンジン:2.0リッター直列4気筒
価格:820万円(税込)〜/ランドローバー(ランドローバーコール)
※掲載商品はすべて税抜き価格です
■ お問い合わせ
チャオ フィアット 0120-404-053
ランドローバーコール 0120-18-5568