やっぱりひと味違う、おフランスなステーションワゴン

外出ができるようになったら、アレしたい、コレしたい。と、オヤジさんたち、夢をふくらませているのではないでしょうか。なにはともあれ、思うぞんぶんゴルフですかね、やっぱり。
もしそんなタイミングで、なにかいいニューモデルないかなと探すなら、けっこうおもしろいクルマ、あります。日本車やドイツ車や英国車(それにイタリアのスポーツカー)になじみのあるオヤジさんには意外な選択かもしれませんが、フランスのプジョーが手がけている「508SW」です。

一方で、ステーションワゴンの便利さも、オヤジさんならよーくご存知のはず。最近は少なくなってきたとはいえ、街の回転式駐車場に難なく入庫できるし、乗り心地の快適さはセダンとほぼ同等ですから。
508SWは2019年に日本発売された、最新のプジョー車であります。サイズは全長4790ミリあって、ホイールベースも2800ミリ。けっこう立派な大きさで、ファミリーで乗るのもよし、あるいは後席を倒せば、サーフボードだってスキーだって入りますから、彼女と楽しい週末旅行も楽しめちゃうでしょう。

ディーゼルの「GT BlueHDi」は操縦してみると、なるほど人気が高いモデルであることがわかります。エンジンは2000rpmで400Nmというかなり太いトルクを出すので、アクセルペダルの踏みこみ量が少なくても加速が力強いんです。かつ、アクセルペダルをあまり踏まないので燃料消費量も比較的少ない。ディーゼルの利点ですね。
室内で聞くエンジン音がやや大きめなのは、ドイツやスウェーデンや日本の最新のディーゼル車に対するデメリットですが、パワフルかつしっかりした操縦性との差し引きでみると、ぜんぜん許容範囲から外れていないといってもいいのでは。

スタイリッシュなシューティングブレイクスタイル
カーブでは曲率の大きさにかかわらず、つまり小さいカーブではすっとノーズが内側を向き、ボディも(昔のプジョー車のようには)ロールしない。大きなカーブを高速で抜けるときの足のふんばりにも、まったく不安なし。
プジョーのステーションワゴンの歴史は長く、1950年に「203」にファミリアールと呼ばれる6人乗りステーションワゴンが登場しています。主力セダンにかならずステーションワゴンを設定するポリシーは、その後、いまに至るまで続いているんですね。

このボディスタイルをプジョーでは「シューティングブレイクスタイル」と名づけてます。二人乗りクーペを改造して荷室をつけたスタイルのことで、名前のとおり、狩りに行くために欧州(とくに英国)の富裕層が考えたものなんです。
60年代だと、アストンマーティンを買って、専用のボディ架装会社に持ちこみ、リア部分を改造して、ちょっとコンパクトな荷室を付けてもらったのものをシューティングブレイクと呼んでいました。狩りの道具を積み込んで高速をぶっとばしていく、という趣向であります。

メルセデス・ベンツの先代CLSにも設定されていたし、フェラーリGTC4ルッソ(フェラーリFF)だって、シューティングブレイクの系譜に連なるモデルです。ルーフが長いスタイルって、カッコいいのですよ。
508SWは、テールゲートを備えたクーペともいえるスタイルを強調しています。でも荷室は通常でも530リッターも。メルセデス・ベンツCクラスステーションワゴンでも470リッターなので、スタイルだけではないのですよ。クルマには実用が大事というフランスのクルマづくりの面目躍如とホメてあげましょう。

外観上の個性は、シルエットにとどまっていません。とりわけフロントマスクは、一目見てすぐ”新しい508だ”とわかります。それは、LEDを使ったシグネチャーランプが設けられているせい。プジョーのシンボルはライオンです。そのライオンが大きなキバを見せたように、縦方向にLEDライトが埋め込まれ、独特のアグレッシブな雰囲気をかもしだしているんです。
インテリアも、スポーティさがしっかりあるんです。上と下を直線的にした独特の造型の小径ステアリングホイールはレースカーを思わせます。ドライビングポジションは高めのセンターコンソールなどのおかげで囲まれ感が強い。パーソナルな雰囲気を大事にしているクルマなんですね。
ほどよいサイズ感で使い勝手良し!

全長4790ミリ、全幅1860ミリ、全高1420ミリのボディは、やや幅が広いと思う人もいるかと思いますが、東京をはじめ日本での市街地の使い勝手としては悪くないです。

ともあれ、広々とした後席に家族や友人を乗せるのもいいし、いっぽうで2人でというのもいい。どちらも、508SWにまかせとけば大丈夫。要は許容範囲が広く、使い勝手がいい、ということでしょう。ステーションワゴンにつきまといがちな、日常的な雰囲気がちょっと希薄なのも、人によっては評価ポイントかと。

ライバルはボルボの「V60」シリーズがまず思いつきます。全長4760ミリでホイールベース2870ミリのステーションワゴンです。ただしディーゼルの設定はなく、ガソリン(514万円~)とハイブリッド(674万円~)のみの設定です。
ボルボのこのステーションワゴンは(標準の金属サスペンションのままだと)やや硬めの足まわり。荷室にたっぷり荷物を積んで走るってことを想定しているんでしょう。雰囲気でいうと、プジョー508SWのほうがオシャレです。欧州車、ドイツ車でなくても、けっこう味があるんです。
シューティングブレークスタイル
LEDデイタイムランニングライトが特徴的
ルーフ全長をすこし短めにしてクーペ感をだしている
緩やかな下降線を描くルーフライン
プジョーの代名詞ともなったi-Cockpit
フロントシートにはシートヒーターや、電動調整、ポジショニングメモリー(運転席のみ)機能やマルチポイントランバーサポートを装備
GT BlueHDiにはアルカンタラとレザーのコンビネーションによるシートが標準装備
面の作りは緊張感をかんじさせる
ヘッドランプをうまく使って個性を演出するのが昨今のプジョー流
荷室の存在感をやや消したのが特徴的なプロファイル
荷室は広い
こうやって下から見上げる角度からアグレッシブな雰囲気だ
横基調のリアコンビネーションランプが印象にのこる
右はセダン
シューティングブレークスタイル
LEDデイタイムランニングライトが特徴的
ルーフ全長をすこし短めにしてクーペ感をだしている
緩やかな下降線を描くルーフライン
プジョーの代名詞ともなったi-Cockpit
フロントシートにはシートヒーターや、電動調整、ポジショニングメモリー(運転席のみ)機能やマルチポイントランバーサポートを装備
GT BlueHDiにはアルカンタラとレザーのコンビネーションによるシートが標準装備
面の作りは緊張感をかんじさせる
ヘッドランプをうまく使って個性を演出するのが昨今のプジョー流
荷室の存在感をやや消したのが特徴的なプロファイル
荷室は広い
こうやって下から見上げる角度からアグレッシブな雰囲気だ
横基調のリアコンビネーションランプが印象にのこる
右はセダン
● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト
慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。