2009年に発表された先代のゴーストは「起業家のためのビジネスツール」(ロールス・ロイス・モーターカーズのトルステン・ミュラー=エトヴェシュ最高経営責任者)とされていました。新型もその点は同じだとか。
「ゴーストのユーザーは、週末は自分でステアリングホイールを握ることを好む人たちです。新しいゴーストはアルミニウムのスペースフレームを使い、かつ四輪駆動システムと四輪操舵システムで、オーナーの要求に応えます」(ロールス・ロイス・モーター・カーズCEO)
注目したい点は、ミニマリズム(装飾などを極力省いた最小限主義といいましょうか)とメーカー自身が謳う、シンプルな見た目。余計なモールもないし、ことさらキャラクターラインがたくさん入っているわけでもありません。工作精度の高い、歪みのない美しい面が際立つボディは、ペイントがハンパないんです。日本に持ち込まれたモデルは、一見、光りの下ではホワイトなんですが、よく見るとグレー。そんな劇的な効果をあげる塗料で仕上げられていました。
アルミニウムを使って軽量に仕上げるボディは、4人の熟練工が手作業で溶接を行います。結果として「1枚の帆布のようになめらかなフォルム」(ロールス・ロイス・ジャパンPR)が実現。この継ぎ目が目立たない美しいボディは『シルバードーン』(1949年-59年)や、その後継車である『シルバークラウド』(55年-65年)といった往年の名車との繋がりを感じさせると、ロールス・ロイスでは説明しています。
なかでもシルバークラウドの美しいボディは、ロールス・ロイスのあり方を変えたもの。それまでユーザーは、エンジンを載せたシャシーをロールス・ロイスから購入して、そのあと、自分が気に入っている外部のコーチビルダーにボディ製作を依頼するのが定石でした。ところがシルバークラウドでは、この“お仕着せ”のボディでも十分満足いくものだったというんです。
563馬力の最高出力と850Nmの最大トルクを発生する6.75リッター V型12気筒ツインターボエンジンを搭載。全輪駆動システムと、4輪操舵システムを組み合わせているので、ほとんど無敵でしょう。静止から時速100キロまでの加速はわずか4.8秒と、恐ろしいほどの性能ぶりです。
ホイールベースは3295㎜(『エクステンデッド』は3465㎜)もありますが、4輪操舵機構の恩恵はかなり大。空飛ぶじゅうたんを標榜する乗り心地を実現するため、新型ゴーストには独自の「プラナー」なるサスペンションシステムを搭載。
新しい足まわりは、サスペンションシステムを構成するダブルウィッシュボーン方式のアッパーアームのほうにダンパーを組み込んだのが特徴です。
加えて、サスペンションシステムは、ステレオカメラと連動。カメラが前方の路面の状況を読み取って瞬時にサスペンションの硬さとダンピングを調節。これに、GPSのマップ情報をもとに変速タイミングまでコントロールします。
いざクルマに乗り込むと、LEDが夜空の星のようにきらめく「スターライトヘッドライナー」が目にとびこんできます。加えて、車内の空気から微細な粒子やバクテリアを2分以内で除去する「マイクロ環境浄化システム」と、18チャンネルのハイファイシステムが完備。きっと、一度乗ったら降りたくなくなるでしょう。
価格は『ゴースト』が3590万円から、『ゴースト・エクステンデッド』が4200万円から。納車は2021年1月からだそうです。
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