オトコゴコロくすぐるクロカン4駆

2020年4月より日本での受注が開始された、新型ランドローバー・ディフェンダー。英国にもジープのような本格的4駆が欲しいと1947年にローバーの技術者が開発したのが最初です。無骨ともいえるスタイルが、それゆえ、男心をくすぐるクルマです。
オイルびきのフィールドコートであるバブアーを着て乗るのがカッコいい。それこそライフスタイルカーの元祖ともいえるディフェンダーは、新しくなっても、やっぱりいい感じの無骨が残されているのですね。

そこでヘッドランプも、丸形が基調。さらに、昔のモデルだとその隣に小さなディップライト(ポジションライト)とウィンカーを並べてました。それを彷彿させる2個のLEDライト(今回は矩形ですけどね)が並べられています。
アルパインライトなるルーフに設けられたガラス窓も継承。スペアタイヤは当時のように車内に置くわけにはいかないものの、テールゲートのところに背負ってます。古臭くみせることができるオプションは他にもあって、レトロモダンともいうべき、個性的な仕上がりです。

このクルマ、スコットランドあたりにエステートを持っているオカネモチも重要なターゲットでした。彼らを安全に目的地まで届けなくてはなりませんから、堅牢に作られています。同時に軽量化も重要と、ボディはアルミニウム製でした。軽量素材には、航空機産業が盛んだった英国の伝統が生きています。
パフォーマンスで注目しなくてはならないのは、ひとつは悪路走破性。岩がゴロゴロしている丘や渓谷を安心して走れるために、これまでも、ストロークが長く接地性を確保したサスペンションや、駆動力を途切れさせないためのディファレンシャルギアなど、必要なものがしっかり備わっていました。

軽量アルミニウムのモノコック構造で、ランドローバー史上最も頑丈と謳われるボディ構造なのですよ。従来はクロカン4駆の面目躍如たるラダーフレーム構造だったものの、ねじり剛性は3倍にまで上がってます。
路面状況に応じて、サスペンション、トランスミッション、トラクションなどの車両設定を自動制御する「テレインレスポンス2」も強力な武器です。6種類のモード(オンロード、草/砂利/雪、泥/轍、砂地、岩場、渡河走行)が設定されているのも心強いではありませんか。

オフロードでの走破性も高まっています。最大渡河水深は900ミリ。この時は、3Dサラウンドカメラとウェイドセンシングが水深を測ってくれるので、コース選びにも助かります。要は、守ってくれるクルマなんだなあ、と多大な安心感をおぼえるではありませんか。
オンロードでの操縦性もなかなかなのです。日本で売られるのは、221kW(300ps)の2リッター4気筒ガソリンエンジン搭載の「P300」なる高出力モデルであります。

エンジンは3000rpmからモリモリと力を出します。3000rpmを超えると実用的なトルクが出るので、意外かもしれませんが、エンジン回転をすこし高めにキープして走るスタイルが向いているんですよ。
公道上でのハンドリングは、期待以上に乗用車的。ボディがゆっくりとゆさゆさと揺れることもなく、しっかりしたステアリングフィールで走っていられるのです。110に標準装備される電子制御サスペンションの面目躍如なのですね。

下りだって、ブレーキのフィールは確実だし、急勾配のところは、ヒルデセントコントロールといって、車両が自動的にブレーキをかけて降りるシステムを採用しているので、ドライバーはステアリングホイール操作に集中していられます。
普通であれば走っていて恐怖を感じるような、かなり過酷なオフロードコースでも十分楽しめます。そんな悪路を走ってみれば、自分のクルマへの信頼度が上がるので、これはお勧めですよ。

ファンシーなウッドパネルでなく、かわりにアルミニウムやウレタンが、メーター類や操作系を守っているんですね。どこかスポーツサイクルとも通じる感覚。スポーツギアが好きなオヤジさんなら、たまらないデザインでしょう。
機能主義的なデザインのダッシュボードには、「Pivi Pro」と名付けられたインフォテイメントシステムを使える大きな液晶モニターが組み込まれています。繊細な温度コントロールができるエアコン、便利なナビゲーション、高品位のハイファイ……これらはかつての無骨なディフェンダーには無縁だったものです。

なにより、ゆったり動くサスペンションのおかげで、長いホイールベースとともに、長距離用のグランドツアラーとしてすぐれているのが、従来とまったく異なる点といえましょう。
私はかつて、ロンドン郊外からえんえん、スコットランドのエディンバラまでディフェンダーで走っていったことがありました。400マイルの道のりはけっこう過酷で、さらにスコットランドの丘を登ったり降りたりした時は、振動で身体がバラバラになるかと思ったほどです。夜、高原の風に吹かれながらのハイランドウイスキーが身体に浸みました。
でも新型なら、作りのいいシートと、ダイレクトな感覚のステアリングと、反応がいいシャシーと、直進安定性の良さ、すべてを備えているので、どこまででも走って行けそうです。

先代のイメージを継承しつつ、乗り心地や使い勝手をモダナイズした新型ディフェンダーは、改めてモテるクルマだと確信しましたよ。
▲ 110の価格は589万円から。おすすめは「S」から上のグレードです。
▲ 写真は「アドベンチャーパック」装着車
▲ 操作の多くを液晶パネルで行うためすっきりしていて、いいかんじの機能主義的デザイン
▲ シート表皮のカラーは豊富で、かつスライド機能もあって便利
▲ ヘッドランプの形状と大きく張り出したフェンダーがアグレッシブな雰囲気
▲ 110はグレードによってタイヤが18インチ、19インチ、20インチ
▲ このカッコよさにはやられちゃいます
▲ シートの色を選ぶのも大事なこだわりを見せられる部分
▲ ちゃんと左側通行用の右ヒンジとなっているのが嬉しいテールゲート
▲ ステアリングホイールだって専用デザインなんだから凝ってます
▲ アイボリー系になるとだいぶ快適志向という印象が強くなります
▲ オプションのエクステリアサイドマウントギアキャリアにはウェットスーツなどを入れとくとよいようです
▲ Pivi Proはインフォテイメントシステム
▲ 往年のイメージを最新のテクノロジーで表現しているリアのコンビネーションランプの造形感覚はイケてます
▲ 110はエアサス標準装備で、オンロードでも楽しめます
▲ 舗装されていない路面でも絶大な安心感
▲ 110の価格は589万円から。おすすめは「S」から上のグレードです。
▲ 写真は「アドベンチャーパック」装着車
▲ 操作の多くを液晶パネルで行うためすっきりしていて、いいかんじの機能主義的デザイン
▲ シート表皮のカラーは豊富で、かつスライド機能もあって便利
▲ ヘッドランプの形状と大きく張り出したフェンダーがアグレッシブな雰囲気
▲ 110はグレードによってタイヤが18インチ、19インチ、20インチ
▲ このカッコよさにはやられちゃいます
▲ シートの色を選ぶのも大事なこだわりを見せられる部分
▲ ちゃんと左側通行用の右ヒンジとなっているのが嬉しいテールゲート
▲ ステアリングホイールだって専用デザインなんだから凝ってます
▲ アイボリー系になるとだいぶ快適志向という印象が強くなります
▲ オプションのエクステリアサイドマウントギアキャリアにはウェットスーツなどを入れとくとよいようです
▲ Pivi Proはインフォテイメントシステム
▲ 往年のイメージを最新のテクノロジーで表現しているリアのコンビネーションランプの造形感覚はイケてます
▲ 110はエアサス標準装備で、オンロードでも楽しめます
▲ 舗装されていない路面でも絶大な安心感
● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト
慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。