2017.04.11
デカイことはラグジュアリーだ!レクサスLCに見る、孤高の贅沢
レクサスが2017年3月に鳴り物入りで発表したLCが話題だ。2プラス2シーターのエレガントな2ドアで、このぜいたくぶり、わかるひとにはかなりウケている。その魅力の秘密を、自動車ジャーナリスト小川フミオ氏が分析するコラム、第二弾!
わかる人にはワカル。デカイ2枚ドアのリッチっぷり
わかるひとにはわかる。これは男が好きな価値観といえる。服、腕時計、アクセサリーなどはそうだ。“え、そうなの? そんなふうに見えない!”とオンナのコに言われると傷ついたりする。
そんなナイーブでアンダーステイテッド(控えめ)な男性諸氏にも、レクサスLCはよい。クルマ好きなら恋に堕ちてしまうカッコよさと万人に認められるようなぜいたくさ。
かつて1990年代にアウディが高級車として広く認められるようになったのは、いかにも高い、と思わせる上手な演出があったからだ。
代表例は97年発表のA6。バンパーをあえて小さくしていた。コーナーをぶつけると、通常はバンパーの修理で済むところが、フェンダーまで交換しなくてはならないデザインだった。
それを見てひとは、“このクルマに乗るのはお金があるひとだ”あるいは“バンパーまわりをこすらない運転に自信があるひとなんだ”と無意識のうちに思うのである。
こうしてなんとなく、すごいとか高いとかぜいたくだと思わせるのが、じつは高級車のデザインといってもいいかもしれない。
大きなドアが2枚というのも、じつはLCのぜいたくさだ。あの大きなドアを開けられるスペースを保有していることを示しているからである。
パリやミラノでランドローバーやレンジローバーが“シック”と思われたことがある(いまでもそうだけれど)。ごみごみした路地とは無縁の生活を送っているという証しだからだ。
日本でもとりわけ都市部では小さな4ドア車が最も使い勝手がいいのは周知の事実。ぼくも狭いコインパーキングを使うときなど、しょっちゅう“軽に乗っていればよかった!”と思うし。
5.0LV8エンジンのもたらす、
車体を短くカットするという馬車の形式から名付けられたクーペ。後席空間へのアクセスを考えたりするとドア開口部はあるていどの大きさが必要になる。
最新のテスラ・モデルXはスターティングプライスが1150万円。価格的にはLC500が1300万円だから、バッティングする関係にある。
ドアを比較してみるとおもしろい。モデルXは(SUVだから仕方ないとはいえ)ファルコンウィングという後席用のドアは上に跳ね上がるタイプ。
使い勝手はいい。けれど、ぜいたくではない。機能性重視だからだ。LCのラグジュリー性は前席にこだわったところにある。
靴やバッグやスーツや腕時計で“あんなもの保管できて使っていられるなんてすごいね!”と言われるものはめったにない。ひと目みてぜいたくとわかるのはクルマならではだ。
それは大きなエンジンだ。LC500に搭載されているのは5リッターのV型8気筒エンジン。ターボチャージャーをもたないのも特徴だ。
同様にV8を大事にしているメーカーとして、メルセデスAMGがある。しかしあちらはターボ。レクサスの技術者に言わせると、自然吸気エンジンのナチュラルさこそ高級なんだそうだ。
エンジンは見えないけれど、ボンネットの長さと太い排気音から“なんだかすごそうだ”と見当がつく。従来のRC FやGS FといったV8モデルの性能ぶりからも、実際にすごいのだろうと期待がふくらむ。
ドアの枚数は減らし、乗員だって2プラス2だから基本は2人乗り。ホテルでいえば2人のために100平米ある部屋を用意するようなものだ。
エンジンの気筒数は多いほうがパワフルだけれど、このようにドアも座席もあえてミニマム。そこからぜいたくさを生み出しているのがLCである。
おそらくそういうことはデートの相手にもすぐわかってもらえるはずだ。“少ないから使いやすい”。そんな逆説こそレクサスLCの得がたいキャラクターなのである。そこが注目点だと思う。
詳細はオフィシャルウェブで
http://lexus.jp/models/lc/