• TOP
  • CARS
  • モータージャーナリストが考えるマッチョなクルマ

2021.02.03

【短期連載】マッチョなクルマを考える【1】

モータージャーナリストが考えるマッチョなクルマ

LEON3月号(1月25日発売)のクルマ特集は、もうお読みいただけましたか? 題して「マッチョなクルマ」特集。それを受けてこの連載では、さらにマッチョなクルマを多角的に考えていきますので、クルマ好きな方もそうでない方も、ぜひご一読ください!連載第一回は「モータージャーナリストが考えるマッチョなクルマ」。

CREDIT :

文/小川フミオ

クルマは楽チンがいちばん、なんて誰が言いましたっけ? 男がちょっとワルい女に惹かれるように、クルマもやや手強そうなのが魅力的に映る場合もありますよね。見かけはもちろんのこと走りも、かなりスポーティ──。そんなクルマを私、小川フミオが3台選んでみました。

いまどきのボーイズレーサー トヨタ『GRヤリス』

かつて「ボーイズレーサー」という言葉がありました。街乗りに使えるんだけれど、週末のサーキット走行まで楽しめちゃう。コンパクトな外寸とスポーティな走り、という意外性のある組み合わせが好まれたのですね。かく言う私もボーイズレーサー、嫌いじゃありません。で、最近、トヨタが『GRヤリス』を発売してくれて、たいへんうれしく思っています。全長は4メートルにも満たない2ドアハッチバックですが、トヨタか、ヤリスかと、ナメてかかると痛い目に遭う。これこそ、ボーイズマッチョ、弾丸マッチョであります。

GRヤリスは「トヨタが自らの手で造るスポーツカーが欲しい」という、同社のマスタードライバ−、モリゾーこと豊田章男社長のかけ声で開発が始まったモデル。これまでにも『86』や『GRスープラ』というよく出来たスポーツクーペはあったものの、前者はSUBARU、後者はBMWが開発の主導権を握っていたため、ピュアなトヨタ製スポーツカーとしてGRヤリスは久々の登場したのですね。
▲ トヨタ『GRヤリス』
PAGE 2
外観はコンパクトハッチ、ヤリスに似ています。名称だってGRヤリスだし。でも、よく見てください。2ドアはヤリスに設定がありません。しかもフェンダーが、これでもか! と膨らみ、より高い操縦安定性をもたらすためのワイドトレッドのタイヤを収めているんですね。それゆえに、見た目もしっかりマッチョなんです。

実際、シャシーはまったく別もの。むしろ世界ラリー選手権で活躍している『ヤリスWRC』に近い。高剛性を追求したシャシーに、フルタイム4WDシステムが搭載され、1.6リッター3気筒エンジンがしぼりだす200kWものパワーを、4つの車輪で受け止めています。

特にトップモデルの『GRヤリスHigh Performance』は、タイヤもハイグリップの専用タイヤ、サスペンションもサーキットがもっとも適しているかのような、ボディのロールを抑えて車体を前へ前へと走らせてくれるハイパースポーツタイプ。マニュアル変速機を操作して走りだすと、前方の消失点に向かって疾走していく感じです。

『ミニJCW』や『アバルト595』も乗り味からいうと、しっかりマッチョです。でも、あえてオシャレな雰囲気よりも走りに特化し、鍛え上げられた筋肉を思わせるボディを有するGRヤリスの求道的な雰囲気こそ、まさにマッチョの名にふさわしいように思います。
PAGE 3

どこへでも行ける“頼りになる相棒” キャデラック『エスカレード』

次に挙げたいのが、GRヤリスの対極にあるともいえるキャデラックのSUV『エスカレード』。サイズは全長5195×全幅2065×1910㎜というこのクルマ、たいへん味のある操縦感覚です。“本格ヨンク”の必須条件ともいえるセパレートフレームに、前後固定式のサスペンションシステム。ゆえに、ゆっさゆっさという感じで走ります。6153ccV8エンジンは、OHVというちょっと古いタイプではあるものの、623Nmもの最大トルクでまったく不足感はありません。
▲ キャデラック『エスカレード』
オフロードでは“足”、つまりサスペンションがよく伸びて、車輪を路面から離しません。いっぽう、高速でも意外なほど直進安定性にすぐれていて、どこへでも行けちゃう、頼りになる相棒なのです。この手のモデルとしてはトヨタのピックアップトラック『ハイラックス』も、しっかりした走りとともに、いい感じのミスマッチ感があるのでオススメしたい一台。でもとにかく、エスカレードのデカマッチョぶりは、図抜けていると思います。

そんなエスカレード、実は今夏にフルモデルチェンジを控えています。ホイールベースは166ミリも伸びて、より大型のフル3列シートモデルに。いっぽう、リアサスペンションは独立式となり、雰囲気もだいぶ洗練されたものに。

それはそれで、もちろん喜ぶべきことなんですけれど、たとえば『Gクラス』、『ディフェンダー』、それに『ジープ』と、好きになると、どんどん先代にさかのぼって乗ってみたくなるクルマがあるのは、クルマ好きの読者諸兄なら納得いきますよね。なぜかというと、ある目的のために作られたピュアなクルマだからだと私は思っています。エスカレードも、そうなっちゃうのかならないのか、まずはニューモデルをこの目で見てみたいと思います。
PAGE 4

美マッチョ&価格もマッチョな ポルシェ『911ターボS』

さて、GRヤリスにはレーシングカーのような走りを求めて、エスカレードには米国メーカーが得意としてきた北米大陸の苛酷な自然をも克服できるようなオフロード性能を追求。そして、もう一台のマッチョとして、私はポルシェ『911ターボS』を挙げたいのです。

最初に911ターボが登場したのが1975年。それからモデルチェンジを繰り返しいまに至ります。911ターボがもっている最大の特徴は何かと聞かれれば、私は、常に最良のスポーツカーであること、と答えたいと思っています、はい。
▲ ポルシェ『911ターボS』
現行モデルは2020年に日本発売が開始されました。どんなふうにマッチョかというと、これはもう、岩から削りだしたような剛性感のあるボディに、超をいくつつけても足りないようなスポーティな操縦感覚の組み合わせ、という点が思いつきます。

おそろしいほど速い。直線も速ければ、コーナーでも速い。ドライバ−が視線をちらりとやったほうへとノーズをさっと向け、4輪駆動システムゆえ、478kWものパワーを最大限に効率よく路面へのグリップ力に使います。ロケットもかくや、という速度感を味わわせてくれます。

もうひとつの特徴は、クルマとドライバ−のインターフェイス。ステアリングホイールへは路面からのフィードバックが繊細に伝わってきますし、左右いずれかに少しでも切れば、車体の動きがスローモーションとでもいうように、手にとるように伝わってきます。

ターボSはかなり硬めの足まわりなのですが、それでも少しはロールする。その車体のロール具合が実によくわかるので、ドライバ−は次の瞬間にどうアクセルペダルを踏んで加速すべきか、一瞬で判断できる。こんなにダイレクトなフィールのクルマは、そうめったにありません。このクルマをどこまで走らせるか。ドライバ−は自分との闘いを強いられます。それこそ、常に高みを目指す人に共通するマッチョイズムの権化でありますね。もちろん街乗りでも充分に楽しめます。その時は、美しいカーブをもったボディの美マッチョぶりを堪能していただければ。

その見た目はというと、前輪と後輪を覆うフェンダーが大きく張り出し、人間でいえば胴にあたるドアのあたりはギュッと絞られています。しかもクーペとともに、カブリオレまで用意されていて、サーキット以外でも、たとえば陽光を浴びながらの海岸線のドライブにだって使えばいいじゃないと思うわけです。その懐の深さにも感心させられます。

価格についても書いておかなくては。『GRヤリスHigh Performance』は456万円~。ただしGRヤリスは、すこしマイルドなエンジンに二輪駆動を組み合わせた「RS」(265万円~)もなかなか良いです。『キャデラック・エスカレード』は1377万円~。『ポルシェ911ターボS』は2892万円~であります。お値段もまた、いい感じにマッチョですなあ。

● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト

慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。

登録無料! 買えるLEONの最新ニュースとイベント情報がメールで届く! 公式メルマガ

登録無料! 買えるLEONの最新ニュースとイベント情報がメールで届く! 公式メルマガ

この記事が気に入ったら「いいね!」しよう

Web LEONの最新ニュースをお届けします。

SPECIAL

    おすすめの記事

      SERIES:連載

      READ MORE

      買えるLEON

        モータージャーナリストが考えるマッチョなクルマ | 自動車 | LEON レオン オフィシャルWebサイト