2017.12.31
いま、専業メーカーのカーナビアプリはどこまで進化しているのか?
今やドライブにおいて必須アイテムとなったナビゲーションシステム。そのアプリ専業メーカーであるナビタイムジャパンに、カーナビの未来について聞いた。
- CREDIT :
文・写真/南陽 一浩
ナビアプリ専業メーカーの経路探索ロジックとは
もはやカーナビを利用せずにクルマに乗る人はいないし、スマホ検索を通じて、欲しい情報をとり出すことは誰にでも簡単になった。なのに、なぜ判を押したように、同じような時刻に同じルートで大勢の人々が渋滞にハマり込むのか? スマート化、インテリジェント化どころか、逆に渋滞は巨大化する一方だ。
確かにポータルサイト系の地図サービス由来のナビ情報は、無料で便利、かつインターフェイスも易しい。だがあまりに一般的で間口が広い分、「ファストフード・ファストファッション化」し、最適化情報が渋滞の入口になっていないだろうか?
そこで今回は、「ナビタイムジャパン」でカーナビの現状について、話を聞いてみた。1996年より経路探索を事業の核に据え、モバイルや車載ナビ、インフラや通信キャリア会社にもナビゲーション・サービスを提供している。ちなみにビルの高層階にあるオフィスは、都下の素晴らしい眺望に恵まれた立地で、首都高3号線沿いの自社広告×3連発を遠望できるほどだ。
ナビ専業メーカーを代表して、その経路探索のロジックや最新機能を説明してくれたのは、オートモーティブ事業部を統括する鈴木祐介さんだった。
ナビタイムジャパンは、大半のカーナビ・メーカーのような車載用の筐体ハードウェアに収めた「ハコ」の状態のナビは売っていない。「カーナビタイム」というオフラインでも地図表示とルート案内が可能なハイエンドモデルは、年間5700円(または月額600円)のアプリ。一方でエントリーモデルの「ドライブサポーター」は年間3500円(または月額400円)ながら、ルート検索など基本機能は無料だ。とくに前者「カーナビタイム」の走行距離ベース使用量の4割は、タクシーやトラックなど職業ドライバーが占めるほどで、「その道のプロ」が日常的に頼りにしているカーナビといえる。
ユーザーのニーズを捉えたきめの細かい経路探索メニュー
ひとつの例が「超渋滞回避ルート」という一昨年から登場した機能だ。高速の乗り降りや距離上で多少遠回りになっても、目的地まで所要時間を短縮するためのルート案内をする。
いわば目的地まで案内するだけでなく、渋滞を避けることは、カーナビタイムにとってもとよりコア機能そのもの。近頃では「シナリオ・チェンジ」の機能も充実している。
カーナビは非オンボード化が賢い?
欧州でもじつは、普及車クラスのナビ機能は車載用の固定台座と競争力ある地元のナビ・メーカーのOEMアプリに、とって代わられつつある。
ボイス制御からAIへの過程は、ナビからエージェントへの進化か
「ナビは目的地まで案内することだけが目的でなく、移動中にその時々で、その人にあった最適な解決策を提案することが目的。ですから今後のナビはよりエージェント化して、車内でコンシェルジュのような存在になると思います。自動運転の時代になっても、例えば「近いトイレはどこ?」といった急な寄り道が必要になることに変わりありません。そこは変わらないですから。データベースは生モノで、例えばお店や施設、道路などは新しくできるもの、無くなるものがあります。それらひとつひとつに対応していくキメ細かさが大事だと思っています。弊社は一日に8回はデータ更新しておりまして、「NT-FILTER」という独自技術を活用してユーザーからのプローブ情報によって従来は無かった道が加えられたりもします。今後もナビとして、他社との違いを出すことが目的ではなく、ユーザーに寄り添って課題を解決していけるよう、サービスを磨き上げたいと考えています」
南青山から左に六本木ヒルズを望みつつ首都高3号線が視界内を横切る、ナビタイムジャパンからの眺め
カーナビの現状と今後の見通しを、分かりやすく説明してくれた鈴木祐介さん
渋滞や駐車場の空き、あるいは事故多発地点で注意喚起をするなど、実際的な案内が評判の「カーナビタイム」
お盆や連休の時期に活躍しそうな超渋滞回避ルートは、道が流れていることを優先してくれる
SUVなどは外寸を登録しておけば、都内で多い機械式パーキングの対応サイズをも勘案して、駐車場の空きをリストアップする
「目的地まで案内するだけでなく、途中の状況に応じて新しい解決を提案するのがナビ」と鈴木さんはいう
これは御殿場のアウトレット付近で、国道138号で渋滞に遭った時の抜け道。通れないほど狭い・難しい道でなく、プローブ情報で通過実績のある道のみ示す
ナビタイムジャパンでは、スマートフォンフォルダーもオリジナルでリリースしている
「カーナビタイム」では、検索したパーキングの満車情報までも案内してもらえる
スマートフォン用ホルダーと、カーナビタイム用ナビリモコンを装着したところ。機能的に見劣りしないどころかアップデート耐性は高いとはいえ、収まりの美しさは据付の純正モニターにはかなわないところではある
今回、取材にこたえれくれたナビタイムジャパン オートモーティブ事業部長の鈴木祐介さん
南青山から左に六本木ヒルズを望みつつ首都高3号線が視界内を横切る、ナビタイムジャパンからの眺め
カーナビの現状と今後の見通しを、分かりやすく説明してくれた鈴木祐介さん
渋滞や駐車場の空き、あるいは事故多発地点で注意喚起をするなど、実際的な案内が評判の「カーナビタイム」
お盆や連休の時期に活躍しそうな超渋滞回避ルートは、道が流れていることを優先してくれる
SUVなどは外寸を登録しておけば、都内で多い機械式パーキングの対応サイズをも勘案して、駐車場の空きをリストアップする
「目的地まで案内するだけでなく、途中の状況に応じて新しい解決を提案するのがナビ」と鈴木さんはいう
これは御殿場のアウトレット付近で、国道138号で渋滞に遭った時の抜け道。通れないほど狭い・難しい道でなく、プローブ情報で通過実績のある道のみ示す
ナビタイムジャパンでは、スマートフォンフォルダーもオリジナルでリリースしている
「カーナビタイム」では、検索したパーキングの満車情報までも案内してもらえる
スマートフォン用ホルダーと、カーナビタイム用ナビリモコンを装着したところ。機能的に見劣りしないどころかアップデート耐性は高いとはいえ、収まりの美しさは据付の純正モニターにはかなわないところではある
今回、取材にこたえれくれたナビタイムジャパン オートモーティブ事業部長の鈴木祐介さん
慶大文学部卒。自動車雑誌の編集を経てフリーライターとして20数年、うち半分以上をフランスで過ごし、日仏独の雑誌にクルマや時計、ファッションや旅行の記事を寄稿。滞在中にランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で地理・社会学関連の修士号取得。通訳翻訳も手がける。2014年より東京に戻り、相変わらずのフリー稼業。