2017.08.23
自動運転の時代、カーエンターテイメントはどこまで進化するのか?
運転支援技術が長足の進化を遂げているのはご存じの通り。今後、ドライバーが運転の負担から解放されたとき、車内空間はどうあるべきなのか。アメリカの高級オーディオ・メーカーで車載インフォテイメントの大手サプライヤ、ハーマンインターナショナルの試みを紹介する。
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文/南陽 一浩
車内で余裕のできたドライバーが、より有益な時間を過ごすために求めるもの
要は以前より「余裕をもって過ごせる」けれど、エンジン音やロードノイズといった騒音をもとより伴う車内で、さらなる快適性が求められるのは必然といえるだろう。進化の方向性として「車内でのいい音」へのニーズは確かに高まっているのだ。
車載オーディオのメーカーも、そこはビジネス・チャンスと捉えている。今回はオーディオ&インフォテイメントの大手サプライヤであるハーマンインターナショナル、そのデトロイトの開発研究センターで話を聞いた。
ハーマンインターナショナルは傘下にJBL、ハーマンカードン、マークレビンソンといった高級オーディオ・ブランドを抱える。レクサスやメルセデス、BMW、ミニ、フェラーリ、ジープ、トヨタとスバルに車載オーディオを供給しているだけでなく、インフォテイメントやテレマティクスなどコネクティッド・カー技術でも、世界有数の大手だ。
「車内で余裕のできたドライバーが、より有益な時間を過ごすために求める方向性はふたつ。生産性の向上と、より質の高いエンターテイメントです」
ハーマンインターナショナルの重役の一人はそういい切る。今後ユーザーが求めるのは例えば、移動中にメールの送受信をこなしたり打ち合わせするなどの仕事の場として、あるいはより臨場感ある、さらに刺激的な音を楽しむためのリスニング空間だと。
渋滞の中でも海や森にいるかのようなリラックス効果を生み出す
またキーワードはインタラクティブだけでなく、イマーシブル(没入するような臨場感)にも及ぶ。サラウンド効果を水平方向だけでなく360度、それこそ球状に車内を包み込むような音場を作り出すことで、渋滞の中でも海や森にいるかのようなリラックス効果を生み出したり、あるいはステージの真ん中にいるかのように、音楽を聴くこともできるという。
低周波ノイズを遮断するには車体に重たい遮音材が使われるので、この技術を採用することでクルマの軽量化やCO2削減にも貢献すると見られている。しかも一方では、ノイズ・キャンセル機能が車内の音楽を妨げないよう、吸い込まれてしまった帯域を補って、狙い通りの音に復元する技術も確立されている。
さらに、スマートフォンが一人一台は当たり前の今だからこそ求められる技術がある。具体的には、乗員がそれぞれの座席で通話を始めても、指向性マイクによって本人の声は拾って補いつつ、演奏中の音楽やほかの乗員の声といった周辺音は抑えこむことで、車内でよりクリアな音声通話が可能になるという。しかも車内と外部の通話だけでなく、前席と3列目シートのように距離のある乗員間でも、音楽やノイズは抑え、会話の声だけを増幅することで、よりコミュニケーションのとりやすい環境を実現できるそうだ。
これからの魅力的なクルマの条件
アメリカ・ミシガン州、デトロイト郊外にあるハーマンインターナショナルのR&Dセンター
アメリカ・極東地域でライフスタイルオーディオを担当するエンジニアリングの上級ディレクター、ジェイソン・G・バウマン氏
ハーマンインターナショナルで、次世代車載オーディオの核となる技術のラインナップ
ハーマンインターナショナルは「よい音」を定義するため、社内で評価リスナーを養成。帯域の正確なバランス、歪みのない出力、広がりや距離感の評価を習得させるという
ヘッドレストに巻きつくように備えられた、乗員個々のスピーカー&マイクと、タブレット上で優先すべき音源を分別するデモ画面
ヘッドレストに巻きつくように備えられた、乗員個々のスピーカー&マイクと、タブレット上で優先すべき音源を分別するデモ画面
これは持ち運び可能なJBLのBluetoothアクティブスピーカーを、トランクの床下にセットできるシステム。モバイル性やスマホとの親和性はきわめて高い
これは持ち運び可能なJBLのBluetoothアクティブスピーカーを、トランクの床下にセットできるシステム。モバイル性やスマホとの親和性はきわめて高い
従来とは別次元のスピーディな演算や飛躍的な処理能力を可能にする、「サミット」のチップセット
ミニマムに効率化されているのはチップセットだけではない。「サミット」のデモカーには何と、この極小の駆動ドライバーを用いて76個ものスピーカーシステムが備わっていた
アメリカ・ミシガン州、デトロイト郊外にあるハーマンインターナショナルのR&Dセンター
アメリカ・極東地域でライフスタイルオーディオを担当するエンジニアリングの上級ディレクター、ジェイソン・G・バウマン氏
ハーマンインターナショナルで、次世代車載オーディオの核となる技術のラインナップ
ハーマンインターナショナルは「よい音」を定義するため、社内で評価リスナーを養成。帯域の正確なバランス、歪みのない出力、広がりや距離感の評価を習得させるという
ヘッドレストに巻きつくように備えられた、乗員個々のスピーカー&マイクと、タブレット上で優先すべき音源を分別するデモ画面
ヘッドレストに巻きつくように備えられた、乗員個々のスピーカー&マイクと、タブレット上で優先すべき音源を分別するデモ画面
これは持ち運び可能なJBLのBluetoothアクティブスピーカーを、トランクの床下にセットできるシステム。モバイル性やスマホとの親和性はきわめて高い
これは持ち運び可能なJBLのBluetoothアクティブスピーカーを、トランクの床下にセットできるシステム。モバイル性やスマホとの親和性はきわめて高い
従来とは別次元のスピーディな演算や飛躍的な処理能力を可能にする、「サミット」のチップセット
ミニマムに効率化されているのはチップセットだけではない。「サミット」のデモカーには何と、この極小の駆動ドライバーを用いて76個ものスピーカーシステムが備わっていた
慶大文学部卒。自動車雑誌の編集を経てフリーライターとして20数年、うち半分以上をフランスで過ごし、日仏独の雑誌にクルマや時計、ファッションや旅行の記事を寄稿。滞在中にランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で地理・社会学関連の修士号取得。通訳翻訳も手がける。2014年より東京に戻り、相変わらずのフリー稼業。