大谷達也 自動車ライター。自動車専門誌を経てフリーランスに。語学力を生かした取材力で自動車ブランド本国エンジニアの信頼も厚い。LEON本誌の連載等でもおなじみの評論家。
堀川正毅 LEON副編集長。主にファッションを担当。例年、イタリアのファッションウィークを現地取材するなど、国内外のブランドに精通。食と酒にも詳しく、趣味は週末のオートキャンプ。
近藤高史 LEON編集デスク。主にクルマ、宿、ゴルフなどライフスタイルを担当。LEON、LEON.jpのクルマに関するすべての記事を統括。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員としても活動。
堀川 AMGって、全部メルセデスをベースにしてAMGがオフィシャルにチューニングしたモデルだと思っていたんですが、これってAMG専用のボディじゃないですか?
近藤 鋭い! もともとメルセデスAMGといえば、ベースとなるメルセデス・ベンツのモデルがあるんですが、2ドアのAMG GTと、このAMG GT 4ドアだけはAMG専用のボディでできてるんですよね。
大谷 さらに言うと、なんでAMG GTに4ドアが作られたかというと、メルセデスAMGのCクラスとかEクラスとかに乗るお客さんが、何年後かに買い換える時、SクラスのAMGじゃなくてポルシェ・パナメーラを買っちゃうケースが少なくなかった。そこでメルセデスAMGが、パナメーラを研究し尽くして開発したのがAMG GT 4ドアといわれています。
近藤 当時、ダイムラー・ベンツ社でレーシングエンジンの開発を行なっていたハンス・ヴェルナー・アウフレヒトとエアハルト・メルヒャーは、ダイムラーがレース活動をやめたことをきっかけに独立し、1966年に自分たちの会社を設立、これがAMGの始まりでした。
ちなみにAMGの最初のAはアウフレヒト、2番目のMはメルヒャーの頭文字で、Gはアウフレヒトが生まれ育ったグローザスバッハという土地の名前に由来しています。なので、もともとは別会社でしたが、2005年に当時のダイムラー・クライスラーが株式を買い取って完全子会社になりました。
いずれにしても、メルセデスを母体としてスポーツモデルの開発・製造を行うのがAMGの役割。ちなみに“アーマーゲー”と発音する人がいますが、あれはドイツ語の発音的にも違っていて、AMG自身は自分たちのことを“エー・エム・ジー”と呼んでいます。
堀川 そうですね、あくまでも個人的な考えで述べさせてもらうと、いまのルイ・ヴィトンにすごく似ているかもしれません。
大谷 どういう意味ですか?
堀川 まず、メルセデスといえばクルマのブランドとして王様ですよね。ルイ・ヴィトンもラグジュアリーブランド界の王様と言って、間違いのないブランドです。しかも、メルセデスもルイ・ヴィトンも正統派の代表みたいな立ち位置ですよね。
大谷 なるほど、そういう視点で見ると、よく似ていますね。
大谷 へぇ! それはさぞかし派手に報道されたんでしょうね?
堀川 もう、大変なビッグニュースでしたよ。しかも、彼はものすごく優秀で、ルイ・ヴィトンというブランドが持っている財産をいまという時代に合わせてアップデイトしてみせたんです。
大谷 具体的には、どうしたんですか?
堀川 そう。これもあくまでも私見ですが、AMG GT 4ドアに乗る人って、経済的にも精神的にもかなり余裕がある人だと思うし、と同時に自己主張の強いタイプでもあると思うんですね。何しろ実用性からいえば普通のメルセデス、そしてSUVやセダンで十分なのに、あえてAMGのクーペボディを選んでいる。
そこに明確な意思を感じます。ヴァージルが作るルイ・ヴィトンもそれと似ていて、どこの作品かよくわからないものではなく、ひと目でルイ・ヴィトンとわかる。つまり、強印象を放っています。そういう部分に価値を感じる人がヴァージルの作るルイ・ヴィトンだったり、メルセデスのなかでもAMGだったりを購入するんじゃないでしょうか。
近藤 それは絶対にそうですね。メルセデスほどの技術力、長年蓄積してきたノウハウがあるからこそ、AMGというある種の“アレンジ”が生きる。ルイ・ヴィトンの場合も、いくらヴァージルが蛍光塗料を使いたいといっても、しっかりした耐久性なりクォリティを確保できなければ実現できなかったわけで、そういう意味では長い伝統を持つブランドだからできたといえますね。
大谷 とはいえ、ルイ・ヴィトンにとってもヴァージルの起用はかなりのギャンブルだったんじゃないですか?
堀川 相当のギャンブルだったとは思います。ただし、アメリカで台頭する若いニューリッチと呼ばれる層を間近で見て「あ、こっちだ!」という判断がされたんだと思います。
近藤 かつての、スーツを着たら足元は必ず革靴というスタイルから、同じスーツでもインナーにTシャツを着たり、足元はスニーカーもOKというふうに変化している。なんだったらジョガーパンツで出社だってあり得るご時世が背景にあって、こういうデザイナーが受け入れられたんでしょうね。
大谷 では、そんなAMG GT 4ドアに乗るとしたら、どんなファッションが似合いそうですか?
堀川 先ほども申し上げましたが、AMGを選ぶ方はきっと、強印象なファッションに関心があると思われます。そこで同じルイ・ヴィトンでもLVイニシャルが大きかったり、無数だったり、目立つように入っているスウェットとかフリースなんかが似合いそうな気がします。
堀川 そうですね。カジュアル気味でいいと思います。とはいえ、ちゃんとハイブランドであることがわかるポイントを備えている。そんなスタイルがいいと思います。
近藤 足元はスニーカーだけど、よくあるスポーツ・ブランドが作ったものではなく、1足15万円くらいするルイ・ヴィトンのスニーカーを履いているとか。一見したところラフなんだけれど、全身で数十万円かけている、みたいなファッションですね。
大谷 それはメチャクチャ高価ですが、きっとルイ・ヴィトンだったら、同じスウェットやフリースでもひと目で素材の良さ、仕立ての良さがわかるんでしょうね。
堀川 そこは最低限、担保されているところです。同じことはメルセデス AMGについてもいえるんじゃないでしょうか。
大谷 いやぁ、今日はメルセデス AMGとルイ・ヴィトンの意外な共通点を知ることができました。どうもありがとうございました!
■ お問い合わせ
ルイ・ヴィトン クライアントサービス 0120-00-1854