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2021.07.04

【VOL.02】マクラーレン 620R

世界限定350台、幻のスーパースポーツ「マクラーレン 620R」をあえてサーキットで全開走行させる理由とは?

クルマを暮らしの良きパートナーとして人生を愉しんでいるオーナーを直撃、そのカーライフと愛車への想いを語っていただく連載が始まりました。今の時代、もしかしたクルマは大いなる無駄かも。けれどそんな無駄を愉しめる贅沢こそ豊かな人生の証。第2回はマクラーレン620Rを所有する須田 力さんです。

CREDIT :

写真/森 浩輔 文/松村 透(studio multilink)

大のクルマ好きである須田さんがガレージハウスを探していた時、なかなか自分の理想に合致する物件が見つからなかったそうです。それならば自分で創ってみようと思い立ち、賃貸ガレージハウス「inCELL(インセル)」を立ち上げたのが7年前。現在では首都圏を中心に8棟のガレージハウスを展開、今年6月には千葉県木更津市に9棟目がオープンしました。
家具やインテリアのデザインが本業だと語る須田さん。その知見を活かし、自分の理想を追い求めた賃貸ガレージハウスをプロデュース。結果として多くのクルマ好き、それもスペシャルなモデルのオーナーたちの共感を得て、空室待ちの状況が続いているといいます。現在、マクラーレン 620Rの他、アウディ RS 6 アバントおよびアウディ RS 3 セダンを所有するという須田さんのカーライフとは?

若い頃は峠やサーキットを走り回っていました

現在49歳の須田さん。若い頃は当時の若者たちと同様、クルマに熱中する日々を送っていたようです。

須田さん(以下 須田) 人生初の愛車は17歳の誕生日に購入したトヨタ クラウンです。運転免許センターで試験を受けた時に購入してしまいました。その後、Z30型ソアラ(AT)に乗り換え、R33型GT-Rへ。この頃には峠道だけでなく、サーキットでも走り回っていましたね。当時のガソリン代は月に20万円を超えていました(笑)。

ある時、自信満々で日本海間瀬サーキットに挑みましたがタイムが出ない。当時は何も分からなかったので「ラップタイムが伸びないのはクルマの調子が悪いから」なんて言っていた時代もありましたね。
▲ 須田さんの愛車であるマクラーレン 620R & アウディ RS 3 セダンと、須田さんご自身がプロデュースする賃貸ガレージハウス「inCELL(インセル)」。
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結婚を機に輸入車の世界へ。妻に内緒で日本限定5台のレアモデルを

結婚を機に輸入車へとシフトした須田さん。奥様に内緒で手に入れた限定モデルが、その後の公私にわたるカーライフに大きな影響を与えることになります。

須田  結婚を機に、妻の家族から「そろそろクルマは卒業しないと……」と言われてしまい。初の輸入車となるメルセデス・ベンツE55 AMGに乗り換えました。ベンツなら安心と思わせておいて、でも実は、こっそり足まわりを交換したり、走りが忘れられなかったんです。その後、子どもが産まれたタイミングでV10エンジンを搭載したBMW M5を経て、Bang & Olufsenの音に魅了され、同じくV10エンジンを搭載したアウディS8に乗り換えました。
須田 ある時、日本では5台しか販売されないという「アウディ R8 GTを買わないか」という話が舞い込んできました。これは即決しないと2度と新車では手に入れることができないかもしれない……。そう思い、生まれて初めてその場で契約してしまったのです。

無事にアウディ R8GTを手に入れることができたのですが、何しろ妻に内緒で購入したので自宅には置けません。これは置き場所を確保しないとまずいということになり、調べていくうちにガレージハウスというものがあることを知ったのです。しかし、実際はガレージハウスとは名ばかりで、使い勝手が今ひとつで、どちらかというと倉庫に近い物件ばかりでした。
▲ 床はタイル張り、天井にはスポットライトを設置。まるでディーラーのショールームのような雰囲気のガレージ。
須田 その後もありとあらゆるガレージハウスを見て回りましたが、オーナーかつ家具やインテリアのデザインを生業としている目線で見てしまうと、イメージに合う物件が見つからない。「スタイリッシュな内外装、住まう人や愛車にとって快適な空間、さらに万全のセキュリティ」。そんなガレージハウスがあれば……。もしかしたら、私以外にもそう思っている方がいらっしゃるかもしれない。この時の想いが後に賃貸ガレージハウス「inCELL(インセル)」を立ち上げる契機となります。
▲ マクラーレン 620Rのエンジンルーム。メンテナンスができるのは正規ディーラーのみという厳格さが、クルマの本来のコンディション維持に通じています。
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知人のマクラーレンを試乗したことで、その魅力に開眼

本格的にドライビングテクニックとクルマに関する知識を身につけるべく、サーキット走行に夢中になった須田さん。やがて、アウディ R8 GTを超えるスペシャルなクルマとの出会いを果たすことになります。

須田  アウディ R8 GTを手に入れたことで、本格的にドライビングテクニックとチューニングを学んでみようと考えるようになり、その世界では知られたショップを訪ねました。ここで、現在は弊社のモータープロモーション部門を統括する、レーシングドライバー山口 礼と出会うことになります。彼からドライビングテクニックを教わることで「まずはテクニックよりもメンタルを鍛える」ことを知りました。
▲ カーボンシェルのフルバケットシートにアルカンターラのクッション。レーシーでありながら、どことなくスタイリッシュな620Rのシート。
須田 アウディ R8 GTにはセラミックカーボンブレーキが装着されているのですが、ツインリンクもてぎを走った時に酷使してしまい……。ショップの方から「市販車には限界がありますよ」と一蹴されてしまいました。例えば、ポルシェ カレラカップで使用されているレーシングカーを購入して走ればそれなりのラップタイムをたたき出せると思いますが、それではつまらないなと考えていたんです。
▲ マクラーレン 620Rのメーターパネル。
須田 そしてある時、気づいたんです。「そういえばマクラーレンでサーキットを本気で走る人っていないな」ということに。さっそくディーラーへ赴き、さらに友人が所有するマクラーレンにも試乗させていただいたのです。これが衝撃的な体験となりました。「これこそ自分の求めていたクルマだ!」と直感した瞬間でしたね。
▲ ドアを閉める際に使用する紐。これも標準装備。サーキットユースが前提の620Rには必要不可欠な身支度なのです。
須田 マクラーレンを手に入れる際、当初、600LTを考えていたのですが、周囲からは「限定車の620Rでなければだめだ!」と洗脳されまして(笑)。予算の関係もあり迷いましたが、レーシングカーであるマクラーレン570S GT4をサーキットで走らせる機会があり、このモデルをベースに公道走行を可能にしたクルマなら存分に楽しめるに違いないと確信し、620Rを手に入れることにしました。
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愛車を選ぶ基準は「ライフスタイルが垣間見えるクルマであること」

スタイリッシュかつハイセンスなガレージハウスをプロデュースする須田さんだけに、愛車選びにもこだわりとセンスが光ります。

須田 私にとって愛車選びの基準は「そのクルマをフィルターにして自分自身のライフスタイルが垣間見えるクルマであること」だと考えています。押し出し感の強いクルマではなく、かといって過剰にスポーティさを演出するモデルも自分のライフスタイルにはしっくりこない。
▲ スパルタンでありながら、洗練された雰囲気も感じさせるマクラーレン 620Rの内装。
須田 そんな想いを抱きつつ、自分のライフスタイルにしっくりくると感じて選んだのが現在の愛車ということになります。声高に高性能をアピールすることなく、それでいてあくまでもさり気なく、スタイリッシュなクルマに惹かれます。それと…「妻に怒られないクルマであること」。これも大事な要素です(笑)。
▲ マクラーレン 620Rとアウディ RS 6 アバント。どちらも須田さんのカーライフを体現する存在といえます。

マクラーレン 620Rのリセールに影響する? そんなことは気にしない

世界的にも貴重なマクラーレン 620Rを駆り、臆することなくサーキットを全開で攻める須田さん。美しく磨きあげられた620Rのタイヤやブレーキ周辺には、サーキットで酷使された痕跡が……。

須田 マクラーレン 620Rの生産台数は350台。マクラーレン570S GT4の実質的なロードバージョンであり、さらに2015年に発売された570Sクーペ以来、さまざまなモデルを展開してきたスポーツシリーズの最後を締めくくるモデルなのです。
▲ タイヤの角の削れ具合やブレーキキャリパーの変色度合いから、いかにサーキット走行で攻めているかが分かります。
須田 620Rを走らせることなく、ガレージで眠らせておけば今後価値が高まる可能性が考えられます。このクルマでサーキットを走れば走るほどリセールバリューは下がるでしょう。しかし、私はそんなことは気にしません。このクルマが本来の性能を存分に発揮できるサーキット、主に富士スピードウェイをホームグラウンドにしています。現在のラップタイムは1分48秒台。スリックタイヤに履き替えればもう少しタイムを縮められるかもしれませんし、鈴鹿やツインリンクもてぎも走ってみたいですね。
▲ あくまでもさりげなく、限定モデルであることを示すプレート。
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10年後は「渋滞すら楽しいクルマ」に乗りたい

マクラーレン 620Rに魅了されている須田さんですが、大いに感性を刺激されたクルマとの出会いも果たしているようです。

須田 10年後を想像した時、アストンマーティンに乗っていたいと思っています。2年前にDBS スーパーレッジェーラを運転する機会があり、走りの質感はもちろんのこと、クルマが発する音色や室内の仕立てなど、すべてが私の感性に突き刺さりました。渋滞すら苦にならなかったクルマはアストンマーティンが初めてです。

実は購入直前まで話が進んだのですが、そうなると今の愛車を入れ替える必要がありました。アストンマーティンは無理をして買うクルマではありませんし、手に入れるのは10年後の楽しみにとっておきたいと思います。

須田さんにとってクルマ、そしてクルマを通じて実現させたいこととは?

公私ともに充実したカーライフを送る須田さん。今後実現させたいことも、夢レベルではなく、既に実行しているプランも……。

須田 ひと言でいうなら「人生のパートナー」でしょうか。
▲ 腕時計はIWCを愛用。
須田 クルマを通じて実現させたいことは3つあります。

1つめは2~3000坪くらいの敷地に分譲棟・賃貸棟・テナント棟(チューニング屋など)を集約させたクルマに関連するテーマパークを創りたいです。

2つめは都心の中心に丸ごと一棟、クルマに関連するビルを創ってみたいです。実はある程度形になっていて、とある企業とコラボレーションしてプライベートラウンジを創りました。ここはまさに「オヤジが唸る空間」だと思っています。

3つめはヨーロッパの富裕層たちが本気でレースを楽しむ「ジェントルマン・ドライバー」のように、日本国内だけでなく本場のレースに参戦してみたいですね。ドライバーは現在、ランボルギーニの育成ドライバーとして海外で活躍している根本悠生さん(inCELLに入居中)と弊社の山口 礼、そして私の3人で。ただ、それにはドライビングテクニック以前に身体づくりからはじめなければならないようです。幸い、環境は整っているので、いつか実現したいですね。
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■ 取材後記

時にユーモアを交えながら、愛車やご自身のカーライフ、ガレージハウスへの想いを語ってくださった須田さん。それは夢物語ではなく、既にスタートしているプランであったり、実現する一歩手前のもの少なくありません。愛車を手に入れたディーラーとも良好な関係を築き、結果としてそれが仕事へとつながっているそうです。

そして、愛車であるマクラーレンやアウディも、須田さんのライフスタイル全般、そしてご自身がプロデュースする賃貸ガレージハウス「inCELL(インセル)」の世界観を演出する重要なアイテムといえます。
他人の目を意識するのも、虚栄ではなく自らのセンスと審美眼に絶対の自信を保つために必要なエッセンスにすぎません。過剰な演出を抑えつつも目を惹く存在であり、スマートかつスタイリッシュ。それはまるで、愛車だけでなく自身のファッションやライフスタイルにも細部まで気を配るヨーロッパのジェントルマン・ドライバーのようでした。

● オーナープロフィール

名前/須田 力さん
年齢/49歳
仕事/賃貸ガレージハウス「inCELL(インセル)」代表
HP/https://infist-incell.com/
所有車/マクラーレン 620R、アウディ RS 6 アバント、アウディ RS 3 セダン
※inCELLとは、ドイツ語でInsel(島と言う意味で周囲の喧騒から独立した空間をイメージ)と、須田さんが経営する企業・株式会社インフィストデザイン(infistdesign)のinとCELL(細胞)=自分だけの個室のような空間が各地へ細胞のように増殖させて行きたいとの願いを込めた造語

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