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2018.04.11

自動車ジャーナリストが選ぶ、美しいクルマ【3】

最高に美しいクルマは、この世に一台のマッハ号のようなデザイン

業界屈指のスーパーカー通として知られる西川淳氏。最も美しいクルマとしてリコメンドしてくれたのも、この世にたった1台しか存在しないスペシャルなモデルだ。

CREDIT :

文/西川淳 ©FCA

ピニンファリーナによる傑作の1台ともいえる「ティーポ33/2クーペ・スペチアーレ」
ピニンファリーナによる傑作の1台ともいえる「ティーポ33/2クーペ・スペチアーレ」
1960年代の終わりに現れたアルファロメオ「ティーポ33/2ストラダーレ」が、最も好きなクルマだ。

生産台数、わずかに18台。そのうちの10台近くは実際にこの目で見たことがある。日本でも2台、見た。奇才フランコ・スカリオーネの手になるスタイリングは、美しさと獰猛さ、つまりは静と動という背反する二律の同時表現であり、自動車そのものの本質的な魅力を体現していると言えそうだ。
こちらはカロッツェリア・ベルトーネから独立した奇才フランコ・スカリオーネが手がけた「ティーポ33/2ストラダーレ」
こちらはカロッツェリア・ベルトーネから独立した奇才フランコ・スカリオーネが手がけた「ティーポ33/2ストラダーレ」
ただでさえ美しい「ティーポ33/2ストラダーレ」。しかしながら、美的表現だけにこだわってみれば、もう一台、さらなる“上”が存在する。それが、写真のクルマ、アルファロメオ「ティーポ33/2クーペ・スペチアーレ」である。

当時のアルファロメオは、まだ国営企業だったせいか、たいへんに大きな政治力をもっていた。ほとんどレーシングカーというべきティーポ33をベースにしたコンセプトカーの習作を、イタリアの著名なカロッツェリアのスタイリストたちに依頼し、そのアイデアをモーターショーで競わせる、なんていうお大尽な企画をばんばん打っていた。
低い流線型のボディがまさにマッハ号を彷彿させる「ティーポ33/2クーペ・スペチアーレ」
低い流線型のボディがまさにマッハ号を彷彿させる「ティーポ33/2クーペ・スペチアーレ」
このクーペ・スペチアーレも、そうして生まれた一台だ。ピニンファリーナがスタイリングを担当した。当時、ピニンファリーナがフェラーリ用にデザインしたコンセプトカー「P5」との類似性がそこかしこに見受けられる。個人的にはアルファロメオ用のほうがよりクルマらしく(これでも!)、美しくまとまっていると思うのだが、どうだろう。
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「ムゼオ・アルファロメオ」の内観。センターのイエローのモデルが「ティーポ33/2クーペ・スペチアーレ」
「ムゼオ・アルファロメオ」の内観。センターのイエローのモデルが「ティーポ33/2クーペ・スペチアーレ」

「ムゼオ・アルファロメオ」に行けば実車を間近に見ることができる

小さい頃に憧れた、マッハ号のようなデザインのクルマは、ついぞ、ロードカーやレーシングカーにはどこを見渡しても登場しなかった。だからこそ、それに最も近づいたピニンファリーナ・スペチアーレは、ボクにとって、永遠に美しいアイドルになったのだ。
ミラノ市内から約15kmのアレーゼにあるムゼオ・アルファロメオ」
ミラノ市内から約15kmのアレーゼにあるムゼオ・アルファロメオ」
コンセプトカーだから、もちろん、一台が作られたのみ。とはいえ、イタリアはアレーゼにある「ムゼオ・アルファロメオ」まで行けば実車を間近に見ることができる。マルペンサ空港からミラノ市内へと向かうアウトストラーダの脇にムゼオはあって、通るときには必ずと言っていいほど、立ち寄る。そして、いの一番に、とある階の最も奥に棲んでいるこの黄色いクルマに駆け寄り、しばらくたたずむのだ。

見飽きるということがない。ぐるぐると、何周もクルマのまわりを練り歩く。運転できるのだろうか? と心配になってしまうほど、車高が低い。それがいい。
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地下1階、地上2階の展示スペースに約70台の歴史的モデルが展示されている
地下1階、地上2階の展示スペースに約70台の歴史的モデルが展示されている

美しき文化へと昇華したモデルたち

スペチアーレを堪能したあとは、階下のストラダーレにも会いに行く。ムゼオにあるのはプロトタイプ。クルマの近くに低く赤いソファーがある。手をつき、脚を投げ出して、時間の許す限り、眺める。至福のとき。

たとえ運転できなくても、感じることのできる魅力がクルマにはあるものだ。否、だからこそ、ある種類のクルマたちは単なる移動のツールではなくなり、ミュージアムに並んで、ボクたちの目を楽しませてくれている。

20世紀の人類が生んだ最高の文明であるクルマ。そのうちの何モデルかは、美しき文化へと昇華したのだった。

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『自動車ジャーナリストが選ぶ、美しいクルマ』

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