2018.04.13
片道300kmのロングドライブで見えてきた、テスラ・モデルXの快適性能とは
EVの最大の関心事は、寒冷地でのバッテリーの“もち”と、地方での充電ポイントの有無だろう。二週間ほど前、まだ雪が残る奥志賀高原にテスラモデルXで行ってきた。
- CREDIT :
取材・文/前田陽一郎(LEON.JP)
お借りしたのはテスラ・モデルX・75D。75kWバッテリーを搭載し、最大航続距離は417kmのベースグレードとも言えるモデルだ。
まるでスマホ!次々に追加される新機能
さて、現在のソフトウエアは8.1にアップグレードされているのだが、今回の変更で興味深かったのが「クライメート コントロール」の追加。これはクルマ本体がオフの状態でもエアコンのみ起動させ続けることができる機能で、設定された車内温度をキープすることができるというもの。
また、あまりアナウンスされていないが、モデルXのインテリアはメインテナンス性に優れていて、シートはコーヒーなどをこぼしても拭き取りが簡易な素材が採用され、フロアカーペットもペットの毛や汚れそのものが付着しにくいものが選ばれているそうだ。
宅から奥志賀高原までは1回のチャージで
先に今回のロングドライブの行程と、走行距離、バッテリー残量を記すと
<76%>自宅(八王子)※自宅に充電設備がないため車両受け取り時点での残量
↓101km
<47%>高崎玉村スマートIC道の駅「玉村宿」
<97%>チャージ(テスラ・スーパーチャージャー)&軽食
↓188km
<12%>奥志賀高原ホテル
<100%>チャージ(テスラ専用充電器)&宿泊
↓26km
<94%>地獄谷野猿公苑
<88%>「クライメート コントロール」稼働2時間半
↓252km
<20%>自宅(八王子)
バッテリー消費量は走行状態で大きく変わるが…
ただし、今回の試乗では標高1500m以上、夜には氷点下5℃以下になる気温だったにも関わらず、低温状態でバッテリーが弱まるような感じは受けなかった。これもスマートフォンを例にとると、気温差によるバッテリーへの影響はスマートフォンのそれとは比べものにならないほど安定しているように思える。
「クライメート コントロール」は使える!
バッテリー消費に関しても、25℃設定のヒーター使用では2時間以上稼働させていても10%も減らなかった。
ロングドライブではやはりチャージポイントの把握が必要
結果的には十分な余裕をもってホテルに到着はしたものの、真冬に雪でスタックなどして数時間を車中で過ごさなければならなくなったら…と思うと、バッテリー残量には常に“精神的な”ゆとりをもっていたいのと、あらかじめ複数の充電ポイントを把握しておく必要はありそうだ。
充電量は充電時間に比例するという当たり前の事実
これも当たり前だが、充電量は充電時間に比例する。テスラの場合、スーパーチャージャーならおよそ1時間で9割前後は充電できるが、一般の充電器を使用する(サービスエリアなど)場合、充電時間に30分制限が設けられていることが多くなりつつあるため、まず満タンにはならない。ちなみに今回、CHAdeMOで30分間充電してみたが、残量5%から25%までしか回復しなかった。となると、またどこかで30分の充電が必要になる可能性もあり…。実感としては不便に感じるのは充電ポイントの有無よりも、充電はガソリンのように数分で満タンにはならない、という当たり前の事実だった。
これはテスラというよりもインフラの問題で、国が今後の動力エネルギーの主体を何に置くかによって大きく変わるだろう。ただ現時点でインフラの充実に時間を要するとすれば、EVの全体普及に影響が出ることは必至だ。
奥志賀高原での注目度は予想以上!
ちなみに奥志賀高原ホテルは1969年創業の歴史あるホテルで、バンケットルームの中央の暖炉とバーカウンターがシックでいい。あの小澤征爾氏による「森の音楽堂」を有し、名実ともに奥志賀の中心的存在だ。外国人の人気は絶大で、支配人からスタッフまで、大半が外国人。大げさではなく、自分がスイスの山荘にでも遊びに来たような錯覚を覚える。日本の中で海外旅行気分を味わうなら、絶対にオススメの場所!と太鼓判。
1969年からの歴史をもつ奥志賀高原ホテル
スタッフには外国人が当たり前のようにいて、館内ではいろんな言語が飛び交う
まさに山荘のような佇まいの館内。こうしたコーナー毎にクラシックで落ち着いた佇まいが伺える
ラウンジのバーカウンターからの景色はここが日本であることを忘れさせてくれる
ラウンジ中央の暖炉は奥志賀高原ホテルのトレードマーク。夜になると外国人宿泊客でいっぱいになります
訪れたのは3月中旬だったが、雪はまだ柔らかく、まだまだスキーが楽しめた。ただし例年よりも今年は雪が少ないらしく、ゴールデンウィークとなると事前確認が必要か。
標高2000mからの眺め。東京が初夏の陽気なのとは別世界
支配人のリチャードさん。日本語も堪能なアメリカンで、マウンテンバイクの元プロライダーという経歴の持ち主。実はマウンテンバイクの世界ではかなりの有名人
1969年からの歴史をもつ奥志賀高原ホテル
スタッフには外国人が当たり前のようにいて、館内ではいろんな言語が飛び交う
まさに山荘のような佇まいの館内。こうしたコーナー毎にクラシックで落ち着いた佇まいが伺える
ラウンジのバーカウンターからの景色はここが日本であることを忘れさせてくれる
ラウンジ中央の暖炉は奥志賀高原ホテルのトレードマーク。夜になると外国人宿泊客でいっぱいになります
訪れたのは3月中旬だったが、雪はまだ柔らかく、まだまだスキーが楽しめた。ただし例年よりも今年は雪が少ないらしく、ゴールデンウィークとなると事前確認が必要か。
標高2000mからの眺め。東京が初夏の陽気なのとは別世界
支配人のリチャードさん。日本語も堪能なアメリカンで、マウンテンバイクの元プロライダーという経歴の持ち主。実はマウンテンバイクの世界ではかなりの有名人
モーター駆動がもたらした意外な効能
あくまで推測に過ぎないが、エンジン音のストレスがないのがその要因ではないかと思われるが、はたしてどれだけエンジンサウンドが好きな自分とて、長時間のエンジン音は確かに疲労の一部になることを考えると、無音の状態での車内は彼女にとってはご主人との動く密室と思ってくれたのではないだろうか。
確かに、驚くほど掃除が楽!
テスラサイドからの提案とはいえ、一泊二日のロングドライブを終え、帰宅した時の車内は想像した通りの惨状。が、カーペットの素材が毛などが絡みにくいのか、クリーナーをかけ始めるとみるみる毛が吸い込まれ、取りきれなかった毛はローラーテープで簡単に回収できた。さらに、フラットな床面も清掃のしやすさを助けている。
(後日テスラ社に確認したところ、インテリアに動物性の素材を使わないという方針の上で素材選定を行ったところ、結果的にメインテナンス性に優れた素材となったそう)
億劫に思った車内清掃はものの20分ほどで完了。地味な話ながらもテスラの購入を考えている方にとっては有益な?情報なんじゃないだろうか。
なるほど!ファルコンウィングは「だからいい」
願わくば近年トレンドになっているようなタッチレスオープナーを採用されたい。さらに利便性は上がるはずだが…。
日常使いとしてのモデルXはどうか
編集部近くの駐車場で全幅2mを超える車両が駐車できる立体駐車場がないことがその大きな要因だが、さすがに東京駅〜銀座エリアで平置きの駐車場ともなると駐車料金がべらぼうに高いし、そもそも露天の駐車スペースにお借りしたクルマを停めたくない。結局僕にとっての“日常”を完全にともにすることはできなかった。
テスラの公式ホームページでは、すでに本国アメリカでモデル3の納車が始まったとある。モデルSよりコンパクトなそのサイズは、日本の道路事情や駐車スペースにむしろ最適のはずだ。
搭載されるモーターの出力、巡行距離、装備など詳細は公表されていないが、試乗車が日本に配備された折にはまたレポートしたい。
◆テスラモーターズジャパン
◆奥志賀高原ホテル
住所/長野県下高井郡山ノ内町奥志賀高原
TEL/0269-34-2039
URL/http://okushigakogen.com