躍動感を出すためにスピードを上げる必要はありません
「まず走りの撮影をする際のシャッタースピードですが、被写体となるクルマの速度とフォトグラファーの経験値、あとはドライバーさんの技量によっても違ってきます。
強調しておきたいのは、走りの撮影はチームワークがあってこそということ。絶対に無理せず、無事に終わらせることがいちばん大事なのです。適切なシャッタースピードで、ドライバーさんとの息が合っていれば、背景を流すためにスピードを上げる必要はありません。定点や並走など、どんな走りの撮影でも、すべて法定速度内で可能です」
では、ほかに撮影現場で心がけていることはあるのだろうか?
「現場は一期一会。基本的にワンチャンスで二度目はありません。だからこそ、走るクルマを撮るためには頭の中でのシミュレーションが欠かせません。日頃からクルマの撮影ができそうないい道や場所を探していて、見つけるとあのクルマが引き立ちそうとか、このクルマの雰囲気に合いそうといったことを考えています。つまり、具体的な撮影依頼がある前から、撮影の準備は始まっているんです」
広大な風景に小さくクルマを入れ込むことで日常感を出しました
真横アングルの走り写真は、ヌケと余白に意識しましょう
引っ張りや追っかけの撮影はチームワークが大事です
舞い上がる落ち葉でスピード感を表現しました
いいロケ場所のストックはフォトグラファーの財産です
朝日が差した一瞬のシャッターチャンスをとらえました
日の出時の光はその時々で異なるので要注意です
悪天候も撮り方によっては見方になります
ドライバーの技量があってこその作品です
高層ビル群の眩い光を背景にして非日常感を演出しました
乗り込み撮影時には前走車との距離に注意しましょう
夜撮時はボディに何を写し込めるかがポイントです
被写体とはミスマッチなロケーションで特別なイメージを演出しました
ボクスターの疾走感を斜め45度の理想的な半逆光で表現しました
● 柏田芳敬
18歳で北畠主税氏、清水勇治氏に師事し、21歳の時に独立。「Men's Precious」、「GQ JAPAN」、「SENCE」などの男性ファッション誌、「ENGINE」や「LE VOLANT」などの自動車雑誌のほか、広告や音楽関係の撮影も多数。
公式サイト/www.kashiwadayoshitaka.com
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