アメリカで最も古いオートショー
ニューヨークは、たしかに、クルマで大渋滞していることが多いけれど、ロサンゼルスのようにクルマの街というイメージは薄い。
見せるために乗るというより、ニューヨーカーは実用を重んじている感じだ。少なくとも日常的には、最新のセダンもSUVも、スーパースポーツカーもあまり見かけない。
ニューヨークは、では、クルマと相性がよくないのかというと、そんなことはない。いい例がこのニューヨーク国際オートショーだ。
このショーの原点をたどると1900年までさかのぼることができる。マディスンスクエアガーデンでオートモビルクラブ・オブ・アメリカが開催したアニュアル・オートモビルショー第1回が原点という。
「300SL」と「Eタイプ」がデビューしたショー
トヨタやダットサンは50年代からこのショーを重視。ホンダが「N600」で四輪車の米国デビューを行ったのもニューヨーク国際オートショーである。
メルセデス・ベンツは1954年にこのショーで、ガルウィングドアを備えた「300SL」を世界初公開した。ジャガーが1961年、「Eタイプ」の米国デビューの場に選んだのもニューヨーク国際オートショーだ。
大きな傾向はSUVとハイパフォーマンスカー
大きな傾向は、SUVとハイパフォーマンスカーだ。前者ではとりわけ、全長4.5mから4.7m程度の、いわゆるコンパクトSUVの新型が多く目についた。
なかでも特筆すべきはキャデラックのコンパクトSUV市場への参入だ。「XT4」という全長4.6mを切るSUVを発表して大いに話題をふりまいたのである。
「これまでに踏み出したことのないセグメントに参入します」。XT4の発表の場で、キャデラックのヨハン・ダ・ネイシン社長はそう語った。
次世代のラグジュアリーを体現したキャデラック「XT4」
ちなみにジェネレーションYは1980年代から1990年代生まれ。ジェネレーションZは生まれたときからコンピューターのある生活を送ってきた世代と定義されている。
ソーホー地区でXT4のお披露目が行われた際、キャデラックのデザインを統括するアンドリュー・スミス氏はそう語ってくれた。
日本勢のコンパクトSUVも勢揃い
ピュアエレクトリックのコンパクトSUVであるこのモデルは、米国の来場者にも大いに注目されていた。米国のEVといえばテスラだが、西海岸の代表をみずからもって任じているのか、今回のショーへの参加はなかった。
新型スバル・フォレスターは新開発の2.5リッター水平対向エンジンにシンメトリカルAWDの組み合わせ
アキュラの新型RDXはクロスオーバー的なキャラクターで2リッターエンジンに電子制御でコーナリン性能を高めたSW-AWDの組み合わせ
ジュネーブショーでお披露目されたレクサスのSUV、UXは全長4495mm、全高1520mmとコンパクトな2リッターエンジン車
新型スバル・フォレスターは新開発の2.5リッター水平対向エンジンにシンメトリカルAWDの組み合わせ
アキュラの新型RDXはクロスオーバー的なキャラクターで2リッターエンジンに電子制御でコーナリン性能を高めたSW-AWDの組み合わせ
ジュネーブショーでお披露目されたレクサスのSUV、UXは全長4495mm、全高1520mmとコンパクトな2リッターエンジン車
ニューヨークショーのもう一つの花形であるパフォーマンスカー
911GT3RSベースのセミレーシングを持ち込んだポルシェ
メルセデスAMGが手がける476psの「C63」と510psの「C63S」も同時発表。レース場にも持ち込めるダイナミックなシャシー性能を備えた後輪駆動であり人気が出そうだ。
華やかさと苦悩が背中合わせにあるラグジュアリーの世界
米国企業にとって今や中国は第二の巨大な市場だ。それだけに貿易戦争が起きるのは、メーカーとしては避けたい。新車を発表する幹部は誰も笑顔の後ろに悩みを隠していたかもしれない。
「中国市場の“おいしさ”を知ってしまったから後戻りはできないはず」。会場のジャーナリストからはこのような声も聞こえてきた。
とりわけラグジュアリーカーの世界は、このように華やかさと苦悩が背中合わせにある。まるで1920年代のニューヨークを舞台に書かれた「ザ・グレート・ギャツビー」のようだと思った。
● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト
慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。