これまでも何度かモデルチェンジがささやかれつつ、39年間作られてきたGクラスが、2018年ついにフルモデルチェンジした。
最大の眼目は、オンロードとオフロードともに性能アップしつつ、おもにデザイン面だがアイコン的な要素は残すというものだったと説明される。
ドライブトレーンでも“Gクラス的”なところはしっかり残している。前と後ろと中央に設けられたディファレンシャルギアのロック機構だ。荒れ地走行にとって必要不可欠な機構、とメルセデス・ベンツでは説明する。
四角いボディスタイルも継続で、丸型ヘッドランプ、フェンダーに搭載したウィンカー、プッシュボタン式ドアオウプナー、外型に飛び出したドアヒンジ、外付けスペアタイヤなども“アイコン”として残された。
まず発表されたのが、メルセデス・ベンツG550と、メルセデスAMGのG63だ。ともに3982ccのV型8気筒エンジン搭載。
G550は310kW(422ps)の最高出力と610Nm の最大トルクを発生する。いっぽうG63はそれぞれ430kW(585ps)、850Nmとなっている。
そもそもGクラスはメルセデス・ベンツのなかでも特別な存在。オーストリア・グラーツにある専用のラインで作られ、近くの山を利用したテストコースで開発されてきた。
今回南仏を試乗会の舞台に選んだのは、良好な天候だけが理由ではない。シャトー・ド・ラストゥールというワイナリーがあり、敷地内にダカールラリーを模したというオフロードコースが設けられているからだ。
ラリーの練習や、4WD車の走行テストでも使われているそうで、Gクラスも例外ではないとのこと。道の勾配は大きいうえに、岩場や砂利や泥など多くの条件を備えている。グラーツからここへ車両を運んでくることもあるとか。
G63も(ぎりぎりのところでG550にはかなわないとはいえ)信じられないぐらいのパフォーマンスを見せてくれた。
こちらのクルマには「トレイル」「サンド」「ロック」という路面に応じて選べるプリセットのオフロードドライビングプログラムがあり、いい仕事をしてくれる。
道なき道を進むというより、中東のように砂漠と一般道の境目がはっきりしないところでより効果を発揮してくれるだろう。
オフロードコースを出ると、細い田舎道と国道を混ぜた試乗コースが用意されていた。ここでは快適な乗り心地に、オフロードとは別の意味で驚かされた。
脚まわりの動きはしなやかで、従来のようにボディとシャシーが別べつに動くような本格的4WDの動きは感じられない。まるで高級セダンのような気分で乗っていられるのだ。
ステアリングホイールへの反応は速いし、アクセルペダルも軽めのうえ細かい調整が可能。細い道を飛ばす時は路肩ぎりぎりまで寄せられるし、高速ではロケットのようにぶっとんでいける。
アダプティブクルーズコントロールを使いながら高速で走っていると、Gクラスに乗っていることがにわかに信じられない気分である。
39年ぶりに変身したGクラス。クロスカントリー型4WDというカテゴリーにとどまらず、セダンのように汎用性の高い、超がつくほど強力な魅力をもった存在になった。
日本でもはやくも発売開始。価格は「G550」が1562万円、メルセデスAMGの「G63」が2035万円である。
G63は縦バーをもったパナメリカーナグリルと大型エアダムをもつ
歴史あるカルカッソンヌの城壁都市が試乗会のベースだった
従来の前後のトルク配分は50対50だったのが新型は40対60となった
大型液晶パネルとタービン型のエアベントなどはセダンと共通だが、3つのディフロックスイッチは変わらないGクラスならではのシンボル
ステアリングホイールのスポーク部分にインフォテイメントや運転支援システムのコントローラーがインストールされている
小柄なひとはキャビンに上がるのがやや大変かもしれないが、いちど腰を落ち着けたらじつに快適
G500は横バーグリルを持つ
キャビンのスタイル、ウィンドウグラフィクス、丸型ヘッドランプ、フェンダーマウントのウィンカー、プッシュボタン式のドアハンドルと、従来型の基本デザインを踏襲
G63は縦バーをもったパナメリカーナグリルと大型エアダムをもつ
歴史あるカルカッソンヌの城壁都市が試乗会のベースだった
従来の前後のトルク配分は50対50だったのが新型は40対60となった
大型液晶パネルとタービン型のエアベントなどはセダンと共通だが、3つのディフロックスイッチは変わらないGクラスならではのシンボル
ステアリングホイールのスポーク部分にインフォテイメントや運転支援システムのコントローラーがインストールされている
小柄なひとはキャビンに上がるのがやや大変かもしれないが、いちど腰を落ち着けたらじつに快適
G500は横バーグリルを持つ
キャビンのスタイル、ウィンドウグラフィクス、丸型ヘッドランプ、フェンダーマウントのウィンカー、プッシュボタン式のドアハンドルと、従来型の基本デザインを踏襲
● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト
慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。