スポーツカーといっても、そこに集まる車両は20世紀初頭から最新のフォーミュラ、オンロードからオフロードに至るまで多岐にわたり、しかもそれらが敷地(主催のリッチモンド公爵の所有する領地。江戸川区に相当する1万2000エーカー)内に設けられた各エリア(ヒルクライム、ラリーセクションなど)で実際に走って見せるのだから、すごい。
ほか会場には世界から集まった自動車メーカーの展示ブース、工具やミニカー、クラシック・カーのレストアショップなどのショップエリアも用意され、開催3日間で訪れる20万人が飽きることなく、スポーツ・カーとの時間を楽しむ工夫がなされている。
新たに搭載されたエアサスペンションの初期動作の良さ、アップデイトを重ねて格段にユーザビリティの向上したADAS(運転支援システム)などお伝えしたいトピックはあるが、(自動車専門メディアではない我々として)興味深かったのは、現在マセラティのチーフ・デザイナーを勤めるクラウス・ブッセが話してくれた、マセラティのエクステリアデザインの基本だった。
グランドツーリングとはヨーロッパのカーカルチャーの根底に流れる「国境を越えて走り、旅する」ことを指し、GTカーとはグランドツーリングのためのスポーツカーだ。マセラティはだから、『グラントゥーリズモ』しかり、『クワトロポルテ』、『ギブリ』しかり、そしてSUVカテゴリーに属するレヴァンテも「グランドツーリングを楽しむスポーツカー」とコミュニケーションしている。
美しいスポーツカーデザインの基本とされる、ロングノーズ&ショートデッキ。こと1950〜60年代のツーリングカーにはこのカーデザインの不文律に即した美しいクルマが多く見られるが、そのベストバランスとも言われるのが、1954年式のマセラティ『A6GCS/53ベルリネッタ』のサイドビューだ。