映画「007」シリーズが始まっていらい、ボンドカーと呼ばれるクルマは数多く世に出てきた。なかで最も有名な1台はというと、「ゴールドフィンガー」(1964年)の「アストンマーティンDB5」だろう。
機関銃、可変ナンバープレート、スピナー、ポップアップ式防弾装甲、煙幕、オイル散布装置、イジェクションシート、攻撃用バンパーガード、運転席下の武器、無線電話……。これらの装備にぼくたちは心躍らされた。公道で使われたら迷惑なものも多いが。
そのアイディアあふれる「ゴールドフィンガーDB5」を、アストンマーティンみずからが生産すると発表した。これをコンティニュエーション(継続生産)と呼ぶ。
アストンマーティンでは「(映画に登場した)オリジナルに可能なかぎり忠実に」としている。回転式ナンバープレートなどが例として挙げられていた。現実的に考えると、装備が簡略された「サンダーボール作戦」(1965年)でのDB5のほうが向いているかもしれない。
アストンマーティンでは2016年にも「DB4GT」(1959年)のコンティニュエーションを生産することを発表している。サーキット専用モデルとして25台の限定生産とされていた。
DB5は1963年に発表された。DB4GTのアップデート版だ。3連のSUキャブレター装備の3995cc直列6気筒エンジン(282英馬力)を搭載。新開発の5段マニュアル変速機やガーリングのディスクブレーキも採用されていた。
「できるかぎりオリジナルに忠実に。ただし改良すべきところは改良します」。とプレスリリースでは謳われる。
生産台数は25台限定だそうだ。
DB4GTのデリバリーは18年第3四半期といわれていたので、そのあと、同じニューポートパグネルにあるアストンマーティンの工場でDB5も生産されるのだろう。
価格は驚きの275万英ポンド(+税)。1ポンド140円として約3億8500万円となる。究極の”ボーイズ・トイ(男の子のオモチャ)”といえる。
コンティニュエーションは、じつは、そう珍しい話ではない。もっとも有名なのは米国のスポーツカー、コブラである。コブラは1960年代のはじめ、米国人のキャロル・シェルビーが、英国のAC製のスポーツカーをベースにフォード製のV8を載せ製作したスポーツカーだ。レースでも速く、アイコン的な人気がいまもって衰えていない。
シェルビーじしんは2012年に他界しているが、シェルビー・アメリカンは、コブラだけでも「CSX4000および6000(427S/C)」「CSX7000(289FIA)」そして「CSX8000(289ロードスター)」と製造しているのだ。観ているだけで欲しくなる。
ジャガー・ランドローバーもコンティニュエーションに熱心だ。皮切りは、2014年9月に発表された「Eタイプ・ライトウェイト」だ。レーシングカー、Dタイプ用の直列6気筒エンジンを軽量ボディのスペシャルEタイプに載せたのがこのプロジェクト。
2016年には「ジャガーXKSS」を同様に再生産することが発表された。このモデルは、1954年から1956年にかけてルマン24時間レース優勝の「ジャガーDタイプ」の公道仕様として製造開始された。
1957年に、しかし、工場の火災により、9台が焼失し、それ以降は生産が再開されることなく、結果として世に出たのは16台にとどまった。今回ジャガーでは保管していた図面で出来るだけオリジナルに忠実に製造することをめざすとしている。
ジャガーはさらに歩を進めている。2018年2月には、レーシングカー「Dタイプ」の製造再開を発表した。このモデルは1955年に100台製造される予定だったが、完成したのは75台。ジャガー・クラシックは、当時の設計を忠実に再現し、残りの25台をコンティニュエーション製造するのだそうだ。
僕だったら……シトロエンDS(1955年)とか同SM(1970年)、BMW2002(1968年)などに乗ってみたい。ランボルギーニ・エスパーダ(1968年)もよさそうだ。アルファロメオ33ストラダーレ(1969年)はどうだろう、と夢が広がるのであった。
「ゴールドフィンガー」におけるジェイムズ・ボンド役のショーン・コネリーとアストンマーティンDB5
DB5コンティニュエーションの車体色はボンドムービーと同じシルバーバーチとなる
シェルビー・コブラ427
ジャガーEタイプ・ライトウェイト
ジャガーEタイプ・ライトウェイト
こちらは「E-TYPE REBORN」としてジャガーが完全レストアして販売すると発表した10台限定のシリーズ1
「E-TYPE REBORN」の価格は28万5000ポンド(約3933万円)からという
ジャガーXKSSは当時と同じシャシーを作りトリプルカーブレターを装着した3.4リッター直列6気筒エンジンを載せマグネシウム合金のボディを被せる
ジャガーDタイプはショートノーズとロングノーズという2つボディタイプが用意されると本格的
「ゴールドフィンガー」におけるジェイムズ・ボンド役のショーン・コネリーとアストンマーティンDB5
DB5コンティニュエーションの車体色はボンドムービーと同じシルバーバーチとなる
シェルビー・コブラ427
ジャガーEタイプ・ライトウェイト
ジャガーEタイプ・ライトウェイト
こちらは「E-TYPE REBORN」としてジャガーが完全レストアして販売すると発表した10台限定のシリーズ1
「E-TYPE REBORN」の価格は28万5000ポンド(約3933万円)からという
ジャガーXKSSは当時と同じシャシーを作りトリプルカーブレターを装着した3.4リッター直列6気筒エンジンを載せマグネシウム合金のボディを被せる
ジャガーDタイプはショートノーズとロングノーズという2つボディタイプが用意されると本格的
● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト
慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。