2018.09.16
歴代フェラーリも集結。クルマ好きが憧れるペブルビーチ
クルマの美を競うコンクールがある。そこでは博物館級の名車が集い、実際に走行し、お披露目される。クルマ好きなら一度は行くべき、イベントのなかでも有名なペブルビーチをジャーナリスト小川フミオがリポートする。
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文/小川フミオ
2018年のモンタレー・カーウィークは8月18日に始まり26日まで続いた。このとき一帯では大小さまざまなクルマ関係のイベントが開催される。
なかでも国際的に知られているのは、サーキットを走る「ロレックス・モンタレー・モータースポーツ・リユニオン」、高級ホテルのザ・ペニンシュラホテルズを運営する香港上海ホテルズ社が全面的にバックアップする「ザ・クエイル、ア・モータースポーツ・リユニオン」それに「コンコルソ・イタリアーノ」だ。
ペブルビーチのコンコースでは出品車が多岐にわたり、2018年は映画にもなった「タッカー48」(1年かけてわずか51台を生産し倒産した米国の会社によるスポーティな4ドア車)というユニークなカテゴリーもあった。ただし舞台装置も優雅なペブルビーチでは戦前の高級車が選ばれることが多い。
写真でしか見たことのなかったクルマのエンジン音、排ガスの臭い、さらに動く姿など眼の前で楽しむことができる。めったにない機会である。
ペブルビーチの欧州版ともいえるイタリア・コモ湖畔の「ビラデステ・コンコルソ・デレガンツァ」では審査基準の一つが、砂利道の上を走るときの音だと聞いたことがある。ジャリジャリジャリと文字で書くとあっけないが、車重やタイヤによって音が微妙に違う。審査員はそれを聞き分けてエレガンスさを評価するのだとか。
毎年5月にはモナコでヒストリックグランプリが開催される。同地の有名な市街地コースをかつて走ったレーシングマシンが勢揃いするイベントだ。ブガッティ35といった宝石なみに貴重なクルマも出走するが、そういうときは精巧なレプリカが使われる。
おもしろいのは、レプリカに乗る権利を持つのは本物のオーナーだけということだ。社交界では誰がどんなクルマに乗っているかみな知っているので、その場で詮索したりしない。パーティのときにわざと模造品のアクセサリーをつけるのと同じだろう。
ここにもびっくりするほど貴重なクルマが出てきて、なかにはイタリアやフランスの小さなスポーツカーもあったりするので、クルマ好きは飽きない。また、戦前の高級セダンは運転手席(運転席ではない)はレザーシートで、オーナーが座る後席はシルクやモケット張りだが、それを実際に見ることができたりするのも、きっとかなりおもしろいだろう。
日本だと昔のクルマはだいたい車体がコンパクトで、エンジンは小さくて、豪華とか優雅という言葉が似合うものはない。それに対して欧米は正反対。1930年代や40年代のクルマはいまではお目にかかれないような贅沢さがある。日本なら手工芸の世界と似ているかもしれない。
第68回を迎えたベブルビーチのコンコースデレガンス会場に並べられた歴代フェラーリ
「ペブルビーチ・コンコースデレガンス」で「ベスト・オブ・ショー」の栄冠を勝ち取った1937年のアルファロメオ8C2900Bツーリング・ベルリネッタ
アルファロメオ8C2900Bツーリング・ベルリネッタは「スピード、スタイル、それにセックスアピールというすべてを備えている」(審査員)とされた
1970年にピニンファリーナが手がけたコンセプトモデル、フェラーリ512Sモデューロも走った
展示の芝の上に入場するクルマを見学するドーンパトロールの風景
今回特別にカテゴリーが設けられたタッカー48
BMWの新型Z4ロードスターのような新車もお披露目された
コンコースの前にペブルビーチの海岸線を出展車が入る「ツアー・デレガンス」も目玉イベントの一つ
こんな美しいクルマがあるんだと感心させられた1937年のキャデラック90ハートマン・カブリオレは最もエレガントなカブリオレとして受賞
第68回を迎えたベブルビーチのコンコースデレガンス会場に並べられた歴代フェラーリ
「ペブルビーチ・コンコースデレガンス」で「ベスト・オブ・ショー」の栄冠を勝ち取った1937年のアルファロメオ8C2900Bツーリング・ベルリネッタ
アルファロメオ8C2900Bツーリング・ベルリネッタは「スピード、スタイル、それにセックスアピールというすべてを備えている」(審査員)とされた
1970年にピニンファリーナが手がけたコンセプトモデル、フェラーリ512Sモデューロも走った
展示の芝の上に入場するクルマを見学するドーンパトロールの風景
今回特別にカテゴリーが設けられたタッカー48
BMWの新型Z4ロードスターのような新車もお披露目された
コンコースの前にペブルビーチの海岸線を出展車が入る「ツアー・デレガンス」も目玉イベントの一つ
こんな美しいクルマがあるんだと感心させられた1937年のキャデラック90ハートマン・カブリオレは最もエレガントなカブリオレとして受賞
● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト
慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。