2018.09.28
私的L.A.の過ごし方
ロサンゼルスは筆者のお気に入りの場所のひとつ。例えば、5日間の休暇はどんな風に過ごすのか、今回は岡崎流L.A.滞在メモをご紹介しよう。
- CREDIT :
文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト) イラスト/溝呂木 陽
で、われわれがL.A.でどんな休暇を過ごすのか。今回はある時の旅程を思い出しながら、メモ的な刻みでご紹介してみたい。
さっそく1日目のメモを開こう。
午前中にL.A.到着。レンタカーをピックアップして、405号線でサンタモニカへ。
サンタモニカ・ピアに近い海辺のホテルにチェックイン。まずは、ルームサービスでコーヒーと軽食をオーダーする。そして、海とピアを目の前にする部屋のテラスでグダグダと時を過ごす。眠くなったらひと眠り。
部屋で日没を見てから、3rdストリートへ。大した店もないこじんまりしたショッピング・ストリートだが、居心地はいい。夜の治安もOK。ブラブラするにはうってつけだ。
ディナーも3rdストリートのレストランで軽く済ませる。歩道に突きだしたテラス席のあるレストランで、道行く人々を眺めながら。
朝食を終えると、親しい友人の住む街であり、大好きな街でもあるニューポートビーチを目指す。通勤ラッシュを終えた405は快適に流れ、1時間ほどで着く。FMを聴きながら。
海を埋めるほどのヨットを目の前にしたハーバーのテラス・レストランでランチしてから友人宅へ。奥様への小さな花束を買って。
僕も家内も英語は苦手なので話は弾まないはずなのだが、いつも心地よく時間は過ぎ、笑いは絶えない。そんなことで、ディナーを共にしてニューポートビーチを出るのはけっこう遅い時間になる。
ホテルに着くのは夜中少し前頃。シャワーを浴びて、ルームサービスのコーヒーを飲みながら一日の最後を締め括る。
3日目。高い崖の上から広大な太平洋を見下ろすランチョ・パロスベルデスの絶景ポイントへ。絶景なのにいつ行っても誰もいない。ここは、「われわれだけの秘密の場所」、そんな気分になる。
家内は高所恐怖症だが、不思議にここは平気。安全柵などまったくないのに、崖の端ギリギリに立って海を眺めている。絶景の魅力が怖さを打ち消しているのだろう。
太平洋を独り占めしたような気分を味わった後、近くのスターバックスへ。これまた、太平洋が眼前に迫る特別な立地にある。
その後、レドンドビーチ、マンハッタンビーチ、ハモサビーチ辺りで、まったりと時を過ごす。そうとうまったりと。気に入ったカフェで人を眺めながら、他愛ない話で時を過ごす。これは私と家内の特技のひとつだ。
夕方サンタモニカに戻り、ホテルでひと休みしてから3rdストリートへ。歩道の屋台がけっこう面白い。着色料をふんだんに使ったカラフルな菓子や飴、けっこうアート的なブリキ細工……ま、くだらないものが多いのだが、それがまた楽しい。
スマートカジュアル・レベルの身繕いをして、ピア直近のロブスターハウスでディナー。高級店で明らかに客層はいい。料理も美味しいし、なによりていねいでフレンドリーなサービスが心地よい。
ロデオドライブ界隈を散歩。店を見るのは大好きだが、まず買い物はしない。一往復した辺りでテーブルが数卓しかない小さなカフェに陣取り、通り過ぎる人やクルマを眺める。
小さなカフェとは、ロデオドライブに面した「ラックス・ロデオドライブ・ホテル」の玄関口にある。
ランチは、ロデオドライブから2ブロックくらいのところにあるお気に入りのイタリアン・レストラン。天気のいい日のテラス席は気持ちがいい。このレストランの前も、次から次へと贅沢なクルマたちが通り過ぎる。
ランチが終わるとロバートソン通りへ。ハリウッドセレブ御用達の店が多いとは聞くが、僕は一度もセレブに出会ったことがない。でも、全体に店はこじんまりしていて、フレンドリーで、商品もいまどきなものが多い。
次はメルローズ・アベニュー。ここはパンクやヒップホップ系の個性的な店が多い。それと古着屋や雑貨屋なども面白い。
ショッピング街のハシゴというわけだが、それぞれが強い個性をもっていて、楽しめる。
ハイライトは、ステープルズセンターでのNBA観戦。人気のロサンゼルス・レイカーズとマイアミ・ヒーツの一戦で、チケットはかなり入手困難だから、事前にゲットしておくといい。
ステープルズセンターは2万人ほど収容できるというが、超のつく満席。観客の熱気は凄い。ドームの中で渦巻く歓声が否応なくNBAド素人の僕たちをも熱気の中に引きずり込む。試合が終わるとぐったりするほどだ。
ステープルズセンターに入るとき、通路で、コービー・ブライアントの姿を見かけた。20mくらいしか離れていなかった。すごく得をしたような気持ちになった。
滞在最終日はL.A.のビバリーヒルズ・ホテル泊。これがいつものパターンだ。この、通称ピンクパレスは、ホテルそのものの雰囲気も、贅沢な邸宅街の中にあるという立地も、そしてなにより、スタッフの明るい対応が好きだ。
チェックインして、まず向かうのはプールサイド。デッキチェアで身体を伸ばして日光浴。ウツラウツラしたりしながら、南カリフォルニアの空と空気と太陽を楽しむ。
シャワーを浴びてから向かうのはサンセットプラザ。大きくはないが洗練された店があり、気の利いたカフェもある。
ビバリーヒルズやハリウッドが近いせいか、カッコいい人たちがカッコいいクルマに乗ってサンセット大通りを往き来する。
カフェからそれを眺めているのが楽しい。
ロールス・ロイスやフェラーリやポルシェが、無造作に駐車してあるあたりもうれしい眺めだ。
最後の夜のディナーはホテルで。美しい庭に面したレストラン、ポロ・ラウンジは、食事も美味しいし、スタッフは明るく親切。堅苦しさがまったくないのが好きだ。
こうして、1週間の休暇は終わる。
1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。