アウディらしい技術が結集された高級セダン
2018年9月に日本発売が開始された新型「アウディA8」は、アウディのラインナップの頂点に位置づけられるモデルだ。1988年の「アウディV8」で高級車を手がけるようになったアウディは、アルミニウムを多用した軽量ボディと、パワフルなエンジンと、クワトロシステムによる走行性などで、めきめきと頭角を現していった。
日本には、3リッターV6の「A8 55 TFSI quattro」と、4リッターV8の「A8 60 TFSI quattro」それにロングホイールベースの後席重視型である「A8L 60 TFSI quattro」が導入される。
標準モデルでも5メートルを超え、張りのある面による堂々たるボディはかなり強い存在感を持つ。しかも室内の作りのよさは、アウディ好きにはたまらない魅力だろう。
3つのモデルはそれぞれはっきりしたキャラクターを持っている。結論的に私が気に入ったモデルをあげると、パワフルなエンジンを搭載したA8 60 TFSI quattroだ。
車名に入る「60」とは排気量とパワーを鑑みた数字である。メルセデス・ベンツやBMWと同様、たんに排気量の大小でクルマの価値を表せなくなった昨今のトレンドに沿ったもの、とアウディでは説明している。
ひとことでいうと、とにかく速いクルマだ。速いのだが、同時に足まわりはしなやかで、サスペンションはよく動き、快適性が高い。ステアリングフィールはスポーティすぎず、かといって車両の操舵への応答性が悪いということもない。たいへんバランスのいい出来なのだ。
1800rpmから最大トルクを発生しはじめるエンジンは、全長5170ミリもあり車重2110キロの車体をなんのハンデともしない。小型スポーツセダンを操縦しているようにダイレクト感の強い操縦感覚は、軽快とさえいえるものだ。
アクセルペダルの踏み込み量に対する加速性はよく、わずかに足の力を強めるだけでも、前にとびかかるようにいっきに速度をあげる。高速での走行安定性に加え、あり余るぐらいのトルクを吸収するための総輪駆動システムは、このクルマにぴったりだろう。
ホイールベースは3000ミリもあるので後席は広い。また、「オールホイールステアリングシステム」という後輪を電子制御で操舵するシステムもA8ではオプションで選ぶことが出来る。
速度でいうと時速60キロぐらいを境にして、低速域では前輪の操舵角と逆位相(ステアリングホイールを切るのと反対の角度)に後輪は動く。いっぽう高速では前後輪が同じ方向に動くため、仮想上のホイールべースは長くなり安定性がさらに向上する。
試乗した軽井沢の山道のタイトなカーブではこの後輪操舵システムによる恩恵は如実だった。大きなA8が小さなセダンのように軽々しい身のこなしを見せるのは、後輪操舵によりショートホイールベース効果が出ていたからなのだ。
アウディによると後輪操舵システムを可能にしているのは、エクストラで搭載している48ボルトバッテリーのおかげという。オールホイールステアリングシステムに加え、エンジンの休止および再スタートの領域を拡大する効果ももたらされている。
ちなみにこの48ボルトシステムを利用する技術として「AIアクティブサスペンション」がある。レーザースキャナーとカメラセンサーを用いる技術だ。路面の凹凸を先読みし、サスペンションストロークを電子制御する技術である。A8では2019年以降のモデルから搭載されるという。
4リッターでなくても、250kW(340ps)と500Nmの2994ccV型6気筒搭載の「A8 55 TFSI quattro」も美点が多い。とりわけノーズが軽いことだ。そのため、とくに下りのカーブをこなしていくような道では、4リッターよりも楽しいといえる。
それはインテリアも同様だ。快適性を追究した「コンフォートパッケージ」(「60」のオプション)では重厚な雰囲気のレザーシートなどが用意される。いっぽう、「スポーツパッケージ」の「コンフォートスポーツシート」はバケットタイプのスポーティなデザインが好ましい。どちらもA8の持つキャラクターを別の方面から表現しているのだ。
安全運転支援システムも、アウディはこの分野のパイオニアだけあって、充実している。車両の周囲をカメラやセンサーでつねにモニタリングしていて、衝突を未然に防ぐようブレーキへの介入や、ステアリングシステムへの介入も行われる。
ちなみにA8が発表されたとき、”レベル3(すべての運転操作を車両が自動で行う)の自動運転ができる”と話題になったが、「このクルマでは行いません」と、いまアウディでは強調している。結局、時期尚早と結論づけたということだろう。
価格は「A8 55 TFSIクワトロ」で1140万円、「A8 60 TFSIクワトロ」で1510万円、そして「A8L 60 TFSIクワトロ」で1640万円となっている。
新型は薄型ヘッドライトに新意匠の多角形グリルの採用でシャープな印象が強くなった
リアはクロームのトリムによって新しさがことさら強く印象づけられる
標準ボディは全長5170ミリ、全幅1945ミリ、全高1470ミリと余裕あるサイズ
けっこうスポーティな雰囲気のコクピット
MMIタッチレスポンスという新世代のタッチスクリーン式インフォテイメントシステムは10.1インチのアッパー、8.6インチのロワーで構成されている
アイコンを押すようにして操作する(バイブレーションのレスポンスがある)この操作感も任意で変えられる。
マップの下ロワースクリーンの上部に見られるようによく使う機能をアイコン化してスクリーンに置いておける
「インディビデュアル電動シート」(3名がけ)仕様
インディビデュアル電動シートではセンターアームレストに各種コントロールが仕込まれている
インディビデュアル電動シートのセンターアームレストには5.7インチの「リアシートリモート」が組み込まれている
インディビデュアル電動シートの「リアシートリモート」は取り外し可能で、インテリアライト、シートヒーター、シートベンチレーション、エアコン温度調節、マッサージ機能、サンブラインド操作などを行える
オプションでレザーライトタイプのヘッドライトを選べる
足下もヘッドルームも広々としていてもてなし感ばつぐん
オプションのスポーツシート
クロスステッチがほどこされたスポーツシート仕様
トランクルームの容量は505リッターとたっぷりしている
フロントマスクと側面下部のクロームづかいが美しい
新型は薄型ヘッドライトに新意匠の多角形グリルの採用でシャープな印象が強くなった
リアはクロームのトリムによって新しさがことさら強く印象づけられる
標準ボディは全長5170ミリ、全幅1945ミリ、全高1470ミリと余裕あるサイズ
けっこうスポーティな雰囲気のコクピット
MMIタッチレスポンスという新世代のタッチスクリーン式インフォテイメントシステムは10.1インチのアッパー、8.6インチのロワーで構成されている
アイコンを押すようにして操作する(バイブレーションのレスポンスがある)この操作感も任意で変えられる。
マップの下ロワースクリーンの上部に見られるようによく使う機能をアイコン化してスクリーンに置いておける
「インディビデュアル電動シート」(3名がけ)仕様
インディビデュアル電動シートではセンターアームレストに各種コントロールが仕込まれている
インディビデュアル電動シートのセンターアームレストには5.7インチの「リアシートリモート」が組み込まれている
インディビデュアル電動シートの「リアシートリモート」は取り外し可能で、インテリアライト、シートヒーター、シートベンチレーション、エアコン温度調節、マッサージ機能、サンブラインド操作などを行える
オプションでレザーライトタイプのヘッドライトを選べる
足下もヘッドルームも広々としていてもてなし感ばつぐん
オプションのスポーツシート
クロスステッチがほどこされたスポーツシート仕様
トランクルームの容量は505リッターとたっぷりしている
フロントマスクと側面下部のクロームづかいが美しい
● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト
慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。