2018.12.14
クリスマスシーズン、欧州の旅のススメ
岡崎家の旅は基本的に1ヶ所定着型。行き先も街もホテルも毎回同じだそう。ヨーロッパのクリスマスは、日本とは風情を異にする。今回は、岡崎流クリスマスシーズンの旅の楽しみ方をお話ししよう。
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文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト) イラスト/溝呂木 陽
恒例化してから、もう20年ほど経つ。それ以前も年に1度は家内と海外の旅をしていたが、季節は様々だった。アメリカ、欧州、オーストラリアを数千キロクルマで走る旅もした。でもこれは例外。
わが家の旅は基本的には、行く先も、街も、ホテルも毎回同じと決まっている。例えば、LAならビバリーヒルズ・ホテル、ミラノならパークハイアット、ウィーンならホテル・ザッハー、ミュンヘンならバイエリッシャー・ホフ、ハワイならモアナ・サーフライダー…。この他にも、ロンドン、パリ、サンタモニカ、サンフランシスコ、といった街がわが家のお気に入りだが、当然ホテルも決まっている。ホテルを変えず、あちこち動かず、動いてもタクシーや地下鉄で簡単に動ける範囲がほとんど。こういう1ヶ所定着型の怠惰な旅が恒例化したのは50才を超えた頃からだ。
ちなみに、バスや地下鉄はよく使う。タクシーで動けば簡単なのに、公共交通を使う。なぜ?答えは「楽しい」からだ。公共交通は、当然様々な人たちと乗り合わせるが、その人たちのあれこれを見ているのが楽しい。家内も僕も人間観察が好き、とは以前にも書いたが、大勢が乗り合わせる地下鉄は絶好の観察場所のひとつだ。とくに、多くの人種が混在するパリやロンドンの地下鉄は楽しい。あれやこれや、想像の枠を奥行きを、どんどん膨らませてくれる。パリの地下鉄といえば、一つ一つの駅の装いが個性を競っている感があるが、粋な、お洒落な装いの駅を見るのは楽しみのひとつだ。
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そこで多くが敬遠する冬を選ぶのだが、冬ならいつでもいいというわけでもない。旅行客が去ると街は静かになるが、ただ活気のない街は楽しくない。そこで狙い目なのが、クリスマスシーズンに突入しようと街全体が俄かにそわそわし始める11月下旬だ。
街はクリスマス・イルミネーションで輝き、多くの店は、ショーウィンドゥも店内もクリスマスムード一色になる。その時期になると、街には大勢の人が繰り出してくる。楽しげな人たちが目立って多くなる。そうなれば、旅人の僕たちだってウキウキした気分になる。クリスマス・マーケットも楽しい。パリのマーケット、ロンドンのマーケット、ウィーンのマーケット、ミュンヘンのマーケット…どこもみんな楽しい。
僕も家内もクリスマス・マーケットでなにか買った記憶はないし、買いたいものにもまず出会わない。でも、見ているだけで楽しい。(ちなみに、ホットドッグとかクレープとか、ホットティ、とかはよく買う。それで、ランチやディナーの変わりにしてしまうこともある。気軽だし、けっこう美味しいし。お気に入りだ。)
ウィーンでのことだが、イブの日、ランチの後にホテルの部屋で一休みした。夕方になってイブの賑わいを楽しもうと思って外に出たら、なんと人っ子一人いないじゃないか! もはやそれは閑散というより、深閑としているという表現が合うほどに。イブといえば賑やかで騒がしい日本のイブのイメージをウィーンにも重ねていたので、これには驚いた。欧州のイブはみんな家に帰って、家族で静かに過ごすものだと初めて知った。
今年も12月17日から、クリスマス休暇をウィーンで過ごす。ウィーンのクリスマスシーズンも人出は多い。街もイルミネーションで華やぐ。でも、穏やかな雰囲気が崩れないのはウィーンらしい。いつも通り、コンサートを、シュテファン寺院のミサを、クリスマスマーケットを、ザッハトルテを、楽しんでくるつもりだ。
1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。