2019.03.02
コーヒー アンド シガレッツ
いまは喫煙者にとっては厳しい時代です。街中はもちろんお店でもほとんど吸えるところはありません。そんななかいまもコーヒー アンド シガレッツできる昭和な喫茶店をご紹介いたします。
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文/高橋 大(LEON.JP)
先日、生まれて初めての骨折をしてしまい、病院に通っています。
当然ですが病院内は完全禁煙で、街にでたところで吸えるところはないのです。
そこで、ふと昔よく通った喫茶店を思い出し、向かいました。
お茶の水にある珈琲 穂高という老舗で、若い頃よく友人とだらだらとたむろしていたところです。
その風景でいちばん記憶にのこっているのが、ドアをあけると数メートル先が霞むほどのもうもうとした紫煙。
けむりが目にしみるという歌詞がありますが、あそこにはいると本当にそうなんだと分かります。
喫煙者じゃないひとは絶対に入りたくない場所でしょう。喫煙者もじつはあんまり入りたくはないんです。
お酒は美味しい水で出来てますが、たばこは美味しい空気でおいしくなるのです。
と、そういうハナシをすると吸わないひとには怪訝そうにされますが。
さて、その穂高に着き、ドアに手をかけようとした瞬間、目に飛び込んできた一枚の貼り紙。
店内完全禁煙。
いつのまにか、吸えなくなっていたのです。
とくに驚きませんでした、時代です。
すぐに別の喫茶店を思い出していました、そこから数メートルのところにもう一軒あったなと。
サロンドカフェいしい。
名前からも分かるとおり、こちらは少しハイソなイメージだったので学生時代はあまり使っていませんでした。
お値段もすこし高め。でも、大人にとってはむしろこちらの方が良かったな、と気づき向かいました。
ハイソといってもいまや昭和な感じで、むしろ懐かしさを感じるスタイルです。
珈琲とサンドウィッチをいただきながら、ようやくたばこに火をつけられました。
コーヒー&シガレッツというジャームッシュの映画がありました。
そのなかで、イギーポップとトムウェイツが
「たばこなんてもうやめたよ」「うんあんなもんいらないね」
そのふたりの間には置き忘れられたたばこがある。
それをちらちら見ていたふたりはおもむろに吸い出す。で、
「やめているから堂々と吸えるな」「うん、旨いな」
どうでもいいシーンなんですけどね。ふと思い出しました。
帰りにいしいのマダムに聞けば、数年前に穂高のマスターは体調を崩し、店のたばこが良くないと医者にいわれて完全禁煙にしたそう。
店主の個人的な理由での禁煙にはまったくもって素直に納得できます。