なにを言っておるのか、もう12月だろというご指摘、ごもっともなのですが、11月に出かけました美食イベントがあまりに、日本の秋を代表するような美味にあふれておりましたので、振り返ってレポートさせてください。
酒造りの神さまとあがめられる農口尚彦杜氏が率いる酒蔵です。
こちらの酒蔵では昨年より、小松市産の地元食材を使用して「美食のまち」としての小松市の魅力を発信し、世界中の美食家の「旅のデスティネーション」となることを目標としたプロジェクト「小松SAKETRONOMY(サケトロノミー)」をスタートさせています。
小松SAKETRONOMY(石川県・小松市)
春には青々とした新緑を、夏には黄金色に頭を垂れる稲穂を、秋には樹々が色づく紅葉を、冬には雪景色を、それぞれ眺めながら、その土地から生まれた美酒・美味をいただけるなんて、なんとぜいたくなことでしょう。
のっけから、年間5500本しか生産されないというすごいお酒が登場しました。合わせた粕汁には2019年の大吟醸を搾った際の酒粕を使用。能登産の土の香り高いゴボウに、辛子がほどよく効き、身体がふわりとあたたまりました。
このプレゼンテーションにみな笑顔になったペアリング。44度でお燗した酒と、米粉をベースにした酒まんじゅうのふわりと漂う香気といったら! 中にはこっくりとした豚味噌餡が入っていました。
この時期の石川県に来たら……蟹が楽しみです。大きな蟹肉の上に乗せられたのは、なんとナマコの卵巣のシャーベット。強烈な旨味の爆弾に酒のピッチがあがります。
昆布じめにした甘鯛をもちろん「農口尚彦研究所」の酒で酒蒸しに。それだけで贅沢ですが、さらには能登産の松茸がゴロゴロ……。
さらには旬の鰤を目の前で藁で炙り、スモーキーな香りをまとわせた一皿。上の青い芽はタマネギの若芽だそうです。
これまた旬の雲子(鱈の白子)にこっくりとした味噌だれをかけて焼いた柚庵焼きはシルキーな食感。ぬるめにお燗した愛山がよくあいました。
干したゼンマイを油揚げで巻いて出汁で炊いた、一見地味な料理。でも深い滋味にあふれていて、この日いただいた料理のなかでもとくに好きな一皿でした。
米粉をつけてカリっと揚げたマナガツオの下にはゆり根のピューレ。YAMAHAI MIYAMANISHIKI 無濾過生原酒 2018は、ANAの機内にも搭載されているお酒だそう。
ここにきて大吟醸! 上品な酸味が、このトロリとした卵の黄身、鶏そぼろの旨味を引き立てました。この卵黄は大吟醸を加えてイクラを仕込んだタレに3時間漬け込んだものだとか。もう泣きたいほど美味。
◆農口尚彦研究所
住所/石川県小松市観音下町ワ1番地1
HP/https://noguchi-naohiko.co.jp/