2018.01.20
日本映画を観て男と女の面妖な関係を学ぶ/『サニー/32』『素敵なダイナマイトスキャンダル』
映画とは男と女の関係を学ぶ教科書。話題の新作映画2本を観て一筋縄ではいかない愛の形について考えてみました。
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文/森本 泉(LEON.JP)
昔から映画ってデートの定番ですけど、あれってどうなんでしょう? 個人的には隣の彼女が気になって映画の中身が頭に入ってきません(高校生か!?)。
「映画は女と行くところではなく女について学び“男と女”の関係について考えるために行くところ。だからひとりで行きなさい」。そう教えてくれたのは大学のフランス語の先生でした。
というわけで、その教えを守って、日本映画を2本、ひとりで見てきました(試写会ですが)。
NGT48北原里英を拉致監禁。そこにどんな愛があるのか?
北原が演じるのは、小学校時代に級友をカッターで殺害した元殺人犯“サニー”こと赤理。罪を償って、今は中学教師として働いています。けれど彼女の生活は熱心なファンたちによって監視され、ネットに晒されています。そして、ある日、ファンと思しき二人組の男に拉致監禁されてしまうのです。その犯人が柏原(ピエール)と小田(リリー)。最強にして最凶、日野の2トン以上にヤバいコンビです! そこから話は想定外の事件が連続で想像もしない方へスピーディに転がり続けていく……という映画なのですが。
でも、いくつかのエピソードを連ねるなかで、その関係性は逆転して、ある時点から柏原(ピエール)は赤理(北原)を守り、彼女のために戦う男になっていきます。騎士が姫を守るように、男は女に仕えることで自らの安心と居場所を得るのです。この転換、すごいなと思いました。ピエールカッコいい!
伝説のエロ雑誌編集長の“まき散らす愛”のすごさとは?
70年代当時のエロは紙しかありません。みんな女性の裸が見たくて雑誌を買いました。末井さんのつくる雑誌ではアラーキーこと荒木経惟氏の際どいヌード写真が毎号楽しめたのです。当時は皆が1枚の写真に万感の思いを込めて妄想を膨らませた良き時代でした。性器が見えた見えないを巡って日々、警察と攻防を繰り広げていた、編集者末井さんの愛と青春(性春?)の物語は、今となってはおとぎ話のようでもあります。
なんか、末井さん(柄本)は愛を惜しまないんですね。効率とか一切考えない。来るものは拒まず去る者は追いかける。愚直に自分の本能のまま四方に愛をまき散らして生きていく。何か胸を打つものがありますね。これはもうお釈迦様じゃないかと思うくらい。
つまりふたりの男性は、はからずもまったく違う形で女性を愛していく。愛は一筋縄ではいかない。これも愛。それも愛。果たしてお前はどんな風に女を愛していくのか? そう突きつけられるような2本の映画なのですね。
え、そんな観方をする人はいない? ですよね~。でも、2本ともどう見ても楽しめる映画なのでぜひご覧になってくださいませ。ただし、おひとりで。
◆『サニー/32』
2月17日より全国ロードショー(2月9日より新潟・長岡先行ロードショー)
監督/白石和彌 脚本/髙橋 泉
出演/北原里英、ピエール瀧、門脇 麦、リリー・フランキーほか
公式サイト/http://movie-32.jp/
◆『素敵なダイナマイトスキャンダル』
3月17日よりテアトル新宿、池袋シネマ・ロサほか全国ロードショー
監督・脚本/冨永昌敬 原作/末井 昭
出演/柄本 佑、前田敦子、三浦透子、尾野真千子ほか
公式サイト/http://dynamitemovie.jp/