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2021.06.17

キャビアと日本酒が意外に合う⁉ と気づかされた「小松SAKETRONOMY」

酒造りの神様、農口尚彦杜氏によるお酒と、石川県小松産の豊かな食材、そして「京料理 たか木」高木一雄シェフという、美味の三位一体を楽しめるイベントへ出かけてまいりました。

CREDIT :

文/秋山 都

LEON.JP 食いしん坊担当の秋山都です。

先日、心臓に異常を覚え、病院に駆け込んだところ、高脂血症と診断されました。 LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)値が異常に高く、心筋梗塞や脳卒中になりかねない、とのこと。さっそく投薬治療をスタートしましたが、ドクターによると私の食生活も改善の必要アリと……。いわく、乳製品、脂質、コレステロールの高い食品は控えるべしとのことでした。 

高コレステロールの食品といえば、肉およびその内臓や、鶏卵、魚卵など、私の大好物ばかりです。でもドクターストップがかかってしまったのであれば、背に腹は代えられません。極力節制することにいたしましょう。
▲ 酒造りの神と讃えられる農口尚彦杜氏が率いる「農口尚彦研究所」(石川県小松市)。
しかしながら、美食は私の仕事の重要なパートでもあります。節制は自腹(この場合はプライベートで食す機会を指しています)で行うこととし、今回も出かけてまいりました。向かうは酒造りの神さまと讃えられる農口尚彦杜氏が率いる「農口尚彦研究所」です。

こちらの酒蔵では2019年より、石川県小松市産の地元食材を使用して「美食のまち」としての小松市の魅力を発信し、世界中の美食家の「旅のデスティネーション」となることを目標としたプロジェクト「小松SAKETRONOMY(サケトロノミー)」をスタートさせています。
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小松SAKETRONOMY (石川県小松市)

その舞台となるのは、酒蔵に隣接されたテイスティングルーム「杜庵(とうあん)」。大きく開いた窓から、里山の風景を、そしてもう1面の窓から酒蔵の内部を眺められる、カウンターわずか12席(当日は8席に減らしています)のスペースです。

漆喰の壁に、コの字型のカウンターが置かれたデザインは、九谷焼の人間国宝でもある陶芸家、吉田美統氏(錦山窯3代目)と、陶芸家であり、空間プロデューサーでもある大樋長左衛門氏(大樋焼11代目)が、それぞれ「おもてなし」と「しつらい」をテーマにディレクション。余分なもののない、シンプルでスタイリッシュな空間です。
▲ テイスティングルーム「杜庵」は席を8席に減らし、アクリルパネルを立ててウイルス対策を講じていました。
一面大きく開いた窓からは、田植えされたばかりの田んぼが見えます。これから稲穂が青々と生長し、そして秋には黄金色に頭を垂れる麦秋が望めるのでしょう。お米が育つさまを眺めながら、そのお米で醸したお酒が飲めるとはなんと贅沢な経験。
▲ 酒器やカトラリーも美しい「小松SAKETRONOMY」のテーブルセッティング。
5回目を迎えた「小松SAKETRONOMY」の特徴は国内外の有名シェフを招聘し、そのシェフのお料理とコラボレーションしたお料理と日本酒のペアリングを楽しめること。今回は「京料理 たか木」の高木一雄シェフによる10皿と、若手料理人を発掘するコンペティション「RED U-35」でグランプリに輝いた糸井章太シェフによる2皿のデザート、そして11種類の「農口尚彦研究所」のお酒をいただきます。
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▲ 仏STURIA社のキャビア。
さらにこの日は、この黒いダイヤモンド……キャビアが、お料理のいたるところにあしらわれ、高木シェフのお料理に華を添えていました。キャビアは少々コレステロール値が高いんですけれどね。仕事ですから仕方ない(笑)。

このSTURIAキャビアはフランスのスタージョン社によるもの。スタージョン社はフランス・ボルドーで長年チョウザメ(キャビアの親)の養殖をしており、パリの名店で使われるのはもちろん、世界の飲食店へ輸出をしています。一般のキャビアに比べて塩気が控え目なのが特長だとか。上の写真でバエリ(大缶)、オシェトラ(中缶)、ベルーガ(小缶)の3種をいただきましたが、私はもっとも安価(この中では、ですよ)なバエリの濃厚な旨味が好みでした。
▲ キャビアは金気を嫌うため、貝や角を削りだしたスプーンでいただきます。
さて、今宵の宴はまずベルーガキャビアをひと口と、「Limited Edition NOGUCHI NAOHIKO 2017」から。
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このお酒は「農口尚彦研究所」の最初のヴィンテージであり、さらに5,500本しか醸していないというスペシャルな1本。果たしてキャビアと日本酒の相性は……ドキドキしながら口に含んでみますと、びっくり! AU(合う)! STURIAキャビアの控え目な塩味と濃厚な旨味が、日本酒の丸さにふんわり包まれ、その冷たさに喉を心地よく滑り落ちていきます。キャビアにはシャンパンが合うと思い込んでいましたが、日本酒がこんなにイケるとは。

考えてみればカラスミやイクラなど魚卵と日本酒の相性はすでに実証済みですから、キャビアがイケないわけがないのですよね。
▲ 先付は能登産の食材である「金時草とガス海老」。写真にはウニとキャビアしか写っていない不思議(笑)。
▲ 八寸「赤イカ、一寸豆とバチコ」。紫陽花に見たてたイカの握りずしにはやはりキャビアがチョンと。
目にもおいしい高木シェフのお料理に、キャビアが華を添えています。そしてそこに寄りそう日本酒のすばらしさったら。とくに「農口尚彦 88YEARS OLD Special Edition 2020vintage Vol.1」は、今年12月には89歳になる農口杜氏による888本限定のお酒だとか。ありがたく、手を合わせていただきます。
▲ 「農口尚彦 88YEARS OLD Special Edition 2020vintage Vol.1」は山田錦を使用した特別なお酒。この日は40℃に燗していただきます。
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▲ 英国への留学経験があり英語も堪能な高木一雄シェフ(左)。
次々と供される日本酒の美味しさに仕事を忘れていましたが、ふと気づけば外の田んぼでシェフがなにやら焼いています。これは見にいかねば。
▲ 能登牛は石川県内で生産されている黒毛和牛。
炭火でじっくり焼かれていたのは能登牛でした。ロゼ色にほどよく火入れされたビーフに、名残の花山椒をたっぷり乗せて、いただきます。合わせたのは「JUNMAI DAIGINJO 無濾過生原酒 2018vintage」。
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さて、めくるめくペアリングも終盤にさしかかり、そろそろ〆のごはんが登場するタイミング。
 これはちょっと反則かも(笑)。小松市産の有機栽培米にキャビアをたっぷり。まずはこのまま食べて、その後にメギスの出汁をかけてお茶漬けにしていただきます。あ~、もうコレステロールのことなんて気にしていられません。今、この瞬間を生きている私。刹那の悦びに身をまかせます。
そして最後には糸井章太シェフによる酒粕を使用したスフレも。甘さ控え目でこれまた日本酒とよく合いました。
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▲ この日飲んだ「農口尚彦研究所」のお酒。いや~よく飲んだ……・。
宴を終え、厨房のみなさんと一緒に挨拶に出てきてくださった野口杜氏。いつもながら謙虚に「今日のお酒はどうでしたか? なにか気づいたことがあれば教えてください」とおっしゃいますが、「神」の前で何をか言わんや。「おいしかったです」としか言えない自分の語彙の少なさに呆れます。

お会いするのはおよそ1年ぶりでしたが、少しお痩せになったかな? でも休日には自宅の畑作業を手伝っているそうで、よく陽にやけてお元気そうでした。実はあまりお酒を飲まないといわれる杜氏ですが、きっとヘルシーな食生活をお過ごしなのでしょう。私も仕事以外の場面では節制をし、野口杜氏にまたお目にかかれる日まで元気に過ごそうと思います。
▲ 農口尚彦杜氏を囲んで、この日の美味の立役者たち。

◆ 農口尚彦研究所

住所/石川県小松市観音下町1-1 
HP / https://noguchi-naohiko.co.jp/

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