2021.07.12
バブルなおじさんにおすすめしたい、2選
時代がどんどん変わっていく時、取り残されてなんだか悲しい気持ちになるのは、いつでもそれまで時代を作ってきた世代だったりします。でも、そういうのって実はちょっとしたマインドセットで気持ちが楽になったり。そんなわけで、70年生まれのおじさんが最近刺さった本をご紹介いたします
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文/高橋 大(LEON.JP)
LEON.JPのタカハシです。
先日クラブハウスで、バブルをテーマにしたクロストークに参加させていただきました。
参加者は非常に豪華で、バブル後の不良債権処理に奔走し、のちにドラマ「ハゲタカ」のモデルになった赤井厚雄さんをはじめ、日本マイクロソフトの初代社長・会長の古川享さん、メディアプロデューサーの金杉はじめさんなどなど、各ジャンルのすごい方達が大集合しました。
クラブハウスはちょっと盛り下がっているなんて言われていますが、まだまだ面白いトークルームがあるんですよね。
そこで色々なお話を伺っていて、つくづく当時の日本の盛り上がりがとんでもなかったことを再確認しました。
自分は1970年生まれなので、一般にバブル期と言われる1987〜1991年はちょうど10代半ばから成人になるまで。
なので、バブルを謳歌するお兄さんお姉さんを、羨望とともにどこか反発のような気持ちも入り混じりなが眺めていたんですが…・お金も車もないガキンチョは相手にされない時代でしたから。
まぁ、とはいえ毎晩ディスコで浮かれていたんですけど(笑)。
さて、そんなきっかけでふと思い出したバブルですが、そのトークのときに「まさにバブル時代のことを綴った面白い新刊本があるよ」と教わり、早速購入。
それがこちら。
甘糟りり子さんの最新著書になります。
この帯の文字、「顔パスで入れないディスコはなかった」。
いいですねぇ〜当時「顔パス」ってすごいキラーワードだった気がします。
いまでもその残滓は港区女子文化に見られますが。
店側は入場の際のドレスコードを設けていた。〜中略〜垢抜けない来客を「当店の雰囲気に合わない」という理由で追い返す。あからさまに差別することで客たちのささやかな優越感&劣等感をあおり、話題になった。今これをやったらすぐに炎上するだろうけれど、世の中じゅうが「もっと上に行きたい」「さらにいい思いをしたい」とわめいていた時代である。ちょっとした運や順番で、きっと自分にもその番が回ってくるとたいていの人が信じていた。だから、不平等がエンターテインメントとして成立した。
こんな感じで、バブル末席の自分もなんだか懐かしく、ご自身も含めた時代へのアイロニーとユーモアのあるエッセイがなんだかいいんですよね。
で、そこから思い出して書棚から取り出したのがこちら。
急にムツカシそうな本ですが(汗)。知的ぶってるわけじゃないんです。
なんかこの帯の言葉とバブルにぴんときただけなんですよね。
ボードリヤールといえば、80年代にセゾングループの堤清二氏が傾倒し、そこから「無印良品」を作ったなんて逸話もあったりの、ニュー・アカブームで流行った思想家・哲学者。
すべては消費される「記号」にすぎない、なんていうとちょっと厭世的に感じるかもですが、そういうことではないようで。
詳しく書いているととんでもない文字数になってしまうのですが、ざっくり言えば大量消費社会になると、商品の価値は使うモノとしての価値だけではなく、記号としての価値が生まれる。というような内容。
で、これを改めてバブルからの流れで読んでみると、、バブルで生まれた「DCブーム」や、「黒服」、「VIP」などなどの様々な現象や、SNSで断片的な情報だけがひたすら拡散されていく、いまのカルチャーのことがぼんやりですが理解できたような気がするんですよね。
いま人が求めているものは何か? を職業的に常に考えているメディア人としては、非常に腑に落ちたんですが、
ニューノーマル、サステナブル、SDGsなどが言われる時代、なんか記号に踊らされて疲れちゃったなぁ、という人には特におすすめできると思った次第。
そう、なんだかんだいっても、すべては記号。で、それもバブルみたいなもんじゃない? と思うとちょっと気持ちが楽になるんじゃないかと。
と、とりとめなくなりましたが、両著ともいま時代を見る目を養える良書かな、と思いご紹介させて頂きました。
ではまた!