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2021.09.21

知られざるワイン産地「アルト・アディジェ」でワインサミット開催

イタリアとオーストリアの国境に位置する小さな街、ボルツァーノを中心とした「アルト・アディジェ」地方。そこは、まだまだ知られざる美味ワインの産地なのでした。

CREDIT :

文/秋山 都、写真協力/アルト・アディジェ・ワイン委員会

LEON.JP食いしん坊担当の秋山都です。
食べるのと同じくらい、お酒を飲むこと、旅することが大好きな私にとって、この2年間は海外に出かけることもできず、また外でお酒を飲むのもままならない、少々ストレスフルな毎日が続いています。

そんななか、イタリアのワイン産地「アルト・アディジェ」とオンラインでつなぎ、学べる機会である「ワインサミット」が開催されると聞き、よろこび勇んで参加しました。
▲ これは私……ではなく、他国のジャーナリストの方。
「アルト・アディジェ? それはどこ?」という方(私もそうでした)のために、まずは概要から。

「アルト・アディジェ」はイタリアの北部。オーストリアに接する南チロルの国境地帯です。州名はトレンティーノ=アルト・アディジェ州。私は若かりしころ、この近くのコルティナ・ダンペッツォというスキーリゾートで冬の数週間を過ごしたことがありますが、この辺りの印象は「イタリアっていうよりドイツみたい」。歴史的にも19世紀から第一次世界大戦までは長くオーストリア=ハンガリー帝国の領土だったこともあり、今もドイツ語が公用語でもあるのだとか。『LEON』的にはイタリアというと男性が全員プレイボーイのようなイメージがあるかもしれませんが、みなさん非常に生真面目で勤勉。とくに南イタリアと比べると、まったく違う国のように思えます。ここがイタリアの面白いところですね。
▲ なだらかな傾斜から、けわしい斜面まで、多様性に富む「アルト・アディジェ」の地形。Source: Vini Alto Adige/Florian-Andergassen
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▲ スピーカーを務めたナンシー・ギルクリストMW(左)と、「アルト・アディジェ」ワイン生産者のみなさん。
さて、この日のオンラインセミナー「ワイン・サミット」には6人の生産者が参加していました。こちらのオーディエンスはアメリカ、ロシア、香港、そして日本という国際的な、まさにサミットの趣です。
スピーカーを務めていたのはナンシー・ギルクリストMW。このMWとはマスター・オブ・ワインと読みまして、英国に拠点を置くマスター・オブ・ワイン協会が認定する、ワイン業界ではもっとも高水準な資格。日本に住む日本人としては大橋健一MWただひとりが取得しているという難関でもあります。

このナンシーさんはイギリスのワイン・エデュケーターということでしたが、わかりやすい解説と聞き取りやすい英語で大変勉強になりました。では「アルト・アディジェ」がどんな産地なのか、この日学んだことを整理したいと思います。
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1.2500年の歴史

アルト・アディジェでは紀元前500年からブドウが栽培されていました。700年にはバイエルンとシュワーベン(現在のドイツ南西部)の修道院がワイナリーを持っていたことが記録されています。19世紀半ばには、「アルプス王」としても称賛されたヨハン大公が、「アルト・アディジェ」でのブルゴーニュやボルドーのブドウ品種栽培を奨励。のちに「アルト・アディジェ」を代表する品種となったリースリングもこの時初めて植えられました。

2.ワインにとって理想的な気候と風土

標高200~1000mの山岳地帯である「アルト・アディジェ」。アルプスから冷たい風が吹きおろし、アドリア海から暖かな微風が吹くこのエリアは日中の寒暖差が激しく、年間の日照時間、降雨量の観点からも、ワイン用のブドウ栽培にはほぼ理想的な環境なのだとか。

3.標高で変わる品種の多様性

そして、この山岳地帯であることが「アルト・アディジェ」のワインの非常にユニークなポイント。標高200~300m地帯ではピノ・グリージョやメルロー、300~500m地帯(ここがボリュームゾーン)ではピノ・ビアンコ、ソーヴィニヨン、ゲヴェルツトラミネール、500~1000m地帯ではシルヴァーナー、ヴェルトリーナー、リースリングなどが栽培されています。さまざまな標高に畑がある「アルト・アディジェ」ならではの多様なブドウ栽培、いつかこの目で見てみたいなぁ。
▲ 「アルド・アディジェ」で古くから栽培されているリースリングは、もっともこの地らしいワイン品種のひとつ。Source: Vini Alto Adige/Florian-Andergassen

4.赤ワインから白ワインへ……

現在は白ワインの印象が強い北イタリアですが、70年代は赤ワイン主体だったそう。このエリアには土着の「ヴェルナッチ」「ラグレイン」というともに赤ワイン品種があるそうなので、これらが牽引していたのでしょうか? 現在はピノ・グリージョやゲヴェルツトラミネ―ル、シャルドネなどの白ワイン品種が主体に。
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5.DOCアルト・アディジェはここで識別

イタリアワインがお好きな方なら、DOCやDOCGなど原産地呼称による品質等級はすでにご存知でしょう。「アルト・アディジェ」はDOC。キャップシールに「Südtirol」と書いてあれば、それはDOCアルト・アディジェの証です。ちなみにSüdtirolとは、ドイツ語で南チロルだそう。こんなところにも、「アルト・アディジェ」のドイツ的なカルチャーが見てとれるのは面白いですね。
▲ DOCアルト・アディジェを証明するキャップシール。Source: Vini Alto Adige/Florian-Andergassen

6.畑をさらに細分化する「ヴィーニャ」

ブドウの畑を、土壌や日照条件などによって細分化し、品質を管理していく方法はフランスにもありますが、ここ「アルト・アディジェ」では「ヴィーニャ」と呼ばれる小さな区画で管理されています。ヴィーニャは現在56カ所あり、それぞれ同じ年に植樹された単一ブドウ品種であることが条件。最小のヴィーニャは0.45haということで、これはつまり45m×45mの区画となり、かなり小さいです。仏シャンパーニュ地方で見た、Clos(クロ)と呼ばれる石垣で囲われた区画を思い出しました。
Source: Vini Alto Adige/Florian-Andergassen
この日、6本のワインをテイスティングし、「アルト・アディジェ」産のワインについての理解はかなり深まりました。でも百聞は一見に如かず、と言うではありませんか。やっぱり、現地に足を運び、吹く風を感じ、土を踏みしめてみないと「アルト・アディジェ」のことを本当にわかったとは言えないでしょう。現地の美味しいローカルごはんともペアリングさせたいし。

早く気楽に旅ができる日が戻ってきますように。その日まで「アルト・アディジェ」ワインをせっせと飲んで、予習に努めることにいたします。

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