2018.12.13
カッコ良くない役をサラリとこなす稲垣吾郎がカッコいい映画『半世界』
第31回東京国際映画祭で観客賞を受賞したことでも話題になった阪本順治監督の新作『半世界』の公開が2019年2月15日に決まった。主演の稲垣吾郎がイメージを覆す印象的な演技を見せる、その内容とは?
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文/森本 泉(LEON.JP)
先日、『半世界』という映画を見てきました。これが、我々オヤジにとっては、なかなかに、心がヒリヒリするような映画でした。
舞台は美しい海と山に囲まれた小さな田舎町。風俗も映画館もないような“取り残された感”の漂う町で、主人公の紘(稲垣吾郎)は山中の炭焼き窯で備長炭を製炭し生計を立てています。
不器用で無神経なダメ夫を、日頃エレガントで柔らかいイメージの稲垣吾郎が意外な程自然に演じています。一番“らしくない”役をサラリと演じてしまうあたり、やはり彼は只者ではありません。
そしてもうひとり、地元で冴えない中古車販売店を営む光彦(渋川清彦)を加えた3人は中学からの同級生。瑛介が戻ってきたことで、中学以来の「三角形」が再び動き始めます。
時にぶつかり合い、時にベタベタの友情物語を演じながら、もがく男たちの姿はコミカルでもあり、哀しくもあり。「友情とは? 夫婦とは? 家族とは? 仕事とは?」と、さまざまな問が観客に投げかけられます。
世界は名もなき小さな営みから成り立っている
つまり今、世界はグローバリズムという言い方で物事を俯瞰的に見る風潮があるけれど、実は世界は“名もなき小さな営み”から成り立っている。そういう“俯瞰的に見過ぎたら見えないもの”にこそ、人生のリアルがあるのではないか。と、そんな意味がこめられているようです。
舞台の大小や場所の違いはあれ、結局、人生とは、自分が直面する現実に目を向け、必死に抗い、もがきながらも前に進むしかない。きちんと目を見開く者にしか愛も平安も訪れはしない。この映画にはそんなメッセージを感じるのですが、それって、なかなかキツイなぁ……(笑)。
都会でスタイリッシュに暮らす大人の男にこそ観ていただきたい映画です。
『半世界』
脚本・監督/阪本順治、キャスト/稲垣吾郎、長谷川博已、池脇千鶴、渋川清彦ほか 制作・配給/キノフィルムズ ©2018「半世界」FILM PARTNERS