時計まで抜かりないトータルなコーディネート
自ら正統派のクラシックスタイルを世に広めるべく、既成のスーツでもスタイルが美しく見えるよう、日々肉体調整に余年のない実践派ドレッサーでもあるのです。
そんな装いの伝道師が日頃から強く意識しているのがトータルコーディネート。アタマから足先まですべてテイストを揃えてこそ、完成度の高い装いになると並木さんは考えます。それはもちろん装身具に関しても例外ではありません。
ということで、今回は男子の装身具として筆頭アイテムである、時計までしっかりテイストを留意した並木流コーデをご披露いただきます。しかもなんとうれしいことにカジュアル編とクラシック編の二本立て。これはファッション好きも時計マニアも見逃せません!
グレーを多用した軽快かつ統一感あるTシャツスタイル
「このTシャツはバトナーのウール素材。ライトグレーというカラーが軽さと大人の渋味を感じさせます。素材がウールだけに、コットンのそれとは異なるしっとり感が特徴です。本来大人であれば、外出の際はジャケットを羽織るものですが、さすがに真夏は暑すぎます。だからカーディガンを肩掛けにて代用。
都会的で落ち着きのあるグレイッシュなトップスに、並木さんはトム ウッドのホワイトジーンズを合わせます。
「夏らしく開放的かつアクティブな雰囲気を演出するため、ホワイトジーンズを選びました。ブルージーンズでも良いのですが、やっぱりホワイトだと快活さのなかにも大人のエレガンスがあるように思います。一定の年齢に達した男性なら、ラフな格好の時ほど清潔感を気にする必要があるでしょう。
そんな着こなしを引き締める大事な装身具であるのが腕時計。しっかり吟味しコーディネートする重要性を並木さんは強調します。
「多くの人は、まだまだ時計を服装から切り離した個別のプロダクトとして見ているように感じます。もちろん、高価な機械式は値が張るアイテムですから、装いごとにすべて揃えるというのはムリでしょう。しかし、ここぞという着こなしを念頭にコーディネートする意識をもって、時計に至るまでしっかり選び抜くべきと自分は考えます。そうでないと理想のスタイルは完成しないと感じますから」
グレーチタンの小径時計でアクティブに引き締める
「スポーティな気分の時の時計は、やはりドレスウォッチではチグハグな印象になってしまいがち。もちろん、サブマリーナ的な時計でも良いのでしょうが、ちょっと個性を加味したかったのでこの一本を選びました。チタンケース&ブレスレットのこのモデルは、グレイッシュな装いにベストマッチ。
綿密なコーディネートを志向する我らがスタイリングマスター。もうひとつ半袖シャツを軸とした着こなしを披露してくれました。それが襟付きシャツを主役に据えた、ちょっと艶っぽいナイトシーン対応のスタイリングです。
大人の色気をしのばせた艶っぽい半袖シャツの装い
ドレッシーなシャツスタイルということであれば白シャツがひとつの定番。しかし、今回の並木さんチョイスはちょっと濃いめのベージュです。
「確かに白シャツはドレススタイルにおける王道。ただしブラックパンツに合わせるような場合、少々コントラストが強くなることも。しかも個人的には白シャツはビジネスのイメージが強いので、こういったオケージョンでは選びません。寛ぎ感もあってシックな要素も備えたベージュが、今季僕のなかでは気分なのです。
ナイトシーンを艶っぽく装うということで、選んだパンツはクールなブラック。クラシック・マスターとしてはショーツではなくフルレングスを選ぶところがポイントと語ります。
「やはり暑いからといって何でも涼しく快適性ばかり追求してしまうと、ドレッシーさがスポイルされてしまいます。スリッポンなどを素足ではくようなラフなスタイルの時は、せめてフルレングスのパンツといきたいところです」
「これはイル ミーチョが手掛けたエスパドリーユ。スエードアッパーのスリッポンベースに、デコラティブなレースを加えているところが洒落ています。夏の着こなしはどうしてもスッキリしすぎになりますから、こういったギミックあるアイテムで、個性を演出するのもひとつの手だと思います。個人的にはこの一足で、かなり“夜”な感じになったかなと(笑)」
大人の余裕を放つ薄型ゴールド時計の存在感
夜のしっとりしたシーンという要素まで考慮するなら、薄手のドレスウォッチがしっくりハマるのです。濃いベージュシャツに黒パンツのコーディネートに対し、黒ベルト×金無垢ドレスウォッチの取り合わせは非常に好相性。バランス感あるスタイリングになっているように感じますが、さていかがでしょう?」
● 並木孝之 (アイネックス 商品戦略部部長)
1970年生まれ。ネクタイを始めメンズウエアの卸業を展開するアイネックスにおいて、シーズンごとの戦略をまとめ実行に移す重要な部署を統括。取り扱いブランドのPRや、セレクトショップ等への営業活動も同時に行う。趣味は装うこととセルフブランディング。その一環としてスイミングやジョギングを継続的に行っている。