続・時計まで抜かりないトータルなコーディネート
自ら正統派のクラシックスタイルを世に広めるべく、既成のスーツでもスタイルが美しく見えるよう、日々肉体調整に余年のない実践派ドレッサーでもあるのです。
そんな装いの伝道師が日頃から強く意識しているのがトータルコーディネート。アタマから足先まですべてテイストを揃えてこそ、完成度の高い装いになると並木さんは考えます。それはもちろん装身具に関しても例外ではありません。
前回の記事では軽快なカジュアルスタイルをご披露いただきましたが、今回は待望のドレススタイル編。夏の盛装における時計の小粋な取り入れ方を特別に見せていただきました。コレは圧巻の内容です!
コードレーン・スーツで品良く爽やかに
「ただでさえ汗かくようなシーズンなので、目にも爽やかな装いを心掛けたいものです。この一着はコットン素材で非常に軽快ですが、上下揃えて着ることで大人っぽい雰囲気になるもの。そこまでシリアスなシーンでない場合は、アンタイドの装いでももちろんOKです。そういった場合のシャツは、布帛ではなくスポーティなポロシャツやニットポロがバランス良くマッチするのです。
「これはボードイン & ランジのスリッポン。いわゆる今流行りのベルジァンシューズの一種ですが、こういった軽快な装いに非常にマッチする薄仕立てが特徴的。コットン特有の寛いだ素材感を持つコードレーン・スーツとも相性の良い、スエードアッパーを選んでいます。もちろんカラーはスーツと同系色のネイビー。それ以外のカラーは合わせません」
さすがは着こなしマスター。足先までパーフェクトなコーディネートです。素足にスリッポンの着こなしも含め非常にリラックスした装いですが、パンツのクリースはきっちり立てています。裾の折り返しもシングルではなくクラシックなダブルという処理であり、それもまたメリハリ・テクのひとつなのです。
清涼かつ格式感じるスポーティウォッチでまとめて
「コードレーンのスーツも言わばトラッドスタイルのひとつ。アンタイドのカジュアルな雰囲気や、ポロシャツを合わせるような、ある種アクティブなコーディネートには、こんな快活なスポーティウォッチがマッチします。ポイントはSSブレスレットからレザーストラップに替えているところ。
ちなみにこの爽やかなコードレーン・スタイルは、軽いオン・ビジネスの時や、ちょっとかしこまったデートシーンを意識したもの。より正統派にということで、お次はさらにシックなタイドアップの王道スーツスタイルをご紹介いただきました。
知的な遊び心漂うソラーロ・スーツの装い
この一着はソブリンハウスで買いました。オーダーメイドではなく既製品の48サイズ。裕福でお洒落な人はスーツはオーダーメイドと言う人も多いのですが、僕は多くの人にクラシックスタイルを気軽に楽しんでもらいたいと思っています。だから誰でも購入しやすい吊るしのスーツを選んでいるのです。
ただし最近は、既製スーツでどこまでキレイに見せるかを追求するあまり、体型作りにまで追われていますけど(笑)」
「確かにこの装いは正統派のスーツスタイルですが、フォーマルなどのシリアスなものではありません。サマーシーズン特有の季節感や開放的な要素、それに独自のダンディズムを入れ込んだコーディネートです。そしてソレは腕時計へと集約する組み立てですが、ソコは最後に説明します」
「あえてヌケ感を設けるため、シューズは気軽にはけるロファーをチョイスしました。ソラーロ・スーツとオレンジタイということで、シューズのカラーはブラウン。毛並み豊かなスエード素材の一足ゆえに、しっとりした色気と寛ぎも感じさせます」
パリの洒落感に軽妙な遊び心を託して
「カルティエはタンクにしてもそうですが、パリのジュエラーならではの華やかなエレガンスが特徴です。スタイルに軽妙なエッセンスを添えたい時に、重厚なスイスブランドの時計よりも洒脱にマッチするように感じます。このサントスというモデルは、スクエアフォルムやビス留めスタイルのベゼルが特徴的。
いかがでしたか? 着こなしマスターの時計を含めたトータルスタイルは参考になったでしょうか。実は並木さんのコーディネートストーリーは、これでお終いではありません。取っておきの愛用時計を軸にしたスタイリングがあるのだそう。それはまた次の機会にご紹介したいと思います。
● 並木孝之 (アイネックス 商品戦略部部長)
1970年生まれ。ネクタイを始めメンズウエアの卸業を展開するアイネックスにおいて、シーズンごとの戦略をまとめ実行に移す重要な部署を統括。取り扱いブランドのPRや、セレクトショップ等への営業活動も同時に行う。趣味は装うこととセルフブランディング。その一環としてスイミングやジョギングを継続的に行っている。