2022.10.31
技アリ! プロの着こなしテク拝見【鴨志田康人編】
ユナイテッドアローズの重鎮が公開! 遊びの気分で装う達人の+αな新スーツスタイル
毎シーズン、ニューアイテムやトレンドが発信されるファッションシーン。しかしどう装うべきか分からない人も多いハズ。そこで着こなし自慢たちが、トレンドやシーズンを踏まえたコーディネートテクニックを特別に披露。長年服を着倒してきた経験から導き出されるリアルな技は、参考になること確実です。
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写真/鈴木克典 構成・文/長谷川 剛(TRS)
これからは個性的に着飾ることを楽しんで
昨今は世界的に脱・ドレス化が進行するなか、鴨志田さん自身もカジュアルな装いで過ごす日が増えたとのこと。しかしそれでも、やはり男の一張羅はクラシカルなスーツだと語ります。
「確かにビジネスの現場において、本式のスーツを着込んでタイドアップまでこなしている人に出会うことは少なくなりました。軽快なジャケット&パンツでミーティングを済ませる機会も増えています。しかしだからこそ、スーツというアイテムの特別性が増しているように感じます。
わざわざスーツを着て出掛ける。つまり、特別なお洒落として装うこと自体を味わうスーツスタイルに、これからの方向性があるように感じます」
まずはグレーフランネルのダブルブレステッドスーツをアンタイド+αで着こなしたコーデから拝見していきましょう。
「無地のグレースーツというと、制服的な印象を持つ人もいるかも知れません。しかしグレーフラノの一着はメンズスタイルの定番中の定番。ドレッシーでありつつ日常にも着回せる汎用性の高い一着です。ただしシングルブレストだと、着崩しが難しくなる場合があります。
その点、ダブルは首元にスカーフなどを挟んだり、タートルニットを一枚着込んで前ボタンを留めずに着ても軽妙なルックスに仕上がるもの。ぜひ皆さんにトライしてほしい一着ですね」
このグレースーツは4年ほど前に、リベラーノ&リベラーノにてオーダーしたもの。特別なリクエストは加えずお任せにて仕立てたもので、当然タイドアップにてカッチリと着こなすこともできる一着であると鴨志田さん。
ワイドパンツに替えて今風の寛ぎ感を演出
フランスのベルナール ザンスの一本で、生地のトーンが、このリベラーノのフラノと似ていたのでスーツ風に合わせているのです。ワイドシルエットの着こなしはカジュアルではもう一般的。ですが、ドレスでもゆったり着こなしたい気分だったので、ちょっとアレンジしてみたというワケです(笑)」
確かにスーツ然としたルックスながら、今風の寛いだ洒落感が漂っています。さすがプロならではの+αなアイディア。非常にハイセンスなコーディネートとして完成しています。
そしてその寛ぎ感を支える小技のひとつがシルクスカーフ。グレーに馴染みやすいブラックの小紋ペイズリー柄の一枚が、優雅にして凛とした印象を高めます。
「ドレスシャツなどだと、スカーフの始末にコツを要しますが、このようにモックネックのカットソーなら、軽く結んで端をしまい込んでしまえるので、バタつくこともありません」
「シューズはボードイン&ランジのタッセルスリッポン。フラノスーツの風合いとタッチの揃うスエード使いがポイントです。こういった遊びの着こなしに、重厚なヒモ靴などは今の気分ではありません」
味わい深いカラーで魅せる成熟した洒落感
もちろんシリアスなシーンにはマッチしませんが、これからの時代のスーツスタイルは、より個性的であるべき。その選択肢としてカラースーツはぜひ多くの人に楽しんでほしいですね」
このコーディネートでは、あえてタイドアップをチョイスした鴨志田さん。華やかでありつつシックに引き締まった要素もしっかり兼備。メリハリを効かせたバランスの良いドレススタイルに仕上がっています。
「スーツスタイルの良いところは、シンプルに気持ちが高揚するところ。だから良い生地を使った本格仕立ての一着を僕は選んでいます。日常とはひと味違う特別な時間を楽しむ服装。これからは、そういった視点でのスーツの装いが増えていくように感じます」
グレーベースのネクタイはある意味シックで落ち着いた雰囲気。しかし大柄のペイズリーパターンゆえにアーティスティックで自由闊達な美観を胸元にもたらしています。クラシックな要素を軸にしつつも、遊びや個性を十分に取り入れて装うことが、これからのスーツスタイルということなのでしょう。
今回の写真ではあまり見えていませんが、靴に合わせてブラウンスエードのベルトはをしっかりチョイスしています。個性とルールと時代性。このミックスがやはり達人は抜群なのでした。
● 鴨志田 康人 (ユナイテッドアローズ クリエイティブ アドヴァイザー)
セレクトショップのビームスを経て、1989年ユナイテッドアローズの創業に参画。バイイングから商品企画、店舗内装監修まで幅広い役割を担う。2007年には自身のブランド「カモシタ ユナイテッドアローズ」を設立。その他2019年より日本におけるポール・スチュアートのディレクションを手掛けている。日本を代表するドレッサーとしてもつとに有名。
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ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店 03-5772-5501