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2023.04.10

春アウターの着こなしをプロが指南【吉野 誠編】

人気スタイリストは春アウターをどう着こなす!?

陽差しもだいぶ暖かくなり、お出掛けの機会も増える春本番。季節感ある装いを完成させる主役として、春アウターのあしらいはかなり重要です。そこで本誌でも活躍する実力派スタイリストに、そのコツを直接披露していただきました。

CREDIT :

写真/多田 悟(Rooster) 文・編集/長谷川 剛(TRS)

いろいろ探して見つけたクセあり英国ドリズラー

吉野 誠
日中は結構温暖でありながら、朝夕はまだまだ冷え込むことも多い今日この頃。一定の寒暖差があるゆえに、マストであるのが薄手の春アウター。これをパーフェクトに使いこなすことで、春をお洒落に制することが叶うのです。本誌でも敏腕をふるうスタイリストの吉野誠さんは、今季は着丈の短いショートブルゾンが面白いと語ります。
ホリングワース カントリー アウトフィッターズ
▲ いろいろ探していたというショートブルゾン。ついに出会ったのがこのホリングワース カントリー アウトフィッターズの一着。高級品というよりも簡素でシンプルな作りがポイントの、いわゆるドリズラータイプです。とは言え昨今珍しいイギリスメイド! コレはかなりレアものです。吉野さん曰く「浅草のアメリカ屋で見つけました」。
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吉野 「大人のドレススタイルを意識しコーデを組み立てると、スプリング系コートも定番はロング丈となります。しかし、それだと王道すぎてやや面白みに欠けてしまうもの。個人的にも新しい着こなしを模索しており、ショートブルゾンをあれこれと探していました。

そんななか見つけたのがこのホリングワース カントリー アウトフィッターズの1枚。いわゆるドリズラーですが、バラクータとは異なり、あらゆる意味でラフなところが気に入りました。素材はポリコットンで縫製もシンプル。アームも身頃もゆったりめで、昨今のオーバーシルエットとは異なる、昔ながらのたっぷり感がポイントです。

肩のラインも変に落ちてなく、トレンドっぽく見えないところも秀逸。また、作業着にも似たチープなカラーリングが非常にユニークで、ある意味ざっくばらんゆえに、キメのスーツスタイルなどにあえて合わせることで、ほどよい軽妙なヌケ感が演出できるのです」

ということで、まずはスーツスタイルから見せていただきました。春らしい淡色グレーのスーツはガブリエレ パジーニの3ピース。ほんのり入ったブルーチェックがドレッシーさのなかに清涼感を滲ませる一着です。そんなスーツを軸にブルー系でまとめたスタイリングがなんとも軽やかで爽やか。
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スーツスタイルをセンス良くドレスダウン

吉野 誠 本格テーラードの3ピースはガブリエレ パジーニのもの。襟付きのジレが存在感をアピールします。そんな極めてドレッシーなスタイルを、堅苦しく見せないひと手間がこの装いのキモです。
▲ 本格テーラードの3ピースはガブリエレ パジーニのもの。襟付きのジレが存在感をアピールします。極めてドレッシーとも言えるスタイルを、堅苦しく見せないひと手間こそ、この装いのキモなのです。
吉野 「春らしさを演出したい場合に色使いは特に大事。ですのでブルゾンはペールトーンのサックスブルーをチョイス。グレースーツもブルーの柄入りで揃えています。シャツも同様であり、タイは同じくブルーを取り入れつつ、ビンテージ調の柄タイということで、自分なりの個性をしのばせてみました」

そしてブルゾン裏地の鮮やかなカントリーチェックが挿し色として効いています。あからさまに“挿し色入れてまーす”という感じではなく、結果的にアクセントになっている、ぐらいのさり気なさがなんとも洒落て見えます。
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吉野 誠 ラウンドカラーのシャツやビンテージ調のタイが洒落感をソフトに引き立てます。もちろん、ブルゾンのカラーに合わせたモノ選びとなっています。
▲ ラウンドカラーのシャツやビンテージ調のタイが洒落感をソフトに引き立てます。もちろん、ブルゾンのカラーに合わせたモノ選びとなっています。
吉野 「そうですね、キメキメではなく偶然風の洒落感が今回コーデのポイントです。よく見るとスーツジャケットの裾もアウターからハミ出ていますし、なにより作業着っぽいタッチの素材感やカラーが、スーツスタイルに軽妙なバランスを添えています。これがドレッシーなロングコートであったら、単なるクラシックなおじさんになってしまいますから(笑)」

服装にテクニックを入れ込むと、難しくなるのが足元のチョイスです。キメキメの革靴ではせっかくのメリハリ感が崩れてしまいます。そんなこだわりコーデのまとめ役として吉野さんが選んだ一足は、スエードスリッポン。
吉野 誠  ここで表革などピカピカのシューズではせっかくのドレスダウンが中途半端に。こなれ感あるスエード製、そしてモダンなモンクストラップというチョイスが小粋です。
▲ ここで表革などピカピカのシューズではせっかくのドレスダウンが中途半端に。こなれ感あるスエード製、そしてモダンなモンクストラップというチョイスが小粋です。
吉野 「シックなグレースーツに黒革のドレスシューズはお約束です。そこにプラス、軽いタッチを持つスエードをチョイス。さらにレースアップでなくヌケ感のあるモンクストラップを選ぶことで、堅苦しくならないように仕上げてみました」

さすがのバランス感と言える、硬軟の絶妙な取り混ぜ方が光るコーデです。そしてお次には、そんなお気に入り春アウターを用いたカジュアルスタイルを見せていただきました。

こちらもブルゾンはスーツに合わせた上掲と同一の、ホリングワース カントリー アウトフィッターズ。清涼感あるサックスブルーを生かした砕けた印象のコーディネートです。
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ダブルブレザーの装いも今風にこなれて見える

吉野 誠  今また人気のダブルブレザーの装い。ただしオフスタイルの場合は、どれだけカジュアルに見せるかがポイントです。プラスブルゾンの装いで、気負いすぎて見えないところが秀逸。
▲ 今また人気のダブルブレザーの装い。ただしオフスタイルの場合は、どれだけカジュアルに見せるかがポイントです。プラスブルゾンの装いで、気負いすぎずに見せるテクは、ぜひ参考にしたいところ。
吉野 「ブルーのグラデーションスタイルは、誰が実践しても失敗しない鉄板の装い方。しかしこの作業着テイストあるアウターを軸にする場合、どこかに大人っぽいポイントを設ける必要があります。このコーデではそれがダブルブレストのブレザーです。ポロ ラルフ ローレンの一着であり、ダブルの仕様と相まって、上品さを支えるポイントとなっています」

そしてこちらもチラリとのぞくブルゾンの赤い裏地が程よいアクセントに。非常に快活に決まっています。
吉野 誠  気軽さを支える要素として襟付きシャツではなく、Tシャツというのもポイントです。装いに合わせたブルーのレタードというところにこだわりを感じます。
▲ 気軽さを支える要素として襟付きシャツではなく、Tシャツというのもポイントです。装いに合わせたブルーのレタードというところにこだわりを感じます。
吉野 「ジーンズを取り入れたカジュアルスタイルなので、シャツも衿シャツではなくクルーネックのTシャツで軽さを取り入れています。無地でも良いのですが、今の気分はスポーティなロゴもの。わずかしか露出していませんが、ソレでも目に留まるワンポイントとなっていると思います」

着こなし的な要点はやはり、ざっくばらんな上着の裾まわり。こちらもインに着込んだブレザーの裾が露出するルックスですが、そここそが大事なヌケ要素なのです。

吉野 「ダブルのブレザー自体がすでにカッチリ感あるので、その硬さをどう抜くかがひとつの課題。ラフにジーンズのポケットに手を突っ込んで、くしゃっとなったくらいの見え方も、このコーデではアリだと思います」
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吉野 誠  セオリー的にはアウターはインナーより着丈長めを選ぶもの。しかしあえてブレザーの裾を露出させる合わせにすることで。カジュアル感を高めています。
▲ セオリー的にはアウターはインナーより着丈長めを選ぶもの。しかしあえてブレザーの裾を露出させることで。カジュアル感を高めているのです。
そんなこだわりのカジュアル春アウタースタイル。よーく見るとジーンズはどうもストレートではない様子。一体そのココロとは?

吉野 「このジーンズはリーバイスの517。いわゆるブーツカットであり裾が若干広がったシルエットが特徴です。ブレザーの持つエレガントな要素を生かす場合は、パンツの裾もストレートよりちょい広めの方がシルエット的にもマッチするのです。

ほんのわずかの話ですが、501よりも大人っぽく仕上げたかったのでブーツカットを合わせました。そしてシューズはスプリングコートのハイカット。ブルゾンの素朴なタッチに合わせてキャンバスシューズを選びました」
吉野 誠  ホワイトのキャンバススニーカーが爽やかさをアップさせています。コンバースではなくスプリングコートというのが吉野さんらしい。大事であるのは汚れなくクリーンであること。コレ大切ですよ。
▲ ホワイトのキャンバススニーカーが爽やかさをアップさせています。コンバースではなくスプリングコートというのが吉野さんらしい。大事であるのは汚れなくクリーンであること。コレ大切ですから。
緻密に計算された、でもラフなスタイリング。いやはや熟練のスタイリストともなると、あっさり日常的なコーディネートでも、かなりカロリーを込めて組み立てているのですね。これは本当に脱帽です!
吉野 誠 (スタイリスト)

● 吉野 誠 (スタイリスト)

LEON本誌に加え「買えるLEON」、その他ファッション誌等で活躍するスタイリスト。最近はパーソナルスタイリスト業においても多忙を極める。また、ゴルフ好きが高じてゴルフブランド制作チームにも参画。今年2023年夏期のローンチを目指し、デザイン等の作業に追われる日々。

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