2024.02.22
FPM田中知之さんの宝物、1950年代製狼柄のネルシャツ
常に独自の視点で独自の音楽を生み出していくDJとして世界中で活躍する田中知之(FPM)さん。音楽のみならずファッション、時計、クルマ、グルメとオールジャンルでの博覧強記を駆使した田中流「男の定番」をご紹介する連載です。
- CREDIT :
文/田中知之(FPM) 写真/鈴木泰之(Studio Log)
■ Theme●「1950年代製狼柄のネルシャツ」
特にファッションにおいては、それまでの流行とは明らかに違う多大なインパクトをもったスタイルや嗜好が次々と誕生。例えば、黒とピンクのツートーン使いや、大胆なアトミック柄、さまざまなアニマル・プリントなどをあしらったアイテムの数々は、そんなロックンロールを奏でるミュージシャンやファンに着用され、時代を彩った。
たまに古着屋で当時のヴィンテージを見かけて、そのぶっ飛んだセンスに何度も驚愕したのだが、今回紹介するシャツもそんな時代が生んだ一着だ。
古着マニアにはバイブルとも言える田中凛太郎氏によるレアな古着写真満載の大判の書籍『MyFreedamn!』の第6冊目 、ロックンロール・ファッション特集号で、私はこの狼ネルシャツの緑と茶のヴァージョンが掲載されているのを見て以来、長らく恋い焦がれていたのだが、有名なヴィンテージ・バイヤーであるブライアン氏のLA・シルバーレイクにあるウェアハウスを訪れた時に、この阪神タイガース配色の自分サイズを発見、譲ってもらうことに成功した。
WEB検索によりどんな情報でも手軽に手に入る現代にあっても、このシャツの情報や写真はほとんど見受けられない。それくらいレアな存在なのだろう。古着屋を長らく経営する友人にたずねても、ほかにも朱色と紺の配色もあって、裾にリブが付いたプルオーバーのタイプや、シャツ・ジャケット型も存在する、くらいの情報を聞き出すのが精一杯だった。
ただ、日本の人気ブランドのテンダーロインが、2010年代から数シーズンにわたり、オリジナルをベースにした精度の高いオマージュと言える狼柄のシャツをいろんな素材やヴァージョンでリリースしており、中古市場を探せば、まだ比較的容易に入手できるという情報を最後にお伝えしておく。
Point
この狼柄、生地屋が複数のメーカーに卸していたためなのか、いくつかのブランドからリリースされた形跡があるのだが、この個体はMarlboro Sportswear製。1940年代からベタなネルシャツから、一風変わったレーヨンシャツまで製造していたブランドだ。
田中知之(FPM)
1966年京都生まれ。音楽プロデューサーでありDJ。それでいてクルマも時計も大好物。ヴィンテージにも精通し、服、家具問わずコレクターであり、食への造詣も深い。www.fpmnet.com