2024.08.05
『代官山蚤の市』で見つけた1920年代のハンティングジャケット!
常に独自の視点で独自の音楽を生み出していくDJとして世界中で活躍する田中知之(FPM)さん。音楽のみならずファッション、時計、クルマ、グルメとオールジャンルでの博覧強記を駆使した田中流「男の定番」をご紹介する連載です。
- CREDIT :
文/田中知之(FPM) 写真/鈴木泰之(Studio Log)
■ 1920年代のハンティングジャケット
恐る恐るプライスをたずねると、私の予想額の半額くらいだった。全体に薄汚れているのは許せるとして、前身頃のポケットの内側左右にくっきりと大きな染みがある。恐らく動物の血液かと。「だからこのプライスなんです」と店主の世田さん。「なるほど、この染みさえなかったらなぁ」とラックに戻そうとすると、耳元で渡辺君が「あの人なら落とせるかもしれませんよ」と。
あの人とは、東京・表参道の路地裏に50年以上前からある“青山ハイクリーナー”という街のクリーニング屋さんの店主・山本さん(御年84歳)。界隈では染み抜きの天才の異名をもつレジェンドだ。渡辺君の言葉に一縷の望みをかけてジャケットを購入。翌日、山本さんのもとに持参した。
喜び勇んで表参道へ向かう。レジェンドから手渡されたジャケットを見て驚愕。染みや汚れが消えたどころか、生成りだと思っていた生地は経年で黄ばんでいただけだったようで、眩い純白に。安価で譲ってくれた世田さんには申し訳ないが、これは良い買い物だった。 「私ももう歳だからゆっくりしたいんだけどね~」と、うれしそうにおっしゃる山本さんの笑顔が白くなったジャケットよりも眩しかった。山本さん、僕らのためにまだまだ頑張ってください!
こちらが山本さんの手に渡す前のジャケット。実は世田さんも販売前になじみのクリーニング店で染み落としの依頼をしてみたが、落ちなかったとのこと。山本さんは特殊な溶剤を使って何度も洗いをかけて見事にきれいにしてくださった。費用は当然通常のクリーニングよりは高価。もちろんレジェンドとて、すべての汚れを今回のようにきれいに落とせるわけではないのは改めてここで申し上げておく。
「青山ハイクリーナー」
TEL/03-3403-6991
住所/東京都港区南青山3-13-2 山川ビル1F
田中知之(FPM)
1966年京都生まれ。音楽プロデューサーでありDJ。それでいてクルマも時計も大好物。ヴィンテージにも精通し、服、家具問わずコレクターであり、食への造詣も深い。www.fpmnet.com