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2024.09.05

景のある「リー101」だけを徹底的に探して出合ったこの一本!

常に独自の視点で独自の音楽を生み出していくDJとして世界中で活躍する田中知之(FPM)さん。音楽のみならずファッション、時計、クルマ、グルメとオールジャンルでの博覧強記を駆使した田中流「男の定番」をご紹介する連載です。

CREDIT :

文/田中知之(FPM) 写真/鈴木泰之(Studio Log)

世界を舞台に活躍するDJ田中知之(FPM)さんが自らの美意識に叶った「男の定番」をご紹介する連載。今回のテーマは……。

■ 1950年代のリーの101z

しかし、昨今のヴィンテージデニムの人気は、90年代後半のあの熱狂をも軽く凌駕し、とんでもないバブルの様相を呈しているが、そのバブルを牽引するリーバイスの501が、ジーンズにおける定番中の定番だとすると、このリー101が裏定番と言ってしまっても良いかと思う。

品番末尾のZはジッパーのZ。ちなみにBと付くのがボタンフライのモデル。この個体は1950年代中頃に製造された、いわゆる「センター赤タグ」と呼ばれる一本だ。ジーンズ好きには有名な話であるが、リーバイスのデニムは綾目が右下に向かう右綾織りなのだが、リーのデニムは左下に向かう左綾織り。縦糸はインディゴで染色してあり、横糸は無染色。
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1970年代くらいまでのデニム糸は太さが均一でなく、織り機の性能からも織りムラが多く発生し、その織りムラから縦糸が露出し凹凸ができてしまう。露出した縦糸のインディゴが洗濯や摩擦で退色してしまうため、縦方向の線状に色落ちする、いわゆる縦落ちが発生するのだ。生地を編む単糸は左撚りで、撚りと逆方向の右綾で織ると生地に緩みが生じ、ざっくりとした風合いになる。
1950年代のリーの101z WebLEON
▲ 101には珍しくヒゲも出ている。すそ辺りの色残りとひざ辺りの縦落ちの濃淡のコントラストも良い。レザーパッチもきれいに残る。なぜリーが左綾なのかは明らかになってはいないのだが、恐らくライバルが右綾ならば我が社は左で、と逆張りのディレクションになったのではないかと。ちなみに第二次世界大戦中には右綾織りのデニムを使用したリーが存在する。
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結果、当時のリーバイスなど右綾織りのデニムはコントラストがはっきりした、ヒゲやハチノスと呼ばれるダイナミックな色落ちがしやすい。一方リーの左綾織りは、撚りと同方向に織るので生地が締まり、なめらかな表面になり、縦落ち自体はしやすいのだけれど、それがジーンズ全体に及び、色落ちの荒々しさや、部分によるコントラストが表出しにくい。この右綾と左綾の違いが、現在のヴィンテージ市場におけるリーバイスとリーの価格差の要因のひとつとなっている。

骨董の世界では、例えば茶碗の表面の釉薬が経年変化をして、面白い色や模様、形状を見せることを景色(けしき)、あるいは景があると称したりするが、古いリーのジーンズのなかから、景のある個体に出くわすのは、リーバイスの何倍も難しい。それに気付いてから(特にヴィンテージの501が超高騰する昨今は)、景のあるリー101だけを徹底的に探すようになった。そして出合ったのがこの一本。なかなか良い景があるでしょ? 値段は同時代の501に比べると、まだ現実的なプライスだったし。断然こちらがレア。

余談かもだが、そのうちヴィンテージデニムの優れた個体には、骨董の茶碗や宝石と同様に、それぞれにニックネームが付けられ、呼ばれるようになるのも時間の問題かと私は思う。
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田中知之(FPM)

田中知之(FPM)

1966年京都生まれ。音楽プロデューサーでありDJ。それでいてクルマも時計も大好物。ヴィンテージにも精通し、服、家具問わずコレクターであり、食への造詣も深い。www.fpmnet.com

2024年9月号より

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